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東方から来た者

どうも、やっと投稿できた山風です。

今回は前からその行方が気になるあの人物が登場します。

翌日、アルバイト先のカフェでジャックは目の下に大きな隈をつくりハリソンに与えられた店先の掃除をフラフラと覚束無い動作でやっていた。見ている端から危なっかしい。

昨日の一件でジャックがアパートに帰った時には既に夜中の三時を回っていた。しかし今日は開店の準備のため朝の六時前には出勤しなければいけなかった為、殆ど寝れなかったのだから無理も無い。


店の中からそんなジャックを見かねたのか主人のハリソンがジャックを呼び寄せる。


「ハァ、ジャック君。私達の商売は接客業なんだからそんな病人みたいな顔で仕事をするのはやめてくれるかい?」


そう言うとハリソンは店の中にある鏡を指差す。その鏡に映ったジャックの顔は確かに最悪の顔だった。今ならホラー映画のゾンビといい勝負が出来るだろう。


「今すぐに洗面所で顔を洗ってきなさい、掃除は私がやっておくから」


「すみません」とジャックは謝ると顔を洗いに洗面所へ向かう。冷水を手で掬い顔を洗うと幾分かましになった。そして洗面所を出る前に両頬を手で叩き気を引き締める。


「オッケー、今日も頑張ろう」


ジャックの一日が今朝も始まった。

ジャックが店内に戻ると既にハリソンが店先の掃除を終えカウンターに立ち紅茶を淹れている最中だった。戻ってきたジャックに気付くと作業を続けながら語りかける。


「目は醒めたかい?」


「ええ、すいません御心配をおかけして」


「次からは気を付けるんだよ、若者は元気なのが一番だからね。いくら調べ物があるからといって健康管理まで疎かにしてはいけないよ」


ハリソンはジャックに怒る事無く、穏やかに諭すとカウンターの上に置かれたティーカップに紅茶を注ぐと角砂糖を沿えてジャックに渡す。


「これを三番テーブルのお客様に」


「分かりました」


ジャックはカップを受け取ると指定されたテーブルまで運んでいく。注文があった三番テーブルは店内の端の方にあり、他のテーブルから離れている為もある所為かよくゆっくり軽食を摂りながら仕事をする会社員などが使っていた。

オーダーが紅茶などから「近くの会社のOLかな」と考えを巡らしながら三番テーブルに目をやるとその予想は若干斜め上を行っていた。

そのテーブルに座っていたのはジャックが一瞬我を忘れるほどの美人だった。

凛とした鳶色の瞳と腰の辺りまで伸びた艶やかな黒髪が特徴の東洋系の女性が何冊かの本を見比べながらノートに何か書き込んでいる。

ジャックが女性のそんな姿に見惚れていると不意にその女性から声を掛けられた。


「あのー・・・」


「ハイッ!!」


自分の緩みきった顔を見られたかと想いジャックは驚きながら返事をする。しかしそれは杞憂だった様だ。


「それ、私が頼んだ紅茶ですよね?」


女性が苦笑しながらジャックが持ってきたトレイを指差す。


「あっ!申し訳ございません」


すっかりオーダーを忘れていたジャックは謝り頭を下げると紅茶を女性に渡す。折角気を入れ直して仕事に励もうとしていた所なのにとんだ失態をしてしまいジャックは顔を真っ赤にする。

