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彼、彼女と過ごす日常(下)

今回は早く出来ました。疲れた・・・。

ハワードは一人で赤い絨毯が敷かれた廊下を歩いていた。指示された場所へ向かう途中、何人かの人とすれ違うが皆忙しいらしくハワードに軽く一礼するだけで通り過ぎてゆく。

しばらく歩くとハワードは目的の場所へと辿り着いた。

目の前には白く塗装され綺麗に彫刻を施した扉が来訪者を出迎える。しかしハワードはそんな扉には何の感慨も抱かないのかドアノブを掴むと無造作に開放する。

扉の向こうには軍服やスーツを着た面々おり、突如現れた来訪者に顔を向ける。しかしその顔は来訪者を歓迎するものではなくどちらかと言えば厄介者を見る顔に近い。


「いやいや、皆さんお揃いで。国防長官から統合作戦本部議長まで。まあまあ、ご苦労な事ですな」


 ハワードは皮肉めいた笑いでそんな部屋にいる面々を眺める。

言われた方は更に表情を険しくし鋭い視線でハワードを睨む。

一触即発、そんな空気が部屋の中に充満しそうになった時だった。


「やめないか見苦しい」


 部屋の奥にいた一人の人物が声を上げた。

この人物こそこの部屋のあるじであり、アメリカ合衆国の最高権力者でもある人物だった。

アメリカ初の黒人大統領で就任前より世界的に有名であり、その後も核兵器廃絶に向けての目覚しい取り組みによりノーベル平和賞を受賞している。


「ハワード議員、急に呼び出してすまないね。実は・・「大統領、私はこれでも多忙の身なので用件は手短にお願いします」・・・分かった」


 ハワードの失礼極まりない態度に大統領も顔をしかめる。

しかし、このままでは埒が明かないと思ったのか話を進める。


「君を呼んだのは他でもない。君が調べている『ジャック・ニコルソン』の事についてだ」

 

 大統領の言いたい事に本当は気付いているハワードだがここでは適当に誤魔化す事にした。


「お話が見えてこないのですが。彼につきましては逐一秘書からご報告している通りですが?」


 そんな反応が気にくわなかったのかすぐ隣にいた国防長官が声を荒げる。


「ハワード、誤魔化すのもいい加減にしろ! たかが上院議員の分際で!」


 そんな怒声にも全く怯む事無くハワードは冷静に切り返す。


「では、その上院議員に席を与えられた国防長官は誰ですかな?」


 その一声に国防長官は急に勢いを無くし、それ以降彼が発言する事は無かった。

無理も無い彼に今の席を与えたのはハワードだった。就任前、権力の後ろ盾がほしいと彼は泣き付いて来たのを助けてやったのだ。


「ハワード議員、このままでは話が進まないのだが。君も早く返りたいだろう」


 二人の間に大統領が入ると、それを受けて国防長官は苦々しい顔をして下がる。 


「率直に聞こう、君の報告にある『ジャック・ニコルソン』なる青年は今進めている計画プロジェクトの障害になりそうなのかね?」


 こうなる事にハワードは予想していた。もともとこの計画はハワード主導ではなく国家的プロジェクトだったのだ。それにジャックは足を突っ込んでいた。「勝てる訳が無い」そんな理由からジャックの元へこの件から手を引かせるべくあの時自ら赴いたのだ。

しかし、結果は違っていた。彼は無謀にも立ち向かって来たのだ。ハワードはやっと自分に匹敵する人物を見つけたと素直に嬉しかった。だから「芽は潰したくは無い」それが本音だった。


「正直、今は何とも言えないのが現状です」


 「今はまだ時では無い」自分にそう言い聞かせる。そしてこれが今、ハワードにとって一番の回答だった。

その回答に対する大統領の反応は冷やかなものだった。

「そうか」と呟き自分の椅子に腰掛けると落胆の表情を浮かべる。

大統領にとって、いやこの国にとって今進めている計画プロジェクトは国の威信に係わる重要なものだった。それがただの学生に台無しにされるなんて悪夢よりも恐ろしい事だった。


