06話 断罪者
一章
06話
作戦決行日。
『魅惑する者ベルリリス』の眷属の拠点とされる場所の周りにはこれでもかと言わんばかりに木々が生い茂っており、根っこのせいで地面も不自然なほどに隆起している。
「突入準備はどうなってる?」
「拠点周辺の包囲は完了しています。指示さえあればすぐにでも突入出来ます」
「それは良かった」
アイベルは手に持っている魔導具を起動させ、他国の状況を確認する。
「こちらディリウス帝国。既にこちらは突入準備が整っている」
「こちらダウリア王国。本国も既に突入準備は整っている」
「こちらリトリア聖王国。私達も何時でも突入可能よ」
残りはカリリア皇国だけとなったが、一向に通信が送られてこない。
「カリリア皇国。そちらの状況は?」
アイベルが通信を送るが返答はない。
「チッ、予想外の自体か」
苛ついた様子で舌打ちをしていると、カリリア皇国から返答がある。
「申し訳ありません!!こちらカリリア皇国、既に団長含めカリリア騎士団は敵対勢力との戦闘に入っています!!」
「何だと!?」
カリリア皇国の騎士団長ではない恐らく部下であろうものの声が切羽詰まった様子で魔導具越しに聞こえる。
「ではどうするのかしら?アイベル騎士団長」
「早急に各拠点を制圧する。リーダーと思わしき者を除いて他の者は殺害してもいい。国民に被害が出るよりマシだ」
「分かったわ」
「承知した」
三国の通信が切れると同時にアイベルは声を張り上げる。
「総員、突撃!!!」
その声と同時に騎士団の者が張られていた結界を解除しする。それと同時に氷魔法が雨あられのようにギウス達に向けて放たれる。しかし、その程度で殺されていては騎士団にはいられない。
防御魔法を次々と発動していき、氷魔法は防御魔法に当たり砕け散る。
「俺に続けぇッ!!!」
ギウスが先陣を切って氷魔法を避けながら入り口ではなく建物の壁を切り裂き中へと入る。
「異端者、殺せ!」
建物の中にいた信仰者が炎魔法を放つがギウスはそれを切り裂き信仰者を剣の柄で吹き飛ばし気絶させる。
「愚かな異端者、死ね!」
「間違った世界を肯定する異端者!!」
信仰者を吹き飛ばし破壊した壁からすぐさまわらわらと信仰者達が集まってくる。
近接武器を持ったものもいれば魔法を放つ信仰者もいる。
「甘い」
しかしその攻撃はギウスに届かない。剣で攻撃してきた信仰者達の足を一秒足らずで全て切り裂き、そのうちの一人を魔法を放とうとしている信仰者へ向けて蹴りで吹き飛ばす。
「グァッ!!?」
その信仰者との距離を一瞬で詰め、他の者と同様に気絶させる。
「ギウス様!!早すぎます!!」
後ろから追いついてきた部下が近くにいた信仰者を気絶させながらそういう。
「早急に制圧しろとの事だからな。俺は先に行く。捕縛は任せた!」
「ギウス様!?」
部下の絶叫を無視してギウスは更に奥へ奥へと進んでいく。空間に開けた穴から魔導具を取り出し、アイベルへと通信を飛ばす。
「アイベル様、魔導具の所在は掴めましたか?」
「いや、それがまだなんだよ。僕も視てるけど地下に巨大な魔力の塊が見えるからもしかしたら地下かも」
「分かりました」
再び魔導具を空間にしまい、今度は床を切り裂く。床は激しい音を立てながら落ちていき、それに続くようにギウスも下へと降りる。するとそこには人影が三つあった。
「告解せよ」
「懺悔せよ」
「悔悛せよ」
よく見るとそこには全身真っ黒の女が3人ポツンと立っていた。辺りには階段と扉が一つあるだけであり、他には何も無い。
「黙秘は赦されず」
「隠蔽は赦されず」
「隠匿は赦されず」
女達はそれぞれが鎌、杖、鎧をその身に出現させる。
「「「汝、断罪に処す」」」