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第十七話  登城

 そして翌日、王宮に向かって一行は出発した。


 王子の乗る馬車とあって、四頭引きのなかなか豪華なしつらえをしており、エリザが乗るのを躊躇うほどであった。



「ハッハッハッ、相変わらず面白い反応だな。ぜひ、王宮でも頼むぞ」



「私にいったい、何を期待されているので!?」



 エリザとしては、バナージュの砕けた対応が気になるところであった。どうか平穏無事に終わりますようにと祈りつつ、バナージュに続いて馬車に乗り込んだ。


 デナリも初めての社交の場への顔出しとあって、さすがに緊張していた。ソリドゥスのお古のドレスを急いで直し、それを着込んでいた。


 王子の連れがみすぼらしい格好では様にならないため、デナリもアルジャンもしっかりとしていて派手過ぎず、それでいてみすぼらしくならないよう、ソリドゥスがきっちり選んだ衣装を着ていた。



「そうですか。俺は外ですか」



「ごめんね~、アルジャン。この馬車、四人乗りなの~。御者さんの邪魔にならないよう、御者台に座っててね。それとも走って追いかけてくる?」



「二台用意した方が良かったのでは?」



「あたしら用の馬車を手配するほど、金銭に余裕がない」



「散々に散財したからでは?」



「未来への投資と言いなさい。ほら、早く乗った!」



 ブツブツ文句を言うアルジャンを御者台に身を預けた。


 ソリドゥスも馬車に乗り込み、御者が馬に鞭を入れ、ガタゴトと馬車が進み始めた。


 そんなソリドゥスはいたって上機嫌であった。王子の屋敷に来る前に教会側からの連絡が入り、エリザとザックの婚姻無効が受理されて、数日中には書類も出来上がると報告が入ったのだ。



(いいタイミングだわ。これでエリザは晴れて独り身。バナージュ殿下と何があっても、問題ないと言う事ね。ああ、いっそ、このまま押し倒して、既成事実作っちゃっていいから!)



 などと年頃の娘とは思えぬ過激な想像をしつつ、何とかして今日の一大イベントで二人の仲を進展させるべく、頭を働かせ始めた。


 なお、その肝心のエリザは、緊張しながらも初めて乗る馬車と言う乗り物に驚きを隠せないようで、車窓からの景色を食い入るように眺めていた。



「ほれほれ、シンデレラ! そんな田舎者丸出しの振る舞いはしないの!」



 ソリドゥスのツッコミにエリザは慌てて視線を車内に戻し、恥ずかしそうに顔を赤らめた。


 そんなエリザを、バナージュは楽しそうに眺め、そして、笑った。



「シンデレラか! 面白い! だが、王子に会いに舞踏会に出るはずが、どういうわけかカボチャの馬車には、すでに王子が乗っておるぞ?」



「せっかちな展開ですね。誰ですか、こんな脚本用意したのは! ああ、この忙しない感覚、シンデレラのせいか、あるいは王子のせいか」



「せっかちなのは、お前ではないか、ソリドゥスよ。なあ、魔女殿?」



「これは参りましたね~。王子様よりきついご指摘が入りました~」



 ソリドゥスのネタ振りに乗って来て、馬車の中は笑い声で満たされた。それで幾分か気分が和らいだのか、デナリもエリザも多少の余裕が見えるようになった。


 王子でありながら、こういう乗りの良さににはソリドゥスも助けられた。他の貴族であれば、まずこうはいかない。


 基本的にはお高くとまっているし、融通は聞かないし、庶民の事をなんとも思っていない。ソリドゥスのように実家が裕福な者ならまだマシであるが、エリザのような完全な平民ならば、相手になどしない。


 そういう意味では、目の前の第三王子は放浪癖で領内を見聞しており、柔軟性や気遣いと言うものを心得ていた。


 ソリドゥスはそれに付け入り、色々と面白おかしく話しては、その都度馬車の中が笑い声で満たされ、バナージュも満足そうであった。


 侍女と言うよりかは、御伽衆と言った方が適切かと思わせるほどに、巧みな語り口調であった。



(お嬢様、場を和ませるための話術はさすがですが、そのノリが通用するのはバナージュ殿下だからこそというのをお忘れなく)



 御者台で聞こえてくる笑い声に耳を傾けるアルジャンは、無言のままに平穏に今日一日が終わることを祈るばかりであった。



          ~ 第十八話に続く ~

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