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12/12

これからは二人で〜

投稿が遅くなってしまいすみません。

今回が最終です。

誤字、脱字ありがとございます


12


私の叔父だ。


そう言った王太子殿下へ私は振り向き見た。「私の叔父だ」と。

では師匠は国王陛下の弟、つまり王弟殿下ではないか。

シェリルは今の今まで知らなかった。師匠と出会ったのは私が幼い頃であり、お父様に連れられた道場だった。


師匠はニヤリと笑った。

「とりあえず、場所を変えて話をしよう」

国王陛下は残念ながら予定があるのでその場で退席した。


私たち全員が王族側の私室がある棟へ向かう、師匠がとある部屋の前で足を止めた。その部屋のドアは他とは比べものにならない立派なドアだった。その立派で重厚な扉を開けると、そこはとても広い部屋。この部屋は国王陛下が使う貴賓室。大勢の人々が一度に入り会議ができるくらいの長いテーブルがあり、床に敷かれた絨毯はふかふか。奥にはロングソファが三つもあった。それだけでもこの部屋の凄さがわかる。壁には歴代の国王陛下の肖像画が飾られてあった。その中に小さな肖像画があった。現国王陛下と師匠の幼い時のものだった。


(なるほどね)


お父様とお継母様、師匠と王妃様、王太子殿下と私でソファに座った。女官長がお茶を用意し、奥に立つ。アルフレッド様は王太子殿下の後ろに立った。

注がれた紅茶の香りが部屋に広がる。なんともいい匂いだ。

師匠がお茶を飲んでから話し始めた。


「ルーカスが儂のところの一門にお前を連れてきてから、武道を習い始めただろう。

しかし、儂はお前が習うことに反対だった。幼く、まして女性に武道や剣など習わせてどうするのかと。だがルーカスからお前の特殊な能力を聞いて特別に許可した。そのような能力を持っていればいずれ襲われたり、攫われたりするだろう、それを防ぐために許したのだ。ルーカスの心配もわかる。だからルーカスは成長したお前を同じ諜報員にさせた。元々素質があったのはわかっていたが、常に心配だった。儂にとってもお前は娘のようなものだからな。

そんな時に、ジークが儂のところへ訪ねてきた。

同じ形の武道をする女性がいると。お前たちは門では一緒にいたことがなかっただろう。

一門があまりに大きくなったので分裂させたのだ。当時一番弟子であったジークに弟子たちの一部を任せた。だからジークもお前のことは知らなかった。当時儂も誰に任せるかを悩んでいた。

ジークか、お前にその一部を任せようと前から思っていた。だがお前はルーカスと外国に行きっぱなしだ。だからジークに任せた。それにこいつは王太子だしな。だから今回はお前たちが競うのを見てみたかったのだ」


(そうか、だから同じ形だったのか)


王太子殿下は隣国で見た私の形を見たあと、私を調べて師匠のところに行った。だからシェリルを知った。

そして自分で見つけたシェリルは王太子妃の条件を満たしていた。


師匠が話を終えると王太子殿下が満足そうにいう。

「では結論が出たとこで、早く婚約をして、一緒に城に住みながら王太子妃の勉強をしてくれ。あぁ、部屋は俺と一緒だからそのつもりで」

王太子殿下はニッコリと横にいるシェリルに向かって言った。その目はもう逃げられないからなと。

すると師匠がニヤリと笑った。

「ではさきほど言った儂からお前の願を叶えよう」

師匠は王太子殿下の隣に座ったシェリルに聞いた。

王太子は自分の横に座る彼女をじっと見た。

そしてシェリルは静かに話しだす。


「私が挑んだ勝負ですので、素直に王太子殿下と結婚を致します。でも先ほど王太子殿下が仰ったことにつきましては却下です。結婚式まで私は伯爵家で暮らします。王太子妃としての学びは城へ通います。もし、キス一つするのであれば、その都度師匠に許可を得たのなら許します」


