黒き王の憂鬱 35
「プレイヤーとしては正しいけど、ゆーの思う人間としては良くないよねえ」
「……」
「でも、いいんだよお。今までもずっとそうやって、みんな悩んで傷ついて苦しんで、強くなったり弱くなったり、進んだり戻ったりしてたんだからあ」
そりゃ、リロが楽しむにはいいだろうね。でも、当事者にはたまったものじゃないよ。このゲームを含めて全部がそう。勝手に呼ばれてさ……。
いけない、また嫌な気持ちのループにはまっちゃってる。切り替えないと、切り替えないと……。
お葬式が終わって、おれたちは宿を引き払うことにした。いつまでもこのままじゃいられない、どっかで区切りをつけないと。
宿にお金を多めに渡そうかなって一瞬だけ思ったけど、やめておいた。わかんない、ここは今でもわかんないんだけど、どうしてかそれがいいって思ったから。
……どうなんだろう、本当は。
一応、ガスドンさんには出立を伝えておいた。来てはくれなかったけど、そのお詫びと戦いに勝ったことのお礼の書いた手紙が送られてきた。ウェス家とのことで手が離せないらしい。やることは、無限にありそうだしね。
そういえば、ほむらさんはどうしたんだろう? 戦いの時から姿を見せなかったけど……もしかして、死んじゃったのかな? でも、確かめようもないし……(流石に死なないであの学校に戻るのは無理だった)。
ともかく、おれたちは宿を出た。見送りもない、行きかう人たちもおれたちに気付か……いや、そもそも知らないのか。
腹は立つけど、怒る相手をどこに見つければいいかわからない。
全くこの戦いは……わからない。エファアイの時とはまた別の、もやもやが残るだけだった。外から街を振り返ってみても、初めてやってきたときと同じく、どんなところなんだろう? って気持ちが変わらないまま。
「で、ゆー? これから国を作るのよね?」
「大仰だな」
「要は家だろっ?」
「それって良いよね!」
「重要なのは水はけだ」
「日当」
「ばかだね~、防寒だよ防寒」
「お、おれは雨がしのげるならなんでも……」
「そうですね、いわゆる国家の成立に関しては歴史をひもとくと興味深い事実が。そもそも共同体から明確な上下、あるいは代表を見出すこと―」
「なんでもいいから落ち着きたい」
「って、おい」
プリアとムーラさん、キフォン&マイさんがいるのはいいよ?
でも、どうしてあの赤い幽霊と初めて見る人たちがついてるのさ? 誰?
「ゆーったら鈍いんだあ」
「な、なにが?」
「『黒き王の憂鬱』が終わったなんて言ってないけどお?」
言い返そうとして気づいた、そういえば、経験値がもらえてない。いや、報酬もらったしその後しばらくぼうっとしてたけど……そうだ、レベルをあげて(あげられて)なかった!
「ま、まだ何かあるの⁉」
「黒き王があのおじさんとは限らないのお」
「なら―」
ん? この感じは……視線? プリアと……みんながおれに……ま、まさか……
「さ、どうするう? 王様」
……噓でしょお?




