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2度と恋愛なんかしない!そう決意して異世界で心機一転料理屋でもして過ごそうと思ったら、恋愛フラグ!?イヤ、んなわけ無いな  作者: 弥生菊美


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第30話 成人のお祝い4


 「飲み物を取って来るよ」とテーブルを離れたソラウ、その瞬間、狐鈴がゴコクの真横に移動する。


「あかん…コレ絶対に駄犬の相棒、猫の差金やろ!

外堀から埋めていく気や…どないすんねんゴコク、お前がボッーっとしくさってるから犬のお嬢さんに青葉連れてかれてしまったやん!!」


「うるさい。お前もだろ、心配しなくともあの青葉が簡単に籠絡するわけない。

家族ぐるみで店を応援してくれるとか何とか、そんなこと言い出すに決まってる。」


「……そう言われると…せやな…有り得るな…」


 2人の見つめる先には、女性同士で談笑している青葉の姿、その楽しげな姿に割って入るのは気が引けてしまう。

 

 珍しく大人しくしている従業員2人を見て、飲み物を持ってきたソラウはニヤリと笑い「従業員2人は青葉ちゃんの事でも、女子へは強く出れない」と心の中でメモしたのであった。





「ねぇ!青葉さんは彼氏はいるの?好きな人は?」


「えっ!?」


 ミリーさんの唐突な質問に、思わず動揺してしまう。

くっ、10代故のノリかっ!?恋話なんて…そんなものぉ…あるわけもなく…


「こら!ミリーやめなさい!突然そんな質問するなんて失礼よ」


「えぇー!だって、そこの確認は重要でしょ!」


 サリアさんが止めてくれるが、ミリーさんは引き下がらない。


 いるか居ないかは、そんなに重要なのですか!?

あぁ…悲しき独身を貫く予定の私は血の涙が出そうです…


「えっと、そのお気になさらず。

そのぉ…この国に来て店を開いた理由が、失恋から立ち直るためと言いますか、なんと言いますか…なので、彼氏とか好きな人とか居ないどころか、もはや作ることすら考えていないと申しますか…あはははっ…」


「「えぇー!?」」


 流石母子、同じリアクションに思わず一歩下がってしまう。


「信じられない!!さっき会ったばかりだけど!!青葉さんみたいな可愛くて良い子を振るなんて、その男バカなの!?バカだよね!!」


「んまぁー、女の子1人で異国で店を開くくらいだからどんな事情がとは思ったけれど、納得だわ!

ミリー!失礼でしょ!

でも、だからこそ青葉さんと巡り会えたのだから、その男性にはある意味感謝しなくちゃね。」


 良い人なのは、お二人の方です!会ったばかりの私なんかを、こんなにも励ましてくれるなんて、泣きそう…。

「ありがとうございます。」と、うるっと来ながらお礼を言っていると、カーテンがふわりと揺れる。


「なんだか随分騒がしいじゃないか、サリア、私のジャケットの丈は短くないかな?

ボタンもキツくて、太ったかな?」


「もぉー、パパ出てくるの遅すぎ!

早く青葉さんに挨拶して!」


 あらあらと言って、出てきた男性にサリアさんが近寄る。


 パパ!?と言うことは、レイさんのお父様でもあるわけで!!

 

 白髪混じりの茶色の髪に、こちらも頭に犬耳が可愛らしくピクピク動いている。

丸メガネをかけた姿は、学者の様に落ち着きがある雰囲気で、話し方も少しおっとりしている。

ふと、その茶色い瞳が私を見据える。


「あぁー、君が噂の青葉さんだね。

私はミリーの父、レトナーです。

今日は娘の祝いの席に御足労頂き有難うございます。

息子のレイも毎日のようにお世話になっているようで、頼りない息子ですがこれからもよろしくお願いします。」


 そう言って、目尻を下げて微笑むレトナーさんに、慌てて私も「いえいえ、こちらこそ息子さんには大変お世話になっております!」と言って頭を下げる。


「お若いのに店主さんなだけあって、しっかりした方だね」


「でしょーパパ!しかも、青葉さんは今は特定のお相手居ないんだって!」


 鼻息が荒くなっているミリーさん、だから何故!?

 あっ、まさか誰か紹介してくださるとかそう言う系…?でもな…本当にもう失恋は懲り懲りなので、もう傷つきたくないんです。


 愛した人から別れを告げられるのは、本当に…言い表せられないほど、辛い…もう2度と、こんな思いはしたくない。

 だったら1人で生きていくと思うほどに…。


 まぁ今後、独身でいると結婚できない変わり者や、人格破綻者のレッテルを貼られる。という代償も付くんでしょうけど…くっ…結婚してない理由なんて、それだけじゃないんですからねっ…


 何やら親子3人で楽しげに会話を進めているのを横目に、心の中でシクシクと涙を流していると


「俺に買い物押し付けて、随分楽しそうだな!

