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知らない別れ

今回短めです。

「ハァ・・・。何かやりきれないわね」


太陽も傾き西日が差し込む部屋の中でイントレビットは一人呟く。

イントレビットが今見ているのはオロモが残した潜水艦に関する資料だ。

これは元々ジャックがここに持ち込んだものだがファイルを開くパスワードが分からず悪戦苦闘していた物だったがデータを開きながら放置していた時に別のプログラムが作動しその場に居たイントレビットにヒントを与える事となった。

そのヒントは一般人なら皆目分からない代物だったがそこに居たのが『艦魂』である彼女だった事が幸いした。

ヒントの意味を理解できた彼女が早速解除にかかるとそれは直ぐに結果として出た。

その内容は前述のイントレビットの言葉通りである。

自分も大まかには妹のレキシントンなどから聞いていて分かっていた筈だったが、やはり当事者が残したものを見てしまうとどうしてもリアリティが出てしまう。

そう思えるほどの内容がそこに書き綴られていた。

しかしこれを見ないわ訳にも行かない。

この資料には様々な人の不幸や犠牲の下に存在しているのだから。


資料を大分読み進めたイントレビットではあったが、その膨大な量に半日掛かっても全体の3分の1に届くかどうかと言うもので流石に人より体力のある艦魂とは言えどその顔には薄っすらと疲れの色が浮かんでいた。

そろそろ一息休憩を入れようかとイントレビットが思っていた時だった。


「ただいまー」


入り口のドアが開き出掛けていたジャックが戻ってきた。

イントレビットはすぐさまデータの内容をジャックに伝えようとするがそのジャックの姿を見て思い止まった。

朝方に出て行った時とは打って変わってその顔には疲労の為か目の下に隈が出来ており、顔色もどこか青白い。

イントレビットは最近色々と疲れているジャックに気分転換をさせようと外出を薦めたが帰って来たジャックの顔色は出て行く前よりも疲労も色が濃くなっていた。

彼女はそれを不審に思いジャックに尋ねたが、当人のジャックは「問題無い。ちょっと外出先ではしゃぎ過ぎただけ」と言うばかりで、体を引き摺るようにそのままの足取りで止まる事無く自分のベットに潜り込むと早々に寝息を立て始めた。

ジャックに何かあったことを感じ取るイントレビットではあったが本人が余計な詮索を拒んでいるのが彼女に更なる行動を妨げようとした。

このまま無為に過ごしても良いものかと頭の中で思案するイントレビットではあったが中々良い案が浮かばない、思考の中身に段々苛立ちが混じり始めたところで部屋に更なる来訪者が訪れた。


「やっほー、おっちゃーん元気ィ? ってアレ? いない」


いつもの陽気を通り越して能天気にも聞こえる声を響かせながら現れたのはグロウラーだった。

だが、目的の人物が見当たらなかったようで言葉の最後の方は少しトーン落ちた。

時計の針はもう午後6時を差しており、普段のグロウラーならばもう就寝の準備を始める時間だったが彼女は今ここに来ている。

そんな普段とは様子の違うグロウラーにイントレビットは何事かと尋ねるとグロウラーはジャックがイントレビットから追い出された後からの事を語る。


「・・・で、何かを思い付いてそこに行った後からは分からないと」


「はい、でも帰って来た後におっちゃんの様子がおかしかったからには姐さんの言うとおりきっと何かあったんだと思います」


「でも本人が言いたくないって言ってるしなぁ~」


結局問題が廻り回って元の位置に戻ってしまった事にイントレビットは頭を抱える。

議論が煮詰まらない中、グロウラーが一つの案を出した。


「姐さん? ここは放って置くと言うのはどうでしょう?」


「エッ!? でもそれは・・・」


グロウラーの「ジャックを見捨てる」案にイントレビットは渋い顔をする。


「何も完全に見捨てると言う訳ではありません。無理に答えを見つけ出すよりも偶には流れに身を任すってことも重要だと思うんです。ほら、東洋の諺にも『急がば回れ』って言葉もありますし」