王太子殿下は愕然とし、その場で固まった。後ろに立つアルフレッドは、横を向き口を押さえて笑いを我慢している。

するとその場で立ち上がる。

「だめだ。シェリル嬢」

王太子殿下はそう言ってシェリルの前に膝を立てて座り、シェリルの手とり、自分の手を添えて懇願する。だがシェリルは微笑みながらするりとその手を抜けた。

そう王太子殿下はシェリルが倒れてからずっと一緒に過ごしていたので、その甘い蜜を知って彼女を離せなくなっていた。


そうとは知らずシェリルはさらに言う。

「私は今まで令嬢のようなこともせずに過ごしてきました。そのため学ぶべきことが多いでしょう。だとすれば結婚は半年とはいかず一年後でしょうか」


それを聞いて師匠と王妃様はククッと笑い出した。だが笑うに笑えないのが王太子殿下だ。

すると王妃様が助け舟を出した。

「シェリル、これからは今までのようには行かないわ。王都のお店は誰かにお願いしなさい。その代わりオーナーとしてならいいわ。それに一年は長すぎるわ。あなたなら問題ないからすぐにでも結婚式ができるから心配しないで」

王妃様は笑っていった。


「でも、そうね。結婚式は半年後としましょう。ドレスのこともあるし、今から準備すれば間に合うわ。でないとジークが可哀想だわ。これでも私の息子だから」

そう言って王妃様は笑いを堪えて話をした。

王太子殿下はほっとした顔をして、私の隣に座り直すが、()()()()()()()が納得できないようだ。


「半年後に結婚式を行うことは納得しましたが、どうして一緒に過ごすのは駄目なのです」

隣で渋る王太子殿下に私は言った。

さらに師匠が言う。

「王妃から聞いたぞ、シェリルを看病していたのは褒めてやるが、それにかこ付けてやらかしただろうが。戯け」

「殿下、結婚すればずっと過ごさなければなりません。この国で離婚はできないのです。ですからその間によく考えることができますでしょう。もしかしたら殿下が私との結婚を取りやめたいと思うかもしれません。そうなれば返品(熨斗をつけて)は効きませんし・・」

私の話を終える前に殿下は即答した。

「いや、そんなことは絶対ない!」


(あ、そう。どっから出るのだその自信は。本当にいいのかしら)

さすがの私もとうとう諦めた。



♢♢♢


半年後

結婚式前々の夜。私は家族で夕食を摂っていた。いつもと同じように。

ただ違うのは今、お継母様の横には赤ちゃんがいる。そう私に弟が出来たのだ。

彼はゾフィー・イングリット。私と同じ銀の髪で濃い碧の瞳を持った。

可愛い私の弟だ。


お継母様が食後のコーヒーを飲んでから私を見て言った。

「明日から、お城に行くのね。なんだか寂しいわ。いつでも帰ってきてね」

お継母様の隣に座るお父様がいう。

「殿下に迷惑をかけることのないようにな。店の方はマーシュとマリーに頼むから心配するな」

今後は王都の店に立つことはできないのでマリーにお願いすることになった。

マーシュには焙煎方法を教えていた。店のオーナーが次期王太子妃ということが知られて、店が繁盛し、近々2号店を開店する予定だ。

「はい、お父様、お継母様、ありがとうございます。マリーもありがとう」



自室に戻ると部屋の物を少し城に持っていったので、少しだけガランとしている。こんなに広かったのかと思う。

ベットに入るがなんだか寝付けない。

天井を見ているとなんだが色々あったのを思い出す。

そう、この半年王太子妃になる勉強をするため城に毎日通った。だが、もともと諜報員として過ごしていたので、大体はおさらいのようなものであった。そのため城の図書館で本を読んだり、王妃様とお茶を飲んだり、王太子殿下は遠乗りやダンスをして過ごした。

