黒き王の憂鬱 28
もっといい手がある? うん、今でもそう思うよ。ウェス家の『神訪人』がどんな女神たちの気まぐれを持ってるかもわからない、だから隠れて情報を集めてから仕掛けるとかさ。スパイのチクバさんもいるだろうし。
でも、それをどうしてもこれまでに思いつけなかった。1週間って長いように思えるでしょ? でも、何かしようとすると途端に瞬きするくらいの間になっちゃう。
特に、絶対に失敗できないことに挑戦しているときはさ。……そうだよ、言い訳だよ。結局おれはフツーだから、最善策がわからない、選べない、実行できないんだよ。悲しくなるからもうこれ以上はやめて。
はあ……それでも、やるしかないよね。
空き家に隠れて30分くらいが経った。これも作戦、空き家を一定間隔で移動して、相手に位置を……透視とかの女神たちの気まぐれやスキル、魔法があれば意味ないじゃんっていうツッコミはやめてね。
それを考え過ぎて、一回まじで頭がパンクして失神したんだから。対策って、やりだすとキリがないんだよね。
「それが完璧だったのがあ~」
「今までの天才さんたちでしょっ」
頭にくるよもう。
そういえばほむらさんはどうなったんだろう? やられちゃった? 案外みんなやっつけてる? そうだとしても、朝が来ないとこの戦いは終わらない。そういうルール。
「それ召喚獣?」
マイさんがチクバさんを指さして聞いてきた。
ちょっと失礼じゃないない? いや、召喚獣なのはそうだけどちゃんと意思をもってるし、指さすのはよくない。ほら、格闘家チクバさんもムッとしてるし。
「指さすのは良くないよ」
「そう? ごめん」
う~ん、なんか軽い。
「で、どうなの?」
「え、あ……きみの、女神たちの気まぐれを教えてくれたら、いいよ」
情報は大事、少なくともただじゃ教えてあげられない。もし敵になったら(というか頂点は一人だからプリアたちも含めて敵なんだけど)、『未来を握り合う手』を知ってるってことは弱点も知ってるってことになる。
よりレベルの上がった『監定士は嘘を吐かない』があればわかっちゃうとか、プリアにはもうわかってるとかいうツッコミはいいからね? 今やれるのをやるの。
「『もっと光を』体の明るさを変えられるの」
「『|存在の耐えられない軽さ《ストークス》』、身体を変形させられるっ」
あれ? あっさり教えてくれた? しかもキフォンさんまで……いいの、そんなに簡単にさ。
「ショボいよなあっ」
「なによ、そっちだって」
「折角のスキルなのに、体質みたいなもんじゃねえかっ」
「ブーメランよ、ブーメラン」
「喧嘩しないで……」
「嘘ついてるのかもよお」
はっ、そ、そうか。確かに、その可能性も……なら、この喧嘩も演技―には見えないなあ。ああ、取っ組み合いになっちゃった。
おお、マイさんを掴んだキフォンさんの手から、煙があがって飛び上がった。明るさと温度も変えられるんじゃない、やっぱり嘘?