誰か1人くらい、荷物持ち付けてくれたって良いじゃないか…だぁー疲れた!」


 ドサッ、ゴンッ!と言う荷物と、瓶を置いたような音を立てて大きな溜息をついた人物、聞き慣れた声に振り向けば正装しているレイさんが、シャツの首元を緩めて「あちぃー」と汗を袖で拭っていた。


「お帰りー、そんなお疲れのお兄様に!私からとっておきのプレゼントを差し上げちゃうわー」


「はぁ…どーせ、ろくでもなっ…」


 ミリーさんが私の背後から両肩を掴んで、ズズズイっと前に押し出す。


 何だよと言わんばかりの、疲れたレイさんが顔を上げた瞬間、ピタリと石像のように固まったレイさん


「こっ、こんにちはレイさん、お邪魔させていただいております。」


 レイさんが無反応で固まっている。

 流石に常連客の家に勝手にいるのは、招かれたとはいえ、ストーカー紛いで引かれたかな…あぁ…そこまで考えてなかった…と今更ながら、冷や汗をかく…ソラウさん!!!後でちゃんと言い訳お願いしますよ!!!


 「…かわいい……って!!へっ!?えっ!?なっ!?あっ、青葉ちゃん!?ななななな何で!?」


 上擦った声を出し、頬を染めて目を白黒させて動揺しているレイさん、そんな姿を見てミリーさんが背後で大爆笑している。


「アハハハハ!!兄さん動揺しすぎ!!しかも分かりやすすぎっ!アハハハハ!!」


「やぁーねぇーこの子ったら…青葉ちゃん、こんな間抜けな息子だけれど嫌いにならないであげてね。」


「はぁ…レイ、お前って奴は…」


 ご家族の反応に、いささかレイさんに同情しつつも、お世辞とはいえ、こんな私を見て可愛いと言ってくれた天然記念物のレイさんは、悪い女が寄らないように絶対私が守る!!と、改めて心に誓う。


 「レイさん驚かせてしまってスミマセン」と謝罪すれば、ミリーさんが再び私の肩を背後から掴み


「いいのいいの、青葉さんが謝る必要なんてないんだから、主役の私が招待したのよ!

兄さん、驚いた?うれしい?嬉しいよねー?嬉しいでしょ??」


 もはや、ニヤニヤと言わんばかりの顔でレイさんに問えば


「ミリーお前っ!くっそぉー!!嬉しいですが何かっ!!」


 照れて顔を真っ赤にして怒るレイさんを見て、ケラケラ笑うミリーさん

察してはいたが、兄と妹のバランスは完全に妹の立場の方が上のようだ。


「じゃっ、兄さんは青葉さんのお相手よろしくねー!

主役の私は挨拶回りで忙しいので、ンフフー

青葉さんもパーティー楽しんでね!」


「フフッちゃんと青葉さんをエスコートするのよーレイ」


 さて行きましょう!と、両親の腕を掴んでウィンクをして去っていくミリーさん、そしてレトナーさんが微笑みを浮かべ会釈をして去っていく、取り残された私とレイさんに沈黙が流れる。

 

 えぇーっと、と思い振り返れば未だにウッドデッキの下で立ったままのレイさんと目が合う。


「ごめんね青葉ちゃん、今日お店休みなのにミリーの我儘につき合わせちゃって、どーせソラウ辺りの差し金だとは思うけど…はぁ…あいつら…」


「いえ、むしろ今日は楽しみにしていたんです。

レイさんのご家族の方は、皆さんとっても優しくて温かい方々ですね。

私も少し…家族が恋しくなってしまいました。」


 もう二度と会えない家族…そう思うと、急に寂しくなる。

ずっと、考えないようにしてきたけれど、仲の良い家族を目の前で見てしまえば思い出さずにはいられない。


 皆、元気かな…。


 そう思っていると、急にレイさんがウッドデッキに上がってきて、私の両手を取る。

 驚いてその顔を見上げれば、いまだ頬を染めたまま真剣な顔をしたレイさん、その気迫に一歩下がろうとするも両手をレイさんの手に包み込まれるようにギュッと掴まれてしまい、何やら気恥ずかしくなり年甲斐もなく照れてしまう。


「こっ、こんな家族でよければだけど…その、家族が恋しくなったらいつでも家に来ていいからね。

青葉ちゃんなら、歓迎するから…おれっ、俺はっ……」


 なななななな!?なんか、告白でもされそうな状況みたいで緊張しちゃうんですけど!?

絶対にありえない事とは理解してても、そんな状況に思えてしまう!こんな考えを持ってしまう自分を、今すぐ殴りたい!!

今すぐご家族に土下座で謝罪したい!!


「俺はっ!あっ…あああ青葉ちゃんとっ…けっ…うぅっ…がっ…」


ななななな何でしょうか?と首を傾げれば


「すぅ…」


 すぅ?息を?って、んっ!!!?

よく見ればレイさんの鼻から赤い筋がツーっと垂れてくる。


「えっ!?レイさん!?鼻血出てます!!

抑えてください!上向いちゃダメですよ!

何か拭く物!?」


「………」


 何かを諦めたように、すっと目を瞑り両手で顔を覆うと床にしゃがみ込むレイさん


「レッ、レイさん!?もしかして貧血も!?」


 どどどどどうしようと慌てていると、いつの間にかウッドデッキを囲うフェンスの上で、腕を組み顎を乗せてこちらを見つめていた男性3人が目に入る。


いつの間に!?


「ソラウさん!ゴコクさん!狐鈴さん!見てないでレイさんを安静にできる場所に!」


だが3人は微動だにせず、蔑むような目をしてレイさんを見ている。


「せっかく御膳立てしてやったのに、この駄犬がっ」


「救いようがないな、駄犬」


「邪魔するまでもなく自滅て、駄犬ザマァー」


体調不良で蹲るレイさんを罵る3人組に


「いいから早く行動してくださーい!」

 

と、私の怒号がウッドデッキに響いたのだった。


 







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