流石に王太子殿下もいちいち師匠に許可を得ることもなく過ごした。


結婚式前夜の夜、私は城の私室にいた。この部屋の隣は王太子殿下の私室だ。明日から王太子妃になり、王太子夫妻の部屋へと移ることになっている、

今日は念入りに体を磨かれ明日に備える。ふと窓を開けると綺麗な月が出ている。明日はきっといい日になるだろう。

ベランダでじっと月を見ていると隣のベランダの窓が開いた。

ジークフリード様が出てきたのだ。するとこちらに気づいた。


「なんだ寝られないのか?」

「そうですね。これでも緊張します」

するとジークフリード様は、一度部屋に戻りガウンを着て、私の部屋のベランダに飛び込んだ。

「危ないではないですか!」

「なに言ってんだ、これくらいで。少し話でもいいか?」

笑っていいそう言ってベランダから私の部屋に入った。


ソファに並びで座った。王太子殿下は私をじっと見る。その金の髪がサラッと少し揺れる。膝の上に置いた私の手を上から優しく包んだ。

「まだ言っていなかったから。シェリル、君と初めて会ったとき、俺は君に毒を吐いだだろう。()()()()。とても新鮮だったのだ。それが一目惚れかといえば自分でもわからないが、あそこで君を見つけ、君と話すのがとても楽しかった。諜報員として母上の仕事をして変装して舞踏会にいただろう。その時も何故か気になっていた。君を探してダンスを踊り、蹴りを入れられたが会えたことが嬉しかった。ただその後、俺を庇ったあの時に、君を失うのではないかととても恐怖だった。だからお願いだ。これからは私の見えるところに、ずっと俺の側にいて欲しいんだ」


今までになく真剣にいうジークフリード様を見て思った。


(あぁ、この人は嘘はつかない)


「えぇ、わかりました」

「今、君に口付けをしてもいいだろうか?」

目の前でじっと私を見るジークフリード様に私は素直に首を縦に振った。

すると端正な顔から微笑みがでた。頬に大きな手を添え、ゆっくりと私の唇を啄む。角度を変えながら優しく何度も。長い間私たちは口付けをしていた。

そして優しく唇が離れていく。ジークフリードはこれ以上すると歯止めがきかなくなると言って、私の頬を手でなぞり、名残推しそうに額にキスを落とした。

明日があるから楽しみはとっておくよと、そしておやすみと言ってドアから出ていった。


結婚式当日。

まさしく晴天。白い絹のドレスは王妃様、お継母と一緒に相談して作った。デザインはシンプルドレスだが動くたびに飾り付けた宝飾品がキラキラと光る。長いベールに頭には王妃様から譲り受けたティアラが乗る。王太子殿下はシルバーグレイの礼服が輝く。端正な顔がさらに魅力的だ。


教会で誓いを述べ式が終わり、城のバルコニーに向かった。これからは王太子妃として、そしてゆくゆくは王妃として彼を支えていかなければならない。

重いなぁと思っていた時、ジークフリード様が言った。

「二人で共に歩んでいこう」

ニッコリと笑顔で私にいった。

安心させる。そうだ、一人ではない。今までも一人ではなかった。お父様、お継母様、マリー、師匠、マーシュといたのだから。

そして今、私の横にはこんな素晴らしい旦那様がいる。


バルコニーから見える国民に手を振る。

私は横に立つジークフリード様に向かっていった。

「殿下、これから宜しくお願いします」

するとジークフリード様も私の方に顔を向け微笑みながらいう。

「こちらこそ末長く宜しく、私の妃」

そういい手を引き、私の方へ顔を近づけ頭を右手で支えて皆の前でキスをした。


ワァァーーーーーと、黄色い歓声が響き渡ったのが聞こえる。長いキスをされ隣には国王陛下や王妃様もいるにもかかわらずにジークフリード様はやってのける。

唇が離れて思わず私の顔が赤くなった。

それを見てまたキャァーーーと歓声が増す。


私は心の中でやられたと思った。でもこれが私の旦那様なのだろう。

互いに顔を見合わせて笑った。

真っ青の雲一つない空には、教会の鐘が響きわたり、花が舞った。














読んで頂きありがとうございました。

ブクマありがとうございます。

また精進してお会いできれば幸いです。

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