表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/40

圧力(中)

今回は早く投稿できました。

よかった・・・。

    

突然の呼び出しにジャックは驚いた。しかも今度は教授レベルではなくこの大学の責任者である学長からの呼び出しであるから当然といえば当然だが。

帰り支度もそのままに今度は学長室に向かう。

朝の教授の部屋とは違った重厚な造りで出来た木製の扉をノックしてジャックは部屋に入る。

学長室には二人の人物が居りそのうち見知った顔の人物が近づいてきた。

黒縁メガネをかけた年齢は60にとどこうかという学長は満面の笑みでジャックを迎える。


「やあ、ニコルソン君。おめでとう」


「エッ?エッ???」


突然の祝福にジャックは何を祝われているのか分からない。

学長はハッとしたような顔をして、


「いや、すまんすまん。少し気持ちがはやってしまってね」


詫びの言葉を入れながら話を続ける。


「何を隠そう君に海外留学の話が来てね、いや君のような優秀な学生を持てて学長としても鼻が高いよ。ハッハッハッ」


と言いつつ笑っている。

すると学長の奥にいた人物が前に出てくる。

高級そうなスーツで身を固めている。

年は学長と同じくらいだろうか?見知らぬ人物だった。どうやら大学の関係者ではないらしい。

そこで学長が紹介する。


「紹介しよう、上院議員のハワード氏だ」


ハワードと紹介された人物はジャックの前まで歩み寄ってくると、


「アメリカ合衆国議会上院議員のハワードです。どうぞよろしく」


ハワード議員はスッと右手を出して握手を求める。


「こちらこそ・・・。ジャック・ニコルソンです。歴史学部に籍を置いています」


ジャックは意外な大物の登場に驚くが自分も自己紹介をしてハワード議員と握手を交わす。

学長は議員に応接用のソファに座るように勧めて議員は腰を下ろすと残る二人も腰を下ろした。


「ところで学長、海外留学の話と言うのは?」


そう言われ学長はハワード議員の方を見ると議員は軽く頷いた。


「こちらのハワード議員とは昔より懇意にさせていただいていてね、昨日あった昼食会の折に雑談をしていたら、あるレポートを書いた学生について大変興味を持たれたらしい。それが君だ、確か近代ヨーロッパ史だったかな?内容はまだまだだが何か光るものを感じたとおっしゃっていた。議員は優秀な学生を支援する活動もしていらっしゃって、それで未来ある若者を育てていこうと言うお考えなのだ。」


確かにジャックは1年前に近代ヨーロッパ史についてのレポートを書いたことがあった。

しかし、提出したフォスター教授の評価は余り高くは無かった。

なぜなら内容としてはかなりありふれたものだったし題材も教授が予め用意していたものだったからだ。学長から言われるまでジャックの記憶からは今の今まで消え去っていた。

その程度のものだ。だから、


「お気持ちはありがたいのですがこんな程度レポートで海外留学なんて僕には過ぎた待遇です。だから留学の話は僕よりももっと優秀な学生に勧めてください」


ジャックは丁重に留学の旨を断ると学長と議員は渋い顔をした。


「いいかいニコルソン君、こんな話は中々無いんだよ!君はこのチャンスを棒に振るきかい?」


学長は留学の話を断るジャックを信じられないと言う顔で見る。


「そうともニコルソン君、海外の整った環境で勉学に励めばもっと才能を伸ばせると言うのに」


議員も最初とても残念そうな顔をする。

その後、学長は何とか説得しようと留学のメリットを何度も何度もジャックに説明したがジャックは頑なに断り続けた。

すると議員が再び前に出て来て。


「ニコルソン君、二人っきりで話がしたいんだがいいかね?学長、ちょっと少し席をはずしてもらいたいのだが?」


ジャックは突然の提案に少し疑問を感じたが断る理由も特に無いし、相手が上院議員なので無碍に断ることも出来ず渋々了承する。

学長は留学の薦めに応じないジャックを議員自ら説得してくれると思ったのか、ニコニコしながら退室していった。

学長がドアを閉めると議員はジャックの方を振り向くと今まで穏やかだった部屋の空気が突如ピンと張り詰めた。


「どうしても断ると言うのかね、ニコルソン君」


さっきまでの穏やかな口調とはかけ離れた凄みのある声でジャックに問いかける。

ジャックは、はいとだけ答えた。


「学長は君にチャンスだと言ったはずだね?私もそう思う。なぜならこの話を大人しく受けてくれたら前途ある若者を失わずに済むからだ。今朝、フォスター教授から聞かなかったのかい?」


ジャックの体はその言葉を聞いた瞬間ピクリとも動かなくなる。

胃が縮み上がり、呼吸が激しくなってくるのを押さえながらジャックはかろうじて口を開く。


「それはどういう意味ですか?脅しですか?」


議員に心の内を悟られまいと感情を出来るだけ殺して問いかける。


議員は不敵な笑みを浮かべながら。


「君はここ最近、ある物について調べている様だね。例えば潜水艦とか?」


ジャックはびくりと反応する。

それを見て鬼の首を獲った様に議員はさらに笑みを強める。


「図星かね?フフフ、その潜水艦の事を調べられると我々はとても困るんだよ、分かってくれるかい?」


ジャックもう言葉が出なくなっていた。

自分は今、とてつもないものを相手にしているのではないか?

このままでは自分の命が危ない!

そんな考えが頭の中を廻る。

そんな中、ジャックが呆然としていると、議員は憐れな小動物を見る様に、


「少々脅かし過ぎたか・・・。まあいい、君は何も出来ないただの学生だ・・・。変な気は起こさないとは思うが、一応忠告はしておく。命は粗末にしないほうがいい」


しかし、その一言でジャックの中に燻っていた何かが燃え上がり始めた。


「やめませんよ・・・」


ジャックはポツリと呟く。


「何だって・・・」


議員は再び怪訝そうな顔の変わる。

その時、ジャックの中でメラメラと燃えていた物が一気に爆発した。


「やめないって言ったんだ!聞こえなかったのかよ!この野郎!」


部屋にジャックの咆哮が轟く。


「君は一体誰にそんな無礼な口を利いていると思ってるのかね?」


反対に議員はいたって冷静な調子だ。


「権力チラつかせて偉そうにふんぞり返ってるジジイに言ってんだよ!」


ジャックはもう怯みはしなかった。


「よく聞けジジイ、僕はやりたい様にやる、テメエなんかの指図なんか受けてたまるか!いいか!これから僕のやることをしっかり眼に焼き付けとくんだな!」


最早、今のジャックを止める術を議員は持ち合わせてはいなかった。















前後編に分けようと思ったのですが、思ったより長くなってしまったので中編を書きました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