「ハワード議員、私もアメリカ国民である彼を傷付けたくは無い。よって今回は保留とするが状況が変わったら直ぐに報告するように」


「分かりました。お任せ下さい大統領」


 ハワードは自身ありげに笑う。余裕の表れだった。

大統領はこの顔を見て万事順調なのを改めて確認した。



「全く、厄介な事になったもんだね」


 大統領は隣の統合作戦本部議長に喋り掛ける。

統合作戦本部議長も「そうですね」と頷く。


「ところで計画プロジェクトの進捗状況は?」


「現在の所85パーセントといった所です」


「意外に早いな」


 予想外の結果に大統領は驚く。

この計画は始動より既に数十年が経過しており大統領もこの計画を聞いた時にはまだ十年は掛ると言う報告を受けていたからだった。

それに構わず統合作戦本部議長は続ける。


「はい、昨年度からの新技術投入によって工程の五割の短縮に成功しました。早ければ来年の今頃にはテストに入れます」



「防諜対策は?」


 大統領にとってこれが一番の気がかりだった。現にジャックが気付いていないながらもその一角を掴める位置にいるのだ。

今度はまだ苦い顔をしている国防長官に尋ねる。


「その点については大丈夫です。ハワードの報告以外不審な点はございません。マスコミ関係もカネと規制緩和をチラつかせると大人しいものです」


「所詮は利権主義の亡者共か・・・」


 その報告に安堵したのか大きなため息をつくと大統領は顔を引き締め閣僚にもう一度徹底するのだった。


「この計画プロジェクトは核兵器に変わり将来この国の国防に関する重要なものだ。心して掛かってくれ」


 その場に閣僚全員が力強く頷く。

そしてその日の会合も終わり部屋にいた全員がその場を後にする。


 「ハワード議員、待ちたまえ」


今日の会合がやっと終わり帰ろうとしたハワードは誰かに呼び止められた。ふと振り向くと海軍作戦部長だった。


「どうしたんです?」


 ハワードが怪訝な顔で海軍作戦部長を見つめる。

彼はハワードの傍まで近寄って来てそっと耳打ちする。


「器の準備は万全なんだね?」


「はい、後はテスト待ちですが集めるのには苦労しましたよ。本来ならばアレは軍の管轄では?」


「君にはすまないと思っている。だが、これは君にしか出来ない事なんだ」


「まあ、それは重々承知しておりますが・・・」

 


「くれぐれもエルドリッジ号事件の二の舞にならないように注意してくれ」


 その言葉にハワードは表情を固くする。

それを了承の仕草ととったのか作戦部長はそのまま去っていった。




「全く、あの馬鹿共には呆れて物も言えん」


 帰りの車中でハワードは一人悪態を吐いていた。

それを見かねたのか秘書が宥める。


「まあ、仕方ないでしょう。彼らには現政権を良くすると言う事しか頭に無いのですから」


 ハワードは胸にこみ上げる怒りが収まらないのか、力任せに拳をシートに叩きつける。


「この計画が軌道に乗れば再び強いアメリカが復活出来ると言うのにあいつ等はただの外交のカード位にしか思っておらん!」


「ですが、今まで政権に援助を貰わなければここまで進展しなかったと言うのも事実です」


 ハワードは唸る事しかできなかった。

確かに秘書の言う通りである。強大な権力を持とうと莫大な資金や資材、人材まではハワード個人の力ではどうしようもなかった。そこでハワードは歴代政権に政界での優位を見返りに計画への政府の参加を打診してきた。反応は様々であったが殆どは計画の参加を承諾しそれら政府の援助を受けてここまで漕ぎ着けたのだった。

しかし最近になってある問題が浮上した。今までハワード主導だったこの計画が援助している事をを理由に前政権あたりから計画方針に干渉するようになった。こうなる事をある程度は予想していたハワードではあったが政権側からの圧力はここ一年で無視出来ないものとなっていた。


「そろそろ、こちら側も本気になる必要があるな」


 ハワードは今後の方針に向けて失敗できない舵取りが要求された事に一人思案する事となった。



「ご思案中のところ申し訳ないのですが、新たな問題が起こりました」


 秘書は頭を捻っているハワードに一枚の書類を渡す。

その報告にハワードが「またか」という顔をするが書類の内容を見た瞬間、目を見開く事となった。


「これは本当か?」


「はい」


 ハワードの問いに秘書は冷静に答える。


「フフフ、これは面白くなってきたぞ」


「私には問題が増えただけにしか見えませんが」


 秘書の心配をよそにハワードは笑う。

そして何か決めた様な顔をすると。


「おい、至急ニューヨークに向かうぞ」


「はい? しかし明日は地元で講演会の予定ですが」


 突然の予定変更に秘書は戸惑うが、それでもハワードは譲らない。


「全てキャンセルだ」


 その強硬な主張に秘書は呆れながら車を走らせるのだった。

 


 

GWを利用して一昨日生まれて初めて呉に行ってきました。

大和ミュージアムや鉄のくじら館などを回ったのですが、陸奥の主砲って大きいですね。さすが41センチ、私が今まで見た陸自の155ミリ榴弾砲が玩具に見えるぜ!

あんなのから撃ち出された砲弾が降って来るのを考えるだけでオソロシイ。

次に鉄のくじら館に展示されていた「ゆうしお型潜水艦あきしお」を見学したのですが狭いのなんの海自の皆さんお疲れ様です。

他にも米潜に搭載されていた双眼鏡や日本の伊号潜に搭載されていた双眼鏡が展示さているのを見る事が出来良かったです。

最後に呉に停泊している護衛艦が見たくて呉基地に行ったのですが、中々見えず意地になって近くの山に登ってやっと見る事が出来ました。

運良くおおすみ型のおおすみ、しもきたを見る事ができ、他にも艦名は分からなかったのですがむらさめ型三隻、あぶくま型三隻、たかなみ型?二隻、とわだ型一隻、その他小艦艇多数が登山の甲斐あって見る事ができました。

ここで気付かれた方もいるかも知れませんが実は私、生で軍艦を見た事がありません。

何分、内陸の海無し県出身なものですから今まで見る機会が無かったのです。ですから今回の呉旅行は大変勉強になりました。これを生かして次からの執筆活動に役立てていきたいです。


後、蛇足で最初に触れた戦艦陸奥なのですが近年、引き上げられた後の解体の様子を記録した写真をホームページ上で公開されている方がおられました。興味のある方は「桜と錨の海軍砲術学校」で調べてみてください。

他にも旧海軍の砲術や水雷の文献なども公開されています。

長文失礼しました。

ご意見、ご感想待ってます。

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