黒き王の憂鬱 21
そうでも思わないと、やってられないよ。
本心とは別……いや、もう一個本当の気持ちを持つんだ。そしてどっちも、本当だと思う。そうすることで……少しだけ楽になれた。
三日目の昼頃、宿の人から来客が待ってるって言われた。いたのは、まあやくざ以外ではないだろうなって人相のお兄さん(ガスドンさんより怖い)。明日、工場に来るようにってだけ言ってすぐに帰って行った。イスト会の人なんだろうね。
そういうわけで準備を始めたわけなんだけど、ムーラさんはどうにも物騒なんだ。
「舐められたらいかん」
「それは私も賛成」
「そうかな?」
一応味方なんだし、そんな張りつめなくてもって思うんだけど、どうも二人は違うみたいだ。服に気を使ってるし、新しいのを買いに行きもしちゃった。
プリアは体が作れるから大丈夫でしょって言ったら、すごくムーラさんに怒られた。だって鎧じゃんかよ……。
あと、おれまで付き合わされた。いや、戦闘用と普通用の服があるのはわかるよ? 制服と家の服のパジャマの違いはわかるもん。でもさ、言っちゃ悪いけどやくざの抗争の傭兵でしょ(傭兵でいいんだよね?)恰好て大事かな……。
「フツーって色々教えないとダメで面倒くさいねえ」
「教えなくていいよ、それなら」
「いい? 人は見た目が10割なのよお」
「9でしょ」
「10よお、見るも無残な外見だとねえ、裏でも偉くはなれないのお」
「そんなこと……」
「女神たちが言ってる無残な外見っていうのはねえ、見てられないくらいのよお。ゆーだって、わかってるでしょお」
「……」
おれは無視した。言い返せなかったから。リロの言ってるのは……うん、わかってるけど受け入れちゃいけないことだし。
結局、プリアとムーラさんに服を買わせられて、ガスドンさん立ち合いのもと、工場での他の『神訪人』との対面ってことになったんだ。
そこにいたのは……
「ガキじゃないかっ?」
影絵、そう、影絵が人間大になってしゃべってるの。何を言ってるかわからないだろうけど、影が立ってるとしか思えないんだもん。
「誰であろうと構わぬ」
バッタとカマキリとクワガタ(元の世界じゃクワガタはお店でしか見たことないけど)を合体させて大きくしたようなモンス……いや『神訪人』。
「あんたらよりは話が通じそうじゃん?」
で、最後に……燃えてる……人? 火が、女の人の形になって立ってる、みたいな。
要するにだね―
「誰も服着てないじゃん⁉」
「これは予想外だった」
「ね、外見10割でしょお?」
「ああ~、もお~」
プリアみたいな人ばっかりだと思い込んできたから……ちょっとショックがさあ……いろんな世界があるとはわかってるけどさ。




