潜入
仕事の都合でネット環境が無いところに行っていて投稿が遅れてしまいました。すいません、ところでアクセス数を戻って確認したら、PVアクセスが2000、ユニークアクセスが500を突破していてびっくりしました。これもみなさん読者のおかげです。この場を借りて御礼申し上げます。
ここはニューヨーク港のとある埠頭
既に時刻は午後7時を回っている、日は沈み空は夕闇に支配されていた。秋とはいえ、このニューヨークの夜はかなり冷える。そこで寒さに身を震わせる男が一人いた。ジャックだ、
「ヂグジョヴ、ガガジビエヤグワル(畜生、かなり冷えやがる)」
と言葉になっていない声でジャックはブツブツ言っている。彼は相棒のビリーの帰りをこの寒空の下、待っているのだ。
既にジャックの足下は、体を温めるために買ってきたホットコーヒーの空き缶が十本以上転がっていた。そこに、やっとビリーが帰ってきた。
「ジャック待たせたな、準備に手間取って時間が掛かっちまった。スマンスマン」
ビリーはジャックを待たせたことを謝ったが、当人のジャックにとっては今はどうでもいい事だった。
「ビリー、そんな事より早く始めよう」
どうやらジャックはビリーを怒るよりも、早くこの寒さから抜け出したいらしい、それ幸いと思わんばかりにビリーは車のトランクから様々な道具を取り出す。道具の内容は、ウエットスーツ、シュノーケル、足ヒレ等などだった。それを見たジャックは何かを察した様で、恐る恐るビリーに尋ねる。
「なあ、ビリーもしかするとこれは・・・」
「そう!これを使って今からイントレビットに潜入する!」
「でも、装備が一人分しかないんだけど?」
「潜入するのはお前だけだ!」
そう聞くが否や、ジャックは回れ右をしてその場から帰ろうとする。しかしビリーの手がジャックの肩を掴んで離さない、
「バカだろお前、こんなクソ寒い中海に潜れるわけ無いだろ、しかも不法侵入だし」
「いや、安心しろジャック、バレなければ問題ない」
「理由になってねえ!」
ビリーは説得しようとするがジャックは中々応じようとはしない。そこでビリーは切り札を出す。
「艦魂に会いたくないのか?」
それを出されたジャックは、痛いところを衝かれ、顔をしかめる。
「それはそうだけど・・・」
そう言いよどんだジャックにビリーは畳み掛ける。
「なら決まりだ!早速準備を始めよう!」
こうしてジャックはイントレビットに一人で潜入する事となった。
30分後・・・
岸壁に係留されているイントレビットに近づく、一艘のボートがいた。乗っているのは、勿論ビリーとジャックである。ボートは、イントレビットのおよそ百メートルの位置で止まる。
「よしジャック、後はここから泳ぎだ」
「何で近くまで行かないんだ?」
「あまり近づき過ぎると見つかるだろ?」
「それもそうか」
二人は喋りながら、最後の装備の点検を始める。その場で軽い打ち合わせを済ませるとジャックは、もうウエットスーツを着ているので後は、装備を身につけるだけとなっている。
「なあ、ビリー・・・。艦魂にうまく会えるかな?」
ジャックはそこで、今まで抱いていた不安をビリーに告げる。
「俺がちゃんとバックアップしてやるから、大丈夫だって!お前なら出来るよ!」
ビリーは笑顔でジャックに返す。
「そうだな、じゃあいってくる」
ビリーの言葉に勇気を貰うとジャックは顔を引き締め海に潜っていった。
海に潜ったジャックは、顔だけ出して、イントレビットの方に向けて泳ぎだす。冷たいと思われた海水は、ウエットスーツのお陰でかなり軽減されていた。泳ぎ始めて十数分、ジャックは遂に、イントレビットの舷側にたどり着いた。しかしここで最初の難関に出くわす。水面から舷側を登って甲板にたどり着かなければならないのだ。
「素手で登るのは無理だな」
たしかに、ほとんど突起物もない舷側を甲板まで登るのは不可能だった。
