1-71 春の宴 その6 ヤッタ
全員で最初の乾杯を終わらせると、完治の告知通りの無礼講、つまり、上下の関係や師弟の関係は取っ払い、みなが気を遣わず自由に飲み食いし、語らい、親交を深める宴の場となる。
十八や柱基たちも、自分たちの座に腰を下ろすと、早速持ってきたお弁当を広げていく。
「一応メインはおにぎりとサンドイッチで、あとは細かいおかず、副菜を適当に作って詰めてきたよ」
大きなランチボックスやタッパ類など、計八つの弁当箱を広げた。
メインと言ったおにぎりとサンドイッチは二箱ずつ、残りの四箱にそれぞれ、中を四つに仕切り四種類ずつ、計十六種類のおかずが詰められていた。
「うわァ~スゴいッ!これ、全部お父さんが作ったんですか?」
(お父さん?さっきも言ってたけど、なんでお父さん?)
横で聞いていた柱基は首をひねるが、十八の方は慣れたのか、はたまた宴会が始まり一杯呑みだしたからなのか、特に気にする様子はなかった。
「そうだよ~昨日は夜遅くまで、今朝も六時から起き出して、せっせと作ってきたんだよ~舞ちゃんも遠慮しないでつまんでよ~」
「いいんですか?」
「ああ、もちろん。もともと他の門下生の子たちにも食べてもらうつもりでたくさん作ってきたから、食べてもらえる方がありがたいんだよ~」
「そうなんですね~では、ひとつ……」
舞は、自分ではおにぎりを持参していたので、同じおにぎりではなく、サンドイッチの方を手に取り、ラップをはがして一口かじる。
「あ、これはイチゴジャム味だ」
「アハハハ、なにせ時間がなかったから、サンドイッチは全部ジャムを塗っただけなんだ~おにぎりもふりかけの混ぜ込みご飯を握っただけなんだよ~ゴメンね~手抜きで~」
「そ、そんなことないですよ~たとえ簡単でも、お父さんが手作りしたことに価値があるんですよ~だから、ありがとうございます~とっても美味しいです~」
(う~ん……)
宴会が始まってまだ十数分だが、弁当をつまみつつ横で二人の会話を聞いていた柱基は、ずっと奇妙な感覚にとらわれていた。この二人の会話を聞いていると、まるで……
その時、隣で同じように二人の会話を聞いていた春花が、おにぎりをほおばりながら不意に言った。
「今日はお父さんと舞さん、スゴく息が合ってゴキゲンだね~まるで親子みたいだよ」
「えッ(※注・柱基)」
「エエぇ~~ッ、や、やァだァ~春花ちゃん~親子だなんてェ~それじゃまるで、私がよっちゃん家にお嫁に来た、新妻さんみたいじゃない~」
「えッ(※注・春花)」
(そ、そこまでのつもりでは言ってなかったんだけど……)
と、内心では思いながらも、ただただ苦笑する春花。
だが、十八の方は、その言い回しがいたく気に入ったのか、上機嫌で笑い出す。
「アハハハ~柱基のとこに来た新妻さんか~いいねェ~それ~じゃあ、今日は舞ちゃんは新妻さんということにしよう~」
「エエっ!イイんですかッ?」
「いいよいいよ~柱基のとこに来た新妻さんだから、もうウチの娘だよ~」
十八にそう言われた舞は、一瞬、グッと握った両の拳を、アゴの下、胸の前まで引きつけると、ブルッと体を震わせて、小さく一言「ヤッタ」とつぶやく。
かと思うと、一転、両手は拳を握ったまま、天を衝くように真上に伸ばすと、自分も天を仰ぎながら「ヤッたァァ~~~っ!」と叫んでいた。
たとえ疑似でも、ごっこ遊びでも、ロールプレイでもいい。今日一日は天木家の娘に、と自分一人で浸っていたことだが、その場のノリで十八までが自分を娘だと言ってくれたのだ。
天を仰ぐ舞の目尻に、少し涙がにじんだが、あまり大袈裟にしていると不審に思われるので、あくまで宴会のノリでやってるように振る舞おうと努める。
そう思い直し、周りを見ると、ゴキゲンの十八以外、柱基と春花は、不思議そうな顔で舞を見ていた。
「あ、アハハハ……お父さんにウチの娘だって言われたのがうれしくって、つい、はしゃいじゃったのよ~驚かせてゴメンね~」
「あ~ウン、水流園さんがそこまでよろこんでくれるなら、僕は気にしないよ~この宴会の間だけのことだし」
この宴会の間だけ、という言葉が、舞の胸にチクリと刺さった。
宴会が終われば、またあの家の、狭い部屋の、湿った布団に戻らなければならない。だが、今は、今だけは忘れて、この時間を楽しもうと思う。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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さて、火浦家主催の花見会が始まったのに、今回の投稿は文書量が少なめなのは、実はまだ、この後の構成に悩んでいるからなのですよ~スミマセン~構成力弱くて~時間をかけて練らないと、しっくりこないのですよ~まあ、時間をかけてしっくりきたものを投稿しても、読んでくださる読者の人が満足されるかは、また別の話なのですが……(苦笑)と、とりあえず、マイペースでガンバります~
なお、次回の更新は二月二十五日・金曜日の八時を予定しております~
どうぞよろしくお願いします。
ではでは~(^^)