その意見にイントレビットは腕を組んで唸ってはみたが、他にこれと言ってよい案がある訳でもなくここはグロウラーの意見を取り入れる事にした。


「分かったわ。でも、もしもという時は・・・」


「はい、その時はちゃんとサポートしますから安心してください」


暫くは様子見と言う事でその場は決着が付いたのだが、その裏で自体はもっと最悪な方向で進んでいたのをまだこの時二人は知らなかった。


「そう言えば姐さん、クリスマスパーティーの準備はどうしたんですか? 今回はおっちゃんも居ると言う事で少しは派手にしようって言ってたのに部屋を見る限りは何もしてないように感じますが?」


それを聞いてイントレビットの背中からは嫌な汗が噴出し流れ落ちた。

つまり完全にクリスマスパーティーの事を忘れていたのだ。


「ググググ、グロウラー、今すぐ準備よ! ジャックは目を覚ます前に!」


「エ、エエエェェェーーーッ!!」


部屋に響く怒号に寝ているジャックは少し眉を顰めるも起きる事はなかった。だがその横で二人の少女が準備に右往左往していたのはまた別の話。






そんな騒動が起こっていた同時刻、ここハドソン川の畔にある歩道にビリーがいた。

ビリーは何か考え込むようにただ一人で歩道脇の手摺にもたれ掛かる。


「グズッ・・・。クソ、早く春になんねえかな?」


鼻を啜りながらそう呟く彼の台詞には同情する事は出来るが、冬を経験している大体の人間がそう思っている事だろう。

十二月の寒風吹き荒ぶ中、着込んだダウンジャケットも余りその役目を果たしてくれない。本当ならもう一枚着込みたいぐらいだった。

今年一番の冷え込み。

ニュース番組の天気予報士はそう解説していた。

この冷え込みは年末に向かってさらにひどくなるそうである。

ビリーにとって忌々しい事この上なかった。

彼は寒さには余り強くない。南部育ちの弊害を今、全身で感じているところだった。

しかし何故そんな彼が身も縮むような思いまでしてこのような場所に居るのだろうか。

彼は熱を持った頭をその寒風をもって冷やしたかった。

彼は決断を迫られていた。

結論を出すのは簡単だった。ただ自分の一声を出せばいいだけの事だから。

だがその決断次第では今後の物事が大きく予想外の方向に動きかねない。

だから彼はその答えを出すのに窮していた。


その後しばらく風に身を晒していたが覚悟を決めたのか、ポケットから自分の携帯を取り出す。

数回の発信音の後に目的の人物が出た。


「ああ俺だ、少しまずい事になった。ジャック・ニコルソンに気付かれたかも知れん、作戦変更を変更する。そうだ、状況赤レッドだ。」


それを聞く相手の口調は少し狼狽しているようにビリーには感じ取れた。

そしてビリーは結末だけを簡潔に伝える。


「ジャック・ニコルソンには遅くても一週間以内にこの世から消えてもらう」


それは親友とは思えないようなひどく冷酷な声だった。


相手との通話を終えたビリーは大きく息を吐くと天を見上げる。


「じゃあな、ジャック・・・」


親友と呼ばれた男は友に静かに別れを告げた。

えー、2ヶ月近く放置してしまい申し訳ございません。

色々私的な事情がありまして、まあ言い訳がましくなってしまうのですが今私3ヶ月近くの長期出張に出ておりまして自由時間が余り無いと言うのが現状です。

それに若干のスランプみたいなものに陥ってしまい更新が遅れに遅れてしまいましたこの場を借りて深くお詫び申し上げます。

そんな遅筆の私ですがこの物語の最後までお付き合いいただければ幸いです。

後、気分転換に『にじファン』の方で作品を上げましたので、よろしければそちらの方もご覧になってください。

ご意見、ご感想待ってます。

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