02話 有意義な会議
一章
02話
『魅惑する者ベルリリス』。洗脳魔法に非常に長けた【邪神】と言われており、【邪神】の中では低位な為簡単な手法で召喚する事が可能であり非常に厄介な存在である。
「まず僕達が最初に討伐する邪神は『魅惑する者ベルリリス』。【地星】の地下に存在していて地上で何度かその姿を確認されてはいるけど住処の詳細は全く分かってない」
困ったようにアイベルは両手を上げる。
「だけど僕達はラッキーだ。眷属達の住処は分かった。所在はディリウス帝国、ダウリア王国、リトリア聖王国、カリリア皇国の俗に言われる四強国に潜んでる」
「すまない。質問しても良いだろうか」
一人の男が手を上げ、アイベルに質問を投げかける。
「勿論。ダウリア王国の騎士団長ベディビア様」
「感謝する。では聞きたいのだが、どのようにしてその眷属達の住処を見つけたのだ?徒歩でとは言うまい。何かしらの大規模魔法を他国で使用したというのか?」
途端に空気がピリつく。
「そんなことはしない。国家間の問題に発展するからね。簡単な事だよ。ディリウス帝国には幾つかの住処があることが分かっていたからその一つを冒険者が潰し、連絡用に使われていたと思しき魔法具を調べ上げる事によって逆探知したまで」
「成る程…複数の拠点を割り出すほどの逆探知技術があるというのか」
ベディビアの言葉にアイベルはニコニコと笑いかける。
「お答え頂き感謝する」
「幾らでも質問は受け付けてるよ。さ、そして本題はここからなんだけど突入すればすぐに壊滅、とは行かないのさ」
アイベルは机の上にディリウス帝国周辺地図を開く。その地図の4つの場所にバツ印がつけられている。
「拠点はこの4つ。だけど面倒なことに結界魔法、探知魔法、強力な魔法が幾重にも掛けられてるし今回の目的は拠点の確保じゃなくて敵の捕獲だから逃げられても困る」
「魔法による外からの制圧は出来ないわけか」
説明されたことを踏まえ、カリリア皇国の騎士団長が悩むように顎に手を当てる。
「その通り。実際冒険者達の時は眷属にも逃げられたし拠点も爆破されそうになったのをなんとか防いだ程だからね」
「時間はかかるが無効化魔法を広範囲に敷くしか方法はないのではないか?」
「そうでもない。相手は魔法能力に関してはそこそこだけど魔法技術に関してはズブの素人。急に『魅惑する者ベルリリス』に力を授けられたからまだ扱い切れてないんだろう。まず戦闘で負けることは無い」
「しかし問題である爆破魔法をどうするというのだ」
アイベルは待ってましたと言わんばかりに声を張り上げる。
「そう!!だけどその問題はすでに解決済み。爆破魔法の魔法具は分かりやすいことに拠点の倉庫となる場所に丁寧に置かれてる。まぁそれは爆破魔法の魔導具の性質上安全な場所においておかないと駄目なんだけど」
「倉庫の位置は魔力眼を持つ者に視させれば魔導具が大量に置かれた倉庫の位置なんぞすぐにでも分かる」
「そういうこと。本作戦は足並みを合わせたいから今日より三日後に決行する。意義のあるものは?」
誰も意義を述べるものはおらず、問題もないようだ。
「有意義な会議、感謝します」
アイベルは最後にニコッと笑った。