第21話 おかえり
「嫌や!!!帰りたない!!!青葉ともっと一緒におる!!!」
「何を言うか!!ゴコクじゃあるまいし、お前まで駄々をこねるでない狐鈴!
そなた今まで猫を被っておったな!!まったく!!
さっさと帰って、仕事に戻らんか!
ここに来る前は、乗り気じゃないとか何とか散々言っておったではないか!
青葉を気に入ったのは何よりだが、宇迦に小言を言われるのはワシなんじゃ!
行くぞ!!」
ゴコクさんと狐鈴さんの一触即発の状況から、やっと和解したかと思ったのも束の間
すぐにやって来たタカちゃんが、狐鈴様のお迎えに来たのだが…駄々っ子のようにごねる狐鈴様
なんだろう、私は打てば響く玩具代わりなのか?はたまた、こま遣いのいない生活に戻るのが嫌なのか?
「青葉かて、ゴコクより僕の方がええやろ!」
えぇ…ここで私に話を振ります?
困っていると、ゴコクさんが私の前に出てきて
「さっさと帰れ狐「お前に聞いてへんわ!!」」
ゴコクさんのイラっとした空気を察する。
まてまて、また喧嘩はやめてください!!
「狐鈴様がコチラの世界を気に入ってくださったのは嬉しいですが、宇迦様にちゃんとお話をしないと流石にまずいのでは?」
ゴコクさんの横から顔を出して、恐る恐る伝えれば
「うっ…」
と、唸る狐鈴様
あからさまに冷や汗をかいている。
「まったく、ゴコクと言い狐鈴と言い
人間の青葉の方が通りをわきまえてるとはな!見習わんか!ほれ行くぞー」
狐鈴様が大人しくなった一瞬を待ってましたと言わんばかりに、タカちゃんが引きずる様に狐鈴様を連れてフッと消えていった。
あっ、お世話になりました。ってちゃんとお伝えしてなかったな…
後で戻ってきたタカちゃんに伝言を頼もう
取り敢えず!と、消えていった方向に手を合わせて感謝を述べる。
「やっと静かになった…」
ゴコクさんがため息をつく
それを見て苦笑いをしながら嵐の様な方でしたねと言えば、ゴコクさんもこくりと頷くと
青葉と名前を呼ばれたと思ったら、ゴコクさんにギューっと抱きしめられる。
「ゴゴゴゴコクさん!!?」
「久しぶりの青葉…」
相変わらず行動が突拍子もないゴコクさんには動揺させられるし、また首筋にグリグリと頭を擦り寄せられる
ヒョエーーー!!!!?と内心大絶叫する
神使さん方は人間が好きな方が多いのだろうか?
何やかんや言ってたのに、風邪引いた時は狐鈴様も風邪で人間は死ぬ事もあるって心配してくれてたし…
そこでふと思い出す
「ゴコクさん…一つお伝えしなければならないことが…」
抱きついたままのゴコクさんが、なにー?と子供のように間延びした返事をする
可愛いな…と思いつつも
「狐鈴様には、ずっとゴコクさんの部屋を使って頂いておりまして…
気になると思うのでシーツとか交換…」
した方が、と言い終わる前にバッ!!と顔をあげるゴコクさん
何か言いたげに口を開くが、口を噤むと少し考えた顔をする
少しの間の後に
「……まぁ、青葉の部屋で一緒に寝てたとか言われるより…マシ…」
マシと言っているが、顔がメチャメチャ嫌そうな顔されておりますけども!?
再びゴコクさんがため息をつくと
「ちょっと部屋を見てくる…」
やはり心配になったのか、私から離れるとトボトボと部屋に向かっていったのを見送った。
その後ろ姿を見送る私とテーブルの上のリンちゃ……んっ!?
「リリリリリンちゃん!?どうして!?
狐鈴様の式神がここにいちゃダメなのでは!?」
慌ててテーブルに近寄れば、どうしたの?と言わんばかりに可愛らしく首を捻るリンちゃん
かっ…可愛い!!!!
じゃなくて!!
「リンちゃんのご主人様は狐鈴様でしょ?
タカちゃんが戻ってきたら、一緒に連れていってもらうんだよ?」
そう話しかければ、ぴょんと私の腕に飛び乗ったと思うとそのまま肩まで上がり、私の頬に頬擦りするリンちゃんのサラサラの毛が頬にあたりくすぐったい
「わわっ、リンちゃんくすぐったいよ〜」
リンちゃんは式神だけど、ペットみたいでちょっとウキウキしてしまう
動物は好きだけど飼ったことがないから…
「そう言えば、リンちゃんが食事してるところ見たことないけどご飯食べてるの?」
そう問かければ、私の目を見て首を傾げるリンちゃん
狐鈴様はリンちゃんの言葉がわかるようで会話していたけど、人間の私では会話は不可能なようだ…残念…。
少し早いけど夕飯の準備をしちゃおう
作りながら、リンちゃんに色々と食材を差し出して食べれる物があるか試してみよう。
明日には帰っちゃうけど…ヨシヨシと指の腹でリンちゃんの頭を撫でれば、キューンと可愛らしく鳴くリンちゃん
ハワワ…可愛すぎる!!
