全ての始まり
本編は次話からです!
魔法という技術が存在するこの世界。人類はその知的好奇心を宇宙へ向けようとしていた。
過去に存在していた発生源不明の【魔族】と呼ばれる亜人も、その王たる【魔王】も既に討伐されディリウス帝国が他国より一歩先に宇宙を観測する魔法を発明していた。
「素晴らしい精度です…!天体の表面も観測することができます」
数十年の年月をかけ開発した魔法具【超遠距離天体観測器】は幾千もの魔法を掛け合せて創られた魔法技術の結晶だ。
その研究員の一言に研究所内の研究員達は声にならない声を上げるものもいれば、大声を出して喜ぶものも、抱擁して喜び合うものもいた。
超遠距離天体観測器を覗く研究員は【海地星】、【獄星】、【熾星】と名付けられた天体の表面を次々と観測していく。
(これが【海地星】…美しい)
【海地星】と呼ばれる天体の表面は我等が居住地でもある【地星】と同じく海や大陸、森林などを観測することができる。
「凄いぞ!!【海地星】には海も、大陸もある!!」
研究員のまさかの言葉に他の研究員達は更に感動し、喜びを隠しきれない。
「ん…?何だこれは」
【海地星】に存在する大きな川を観測すると、その川の近くに不自然な物体を視認する。
「どうしたんだ?」
「いや、【海地星】を引き続き観測していたんだが不自然な物を見つけたんだ…」
不自然な物を更によく見るために魔法を次々と掛けていく。
「超遠距離天体観測器の魔法多重数の限界値に近づいています!それ以上は無理です!」
それを聞いた周りの研究員達は慌てたように超遠距離天体観測器を覗く研究員を引き剥がそうとする。
「嬉しいのは分かるがアイツの言う通りもう限界だそうだ。それ以上は内部魔法が壊れちまうぞッ」
「待て…待て待て…もう少しなんだ…」
超遠距離天体観測器からバチッ…バチバチッと不穏な音が響く。
(まさかこれは…)
研究員の視界は更に【海地星】に近づいていく。
「文明が存在するだと!?!?」
その言葉は正に青天の霹靂、寝耳に水、どのような言葉でも表しきれない衝撃を皆に与えた。
先程まで剥がそうとしていた研究員達も今度は自分も覗こうとその研究員をどかそうとする。しかし、その研究員は足が地面に固定されたかのように動かない。
「おい、どうなってるんだ!!俺にも見せろッ!!」
ドンッとその研究員を突き飛ばし、別の研究員が【海地星】を覗き込む。
「…………」
その研究員は魅入られたかのように全く動かなくなる。先程まで自分も覗こうとしていた研究員達も正気に戻り、超遠距離天体観測器が破損していないか様々な計器を確認する。
「既に魔法多重数の限界値を超過しています!!!」
「いや、しかしこちらの計器は正常値だ…」
「こっちもだ。計器部分が破損したか?」
その言葉を否定するかのように部屋全体に警報が響く。
「キジュンチヲオオハバニチョウカシテイマス。タダチニヒナンシテクダサイ。クリカエシマス。キジュンチヲ…」
警報を聞くと皆が一斉に機器を投げ捨て研究所の外へと走り出す。
「………」
しかし突き飛ばされた研究員と、未だに超遠距離天体観測器を覗いている研究員がそこから動くことはなかった。
そこから数日がたち、研究員達が魔素濃度の大幅な上昇も確認する事が無かったため研究所内に入る。するとどの機材も、計器も、何も破損している物はなかった。
しかし、二人の研究員の姿が確認されることがなかった。そして更にそこから数日後。【地星】から消え去ったはずの亜人種がディリウス帝国領土内で確認された。
細々と気が向いたら書いていきます…!