そこでジャックは、ビリーが用意したリュックから銃の様な物を取り出す。ジャックはそれを構えると、上に向けて撃った。
ポンッという音と共にワイヤーがついた鈎爪が、上の甲板からせり出しているアンテナに向かって飛んでいく、軽い金属音がすると、ワイヤーの先端が落ちてくることは無かった。
ジャックはちゃんと、ワイヤーが引っ掛かっているかどうか何度か引っ張って確認すると、ワイヤーを持つ手に力を入れて舷側を登り始めた。
ジャックは運動サークルにこそ入っていないが体力には自信があった。
「なんか昔見たアニメに似たようなシーンがあったな」
独り言を言いながら登っていたら、腰の辺りから声が聞こえた。持っていたトランシーバーからビリーの声が聞こえる。
「ああ、俺も知ってる。ル○ン三世・カリ○ストロの城だろ。あれって名作だよなあ、特にラストで銭○警部がヒロインの・・・」
「だまれ、そんな事よりバックアップをちゃんとしてくれ」
ジャックはこのままビリーに、この話を語らせたら終わらないと察したらしく会話を打ち切る。
そうこうしている間にジャックは甲板にたどり着いた。
「ビリー、甲板に到着した」
到着をさっきのトランシーバーで伝えると、すぐに返事が返ってきた。
「ああ、こっちからも見えてる」
目を凝らすと、向こうの岸壁にあの4WDが停まっているのが見える。そこではビリーが詰めていて、逐一指示を出してくれる。
「じゃあこれより中に入る、ナビゲートたのむよ」
トランシーバーからは了解の旨が帰ってきた。
まずジャックは、打ち合わせどうりに非常口らしきところから中に侵入する。
艦内に入ってしばらくすると、第二の関門に出くわす。監視カメラだ、ビリーはこれも問題ないと言っていたが、リュックの中には対処するような物は何も無い。ここでビリーに連絡をとってみることにした。
「ビリー、監視カメラがあって先に進めない」
「大丈夫、任せろ」
と言うと、ビリーは車内で持ってきたノートパソコンに手を伸ばす。画面が起動すると、ニューヨーク中の電話回線が表示される。その中の一つにビリーは電話を掛けた。
イントレビット艦内警備室
そこには一人の中年の警備員がいた。今はちょうど交代の時間で、警備室には彼一人しかいない。眠い目を擦りながら監視カメラの映像を見ていると、突然横にあった電話が鳴り出した。振り向いて出てみるとずっと無言で誰かが出る気配も無い、いたずらかと思い受話器を戻し仕事に戻る。視線を画面に戻すと、画面の隅を何かが通った気がした。しかし彼は、気のせいだと思い気にも留めず仕事を再開する。なぜならここには美術館のように盗みに入るような金目の物は無いし、あるのは古いかもしくは、動かない飛行機ばかりだからだ。
ジャックは、監視カメラの手前の視界に入らないところで待機していると、
「今だ!走れ!」
とビリーから合図があった。ジャックは全力で監視カメラの前を走り抜けた。十数メートル走ったところで物陰に飛び込む、その時ビリーから、ナイスランと労いの言葉がきた。するとジャックは、
「本当に、見つかってないんだろうな」
とビリーに念を押す、
「大丈夫、回線を聞いているが何もおかしなことは言っていない」
事も無げに返すビリーの言葉を聞いてジャックは、
「お前、それにしてもこんな装備持ってるし、電話回線はジャックするしいったい何者なんだ?」
と疑問をぶつけてみる。するとビリーは、
「フフフ、歴史学部のジェー○ズ・ボ○ドとは俺のことさ」
いつもの調子で返してくるだけだった。
「アホなこと言ってないでさっさとナビしろよ」
とこっちもいつもの調子で返す。
「でも、もう障害になる物は無いから、後は自分で探してくれ」
それを聞いたジャックは、とりあえず艦内を進み、奥に行ってみることにした。
次の投稿は、近日中に出来ると思うのでしばらくお待ちください。