黒き王の憂鬱 31
「ゆー?」
「あ、さ、さがって!」
何が来るかわからない、魔法使いチクバさんを護りつつ距離を取る。有効打を打てるのは彼女だけなんだから、脱出された時を想定して動こう。
「私たちは?」
「あ、え、えっと……待機!」
プリアたちにも指示が必要だったんだ。大変だな命令をするっていうのも、特に命がかかってる時は。リロのいう前のプレイヤーには、そういうのがすごい人もいたのかな? ほら、戦国武将とか。どんなのだったんだろう……。
「っがあ!」
あ、初めて声を聴いた。う~ん、どうしてかこの世界にはいい声の人しかいないみたいだ。すっごくクールできざっぽい声してる……おれってどうかな? なにも言われないってことは、フツーってことかな。
変声スキルを……こう、格好いいのがいいよね。渋くて、でもおじいちゃんでもないダンディな……って、また余計なこと考えちゃってる。
それにしてもひどい光景だよね、なんだか犯罪組織の拷問みたい。でも、止めようとは思えない。それで逆襲されちゃうかもしれないし。おれも、どんどんひどい人間になっていってる気がするよ。
異世界は体によくないね。
「ゆー、止めの魔法がだせるぞい」
「え? だって、今……」
「それは拘束用のじゃ」
おおう、結構強いんだね。ということは、おれも魔法系を頑張って覚えてれば、このレベルでもこのくらいは出来るようになってたってことかな? 魔法使いを今から目指そうかな。
「どうする?」
「あ、お願い……します」
魔法使いチクバさんは、幽霊に手をかざした。
「火の司に乞う、敵を焼き滅ぼし給え……『赤槍雨』」
おお、空中に炎の槍が浮かんで……一斉に優勢に突き刺さって、爆発した。目に悪そう。
あとには焦げたあとだけが残って、幽霊は消えてた。
それからおれたちは、夜明けまでチクバさんたちを維持したまま、敵襲に備えて待った。だって、幽霊が倒せたかわからないもん。『監定士は嘘を吐かない』は、そこまで詳細に判別できないしね。やられたって見せかけて、隠れて狙ってる可能性もあるし。
死んじゃった時のあの光りが、炎で隠れて確認できなかった。これは仕方ないんだけどね。
警戒したまま転々として、ただ待つっていうのはつらかったけど、その分夜明けが来てくれたのはうれしかった。プリアやキフォンさんにつられて歓声をあげそうになったけど、殺し合いをしてたわけだし止めておいたよ。
イスト会の人たちも来てくれて、おれたちを確保してからウェス家側と連絡をとって、おれたちはとうとうこの戦いに勝ったと認められたんだ。