やっぱり…リンちゃんにはここに残って欲しいななんて思ったりしてしまう。
夕飯の準備が終わりテーブルに料理を並べていると、ゴコクさんがようやく部屋から出てきたようで両手にシーツや座布団カバーやら大量の洗い物を抱えて洗濯機の方へと消えていった。
あらゆるカバーというカバーを剥がしてきた感じだな…というのが見てとれた。
確かに、他人の使った寝具を使うのは嫌だよね…と思いつつリンちゃんに視線を戻せば、小さくカットした桃を両手で抱えてモグモグ食べているリンちゃんを目を細めて、可愛いを連呼しながら眺めてしまう。
語彙力失うとはこの事なのかもしれない。
戻ってきたゴコクさんが、なんでそいつが居るんだと言わんばかりの目でリンちゃんを見ると
「なんでお前がここに居る」
と低い声で問い掛ければ、リンちゃんは首を傾げながら桃を食べ続ける
その姿をゴコクさんがしばらく見つめると
「明日には帰れ」と、一言告げると諦めたかのように席に着いた
「ゴコクさん!もしかしてリンちゃんの言葉わかるんですか!?」
ゴコクさんの顔に迫るように詰め寄れば、焦るように仰反るゴコクさん
「分かる…青葉は人間だから聞こえないのか…」
「リンちゃんは何んでここに残っちゃったんです?
狐鈴様と離れちゃって悲しがってませんか?大丈夫ですか?」
「落ち着いて青葉…この式神は寂しがってない
なんで居るのか聞いたら、青葉と一緒がいいから残ったって…」
リンちゃん!!!可愛いの極み!!!
でも…
「可愛いリンちゃんに気に入ってもらえて大変光栄ですけれど…式神としてそれは…大丈夫なんですか?」
「本来、主人の命を無視する式神には罰が降るけど、この管狐の身に何も起きていないなら、あの狐がここに残ることを許容した。って事にな……」
突然、言い淀むゴコクさんにどうしたのかと私とリンちゃんが首を傾げていると、1階からカタンと音が響く
その音に反応したゴコクさんが、ガタリと椅子から立ち上がると無表情で下へと降りていく
「えっ…?ゴコクさん!?」
慌てて後からゴコクさんの跡を追うように下へと降りれば、そこに居たのは
「あらぁー!お帰りなさいゴコク君!
数日ぶり!」
夕飯を食べにきたシューちゃんだった。
そうではないかと思ったけれど、なぜかゴコクさんはホッとしたような顔をしている。
そんなにシューちゃんが恋しかったんだろうか?
神使と言うのは神様が恋しくなるのか?
「シューちゃん、今日の夕飯は上に用意してあります。
ゴコクさんのお疲れ様会も兼ねて、品数多めに作ったので上で食べましょう」
そう伝えれば、一気にシューちゃんのテンションが上がる!
「やったー!!
この前タカちゃんからもらった薩摩の芋焼酎も開けちゃいましょうよー!」
ヒャッホー!と、足取り軽く2階へと向かうシューちゃん
これは、お泊まりコースかな…と不安そうに見上げつつ、ゴコクさん戻りましょうと声をかけようと振り返れば、何やら思い詰めた顔をしているゴコクさん
「大丈夫ですか?何か気になる事でも…?」
「あの狐が簡単に引き下がるとは思えない…」
深刻そうな顔をするゴコクさん、あの狐とは間違いなく狐鈴様であろう。
と言うか、どんだけ嫌いなんですか狐鈴様の事
「ここに来てすぐ、狐鈴様は嫌々来た的なことを仰ってましたし…向こうに戻っていつもの日常に戻ればこっちは忘れてしまうのでは?」
「だと良いけど…」
深刻な顔をしたまま上への階段を登り始めるゴコクさんが、ふと思い出したように立ち止まりコチラに手を伸ばす。
「青葉、おいで」
何でもないように手を伸ばすゴコクさんだけど、何故かそれが私には妙に気恥ずかしい
そんなことを思いつつ、おずおずと差し出された大きな手に自分の手を重ねれば柔らかに微笑んで、そっと手を握って引いてくれるゴコクさん、やぱり…ゴコクさんが居てくれると安心する…
上がった体温がゴコクさんに気づかれていませんように…そんな事を思いながらシューちゃんの待つ2階へと上がっていった。