そんなジャックを見て女性は耐え切れなくなったのか、口を手で押さえながらクスクスと笑い出した。

ジャックとしては仕事は失敗するわ、美人には笑われるわ、最悪な一日の始まりにもう泣きたくなっていた。

さすがにそんなジャックに悪い事をしたと思ったのか女性はジャックに頭を下げる。


「ごめんなさい、そんなつもりじゃなかったんだけど、気分を害されたのなら謝ります」


「そんなそんな、悪いのはこっちの方ですし。お願いですから頭を上げてください」


そんな女性の行為にに慌てたジャックは深々と頭を下げようとする彼女を止めようとした。

その時ジャックの伸ばした手がテーブルの端に当たり、その上に載った本などが数冊落ちてしまった。


「も、も、申し訳ございません! 今直ぐ片付けます!」


落ちた本を手に取った瞬間、ジャックはその本の内容に驚愕する。


「センソウロク?ニホンカイグンニュウモン?」


何かの実用書か参考書の類だろうと思っていたがそこにはビリーの部屋の本棚に並んでいてそうな本ばかりがあった。予想の斜め上どころか場外ホームラン級の代物である。

本を手に取り思考が完全にフリーズしているジャックを見て女性は顔を引きつらせながら苦笑する。


「ち、ちょっと調べ物があって、その参考資料に使ってるのよ・・・」


「へーー、ホーー、フーーン・・・・・・」


ジャックは既に心此処に在らずといった感じで女性の言い訳にただ適当な相槌をうつだけだった。

パラパラとページを捲っていくと、一枚の写真が落ちた。それを拾って見てみたジャックの顔が強張る。


「これは!!」


その写真にはジャックが持っている写真と同じ潜水艦が写っていた。細かいところは多少違っていたがそこには確かにジャックが捜し求めている潜水艦が写っていた。


「ああ、それ? それが今調べているもの。偶然見つけて興味を持っちゃって、」


「実は僕も!」


ジャックはポケットから自分の持っている写真を取り出す。

今度は女性の方が驚いた。


「ええ! あなたもなの?」


この偶然に二人はただただ驚くばかりだった。

ジャックが自分とと同じ潜水艦を調べていると分かると早速彼女はは話を切り出す。


「あのー、良かったらでいいんだけど。この潜水艦を調べるのを手伝ってくれないかしら?」


「いや、でも・・・」


ジャックは答えを出すのを渋った。

何故なら今ジャックはこの潜水艦を調べている為に生活を脅かされている。

現在は平穏を保ってはいるが、何時このバランスが崩れるのかは分からない状況だった。その為これ以上人を巻き込みたくはないし、この女性にもあんな目には在ってほしくは無いというのがジャックの心情だった。


「ええー、良いじゃない仲間は多い方が良いんだし」


このままでは埒が明かないことを予感したジャックは思い切って切り出した。


「その潜水艦については余り調べない方がいいと思う」


その言葉を聞くなり女性は怪訝な顔をして食い下がる。


「どうして?良いじゃない別に、あなたも調べているんだからお互いにメリットになると思うんだけど?」


「訳は話せないんだけど、やめるべきだ。あなたの幸せのためにも」


頭から否定された女性はジャックをキッと睨むと。


「納得いかないわね、前言を撤回するわ。私は興味のためだけじゃない、ちゃんとした覚悟を持ってこの潜水艦について調べている。この覚悟は生半可なものじゃないそれだけは言える」


どうやら女性は相当な覚悟を持ってこの潜水艦を調べているようだった。そこでジャックは妙な既視感に襲われる。

ジャックはその正体について思い当たる節が合った。自分の状況によく似ているのだ。ジャックが調査を始めたぐらいの時、フォスター教授に「もう調べるな」と宣告された時の様子と酷似していたからだ。最も今度は自分が教授側の立場になってはいるが。あの時の教授の心境はこんな感じだったのだろう。まさか自分があちら側の立場の人間になろうとは皮肉なものだった。

もう迷いは無かった。

そんな風に考えているジャックの姿を見て女性はまだ怪訝な顔をしている。すっかり蚊帳の外といった感じだ。

ジャックは顔を綻ばせると承諾の意を伝える。

いまさら何を思っているのだろうか、僕はもう引き返せないところまで来ているのだから。


「分かったよ、協力する。ジャック・ニコルソンだよろしく」


「こっちこそ、サヤ・ホンゴウよ国籍は日本。サヤって呼んでちょうだい」


二人は握手を交わす。

こうして新たな仲間が謎の解明に加わった。


その時、耳障りなブレーキ音がして1台の車がカフェの前に止まる。その車にジャックは見覚えがあった。その車を見たら誰もが振り返るであろうごついボディと独特な迷彩。

見間違えるはずも無い、奴が来たのだ。

ドアが勢いよく開いてその人物が姿を現す。その人物はしばらく辺りを見回しているとジャックの姿を見つけたのかジャックの方に向かって叫ぶ。


「ジャアァァーーーックゥゥーーー!! 会いたかったぞおぉぉーー!!」


「ビリイィィーー!! またお前かアァァーーー!!」


こうして改めてビリーを加えた三人の調査がスタートしたのだった。



最近、あまり時間が無いので更新が遅れると思いますがご了承ください。

あと宣伝で職業小説企画に参加しておりましてその作品も投稿しました。

興味のある方はご覧ください。

ご意見、ご感想待ってます。

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