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風のゆうびんやさん

作者: 眞基子

 もこもこ森のまん中に、三角やねの赤いポストがありました。森のじゅうにんたちは、遠くに住んでいる親やきょうだい、そして友だちたちに、せっせと手紙を書いては赤いポストにいれました。するとやさしい風がふいてきて、手紙をふわふわっと風にのせて、配達してくれるのです。

ある日、くまのクロちゃんがやってきて、ピンク色のかわいい手紙を赤いポストにいれました。

「風のゆうびんやさん、この手紙をとなりの森に住んでいるうさぎのミミちゃんに、だいじにはこんでくださいな。こんどのぼくのたんじょう日に、あそびにきてほしいと書いてあるんだよ」

風のゆうびんやさんは、ピンクの手紙をくるくるっとつつみこんで、ふわっと持ち上げました。

「クロちゃん、だいじょうぶだよ。わたしがちゃんと、ミミちゃんにとどけるからね」

風のゆうびんやさんは、となりの森にむかって、ピンクの手紙をそよそよと、はこんでいきました。

しばらくすると、おさるのモンタくんが木の上から下りてきて、赤いポストにはがきをいれました。

 「風のゆうびんやさん、このはがきをそうげんに住んでいるぞうのエルくんに、とどけてくださいな。げんきでいますか、ぼくはげんきですよって書いたんだよ」

 風のゆうびんやさんが、ふうっと息をふきかけると、はがきは木の葉のように、ひらひらと空にまいあがりました。

 「モンタくん、そうげんをわたるさわやかな風にのせて、はがきをちゃんとエルくんにとどけるからね」

 風のゆうびんやさんは、そうげんが広がる谷にむかって、すうっと下りていきました。

 おやおや、お昼ねからおきたばかりの子りすのくるみちゃんが、ねむそうな目をこすりながら、小さい手紙を赤いポストにいれました。

 「風のゆうびんやさん、森のはずれに住んでいるおばあちゃんに、わたしてちょうだいな。いっしょうけんめい、おばあちゃんの絵を書いたんだよ」

 風のゆうびんやさんは、にっこりと笑いました。

「くるみちゃん、おばあちゃんの絵、大切にとどけるよ。きっと、おばあちゃんは、大よろこびだよ」

風のゆうびんやさんは、小さな手紙を受け取ると、森のあいだをふく風になって、木々をゆらしていきました。

もこもこ森の上に、くもがもくもく、かおをだしてきました。白いくもがはい色になり、やがて黒いくもにかわりました。ポツポツふってきた雨も、ざあざあと大きな音をたててきました。いつもは、やさしい風のゆうびんやさんも、ピューピューと大声を出しながら、木の枝をゆらしています。森のじゅうにんたちは、家に入ってしずかに雨のやむのを、まっていました。

すると、雨にずぶぬれになりながら、たぬきのポンタくんが、だいじそうに手紙をかかえて、赤いポストにいれました。

「風のゆうびんやさん、おねがいだよ。おかあさんがびょうきになったんだ。森のおいしゃさんに、大しきゅうきて下さいと書いてあるんだよ」

風のゆうびんやさんは、空にむかって大ごえで、黒いくもにいいました。

「少しのあいだ、雨をやましてくれないか。だいじな手紙をはこばなくてはいけないんだよ。わたしのたいせつな友だちの手紙を」

するとどうでしょう、黒いくもはすぐにきえて、青空が広がってきました。

「ポンタくん、大しきゅう、おいしゃさんにとどけるよ」

風のゆうびんやさんは、ピューとひとっとびして、ぬれた手紙をおいしゃさんにわたしました。そして、風のゆうびんやさんは、力いっぱい、おいしゃさんを下からもちあげて、ポンタくんの家まで、はこんでいきました。

つぎの日、三角やねの赤いポストに、大きな紙がはってありました。

「きょうは、つかれたので、お休みします」

風は、一にちじゅう、ふきませんでした。



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