第2話 伊勢かい?
まどろみ始める意識、遠くで話し声がする。
両方とも女の人の声だ。
私…どうしたんだっけ…誰がいるんだ…朦朧とする意識を引っ張り上げて、目を開くと木目と言うより木の板の天井が目に入る。
えっ?
私の部屋じゃない…
急に覚醒する意識、そうだった!神社で私!!
そこまで思い出して勢いよく起き上がると、頭痛と吐き気に襲われる。
うっぷっ!!!
二日酔い…吐き気をなんとか堪えるが、ガンガンと鼓動を打つような頭痛は治らない。
取り敢えず水飲みたいとベッドの上から辺りを見回すと、質素な中世のご家庭ですか?と思わせるような剥き出しのレンガに、柱に使われている木が剥き出しで出ている。
窓枠も全て木、しかも嵌め込まれているガラスは透明度が低く気泡が入ってる。
いったいココは何処?痛む頭を抑えつつ呆気に取られていると、突然ガチャりと扉が開く
「あっ、こら!ノックしなさいよ!!」
「おぉ、そうであった!そう言う習慣があったのー、忘れておった…と、起きたか青葉」
扉を開けて入ってきたのは昨夜の巫女さんと、その後ろには巫女さんより頭一つ分ほど身長の高い女性が立っている。
ミルクティー色の長い髪をポニーテールにして水色の蝶々の髪飾りをしており、服は修道士を思わせるような白と金の高級そうなローブを着ている。そして超美人!の外人さんだ。
ここはもしかして、そちらの美人さんのお宅なのだろうか?
「体調はどうじゃ?飲ませた茶に気持ちを落ち着かせる煎じ薬を入れたんじゃが、お主が酒を飲んでいたせいか効きすぎた様じゃ、一服盛ったかのようで、すまなかったな青葉」
なるほど…通りであのお茶を飲んだ後、急激に眠くなったわけだ。
行き慣れた神社の巫女さんから貰ったものと安心して飲んでしまったが…。
良い子は真似しないでね。
「まったく、タカちゃんはウッカリさんなんだからー!
初めまして青葉ちゃん、私の名前はエシュテル、シューちゃんって呼んでね」
そう言って手を差し出すエシュテルさん、日本語上手いなー。
もしや日本育ち?
「こちらこそ、初めまして」
そっとその手を握ると、ブンブンと上下に振るように実に激しい握手をされ、アワアワしていると
「これ、シューちゃん握手はそんなに激しくするのではない。
軽くで良いんじゃ軽くで」
「あら?ごめんなさい、握手の習慣がないものだから、私もまだまだね」
タカちゃんと呼ばれた巫女さんに注意されて、オホホホとお上品に笑うシューちゃん。
2人ともあだ名と外見がチグハグすぎる
「あのー、いったいここは何処なんでしょうか?」
痛む頭を堪えつつ、取り敢えず今がどう言う状況か知っておきたい。
「まずは、コレを飲め青葉
お主、二日酔いなのであろう?
安心せい、今度はちゃんとした二日酔いに効く煎じ薬じゃ」
そう言って、またも何処から取り出したのか?昨日も見た湯呑み、まぁ、状況が状況だしと湯呑みを受け取り飲むと
「苦っ!!!」
あまりの苦さに口の唾液が一気に出てくる。
お水が欲しい!!!
「良薬口に苦しじゃ我慢して飲め」
この頭痛から解放れるならと、一気に煎じ薬を飲み干す。
口の中が…苦い…
「もう少し経てば体調も良くなるだろう。
さて、今の状況を説明せねばな、シューちゃん椅子を頼む」
そう、タカちゃんが頼むと「ハイハーイ」とシューちゃんが元気よく返事をして、先程までそこに椅子などなかったのに、背もたれと座る部分に高級そうな青い布があつらわれたアンテイーク調の椅子が現れた。
「えぇ!?今、椅子無かったですよね!?」
あまりの驚きに声が大きくなってしまい自分の声で余計に頭が痛くなる。
うぅっ…
「そうよ、何もない所に椅子を出したのよポンっとね」
いやそう言う説明が欲しいわけじゃない…。
ツッコミを入れたいが、気力がない。
「まぁ、驚くのも無理はないじゃろうな…。
だが、ここから更に驚く事になる心して聞け青葉」
急に落ち着き払った声を出すタカちゃん、先程までのおちゃらけた雰囲気は何処にもない。
「お主が今いる場所は日本でもなければ地球でもない。
ここは、異世界じゃ」
異世界…イセカイ…伊勢かい?
「あぁ…伊勢「異世界じゃ!異なる世界と書いて、いーせーかーい!」」
まって、異世界?
変な薬を飲まされて私まだ夢を見てる?
それとも、ドッキリか何か??
「まぁ、体調が回復したら外に出てみると良い。
いやでも受け入れる事になるじゃろ」
やれやれと言わんばかりのタカちゃん
いやいやいや!!
あっ!異世界なんんですね!成る程!
なんて、なるわけがない
「まさか…言ってた異国って…」
ふと思い出した異国の友の話、と言うことは…
「そうじゃ、我の言っていた異国のこと、そして、お主にはここで小料理屋をして貰うつもりじゃ」
「これで美味しい日本料理が食べれるわ!
宜しくね青葉ちゃん♡」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」