黒き王の憂鬱 19
「話をしたのは初めてだ」
彼女の言うところによると、よくも悪くも『神訪人』はこの世界に生きている限り無視できない存在らしい。協力すれば世界統一に大きな力を与えてくれる、一方で自分が統一したいと大小はあっても思ってる人々には、脅威でもある。
というわけで、その近くには必ず波乱が舞い起こる。彼女たちみたいな根無し草で、逆立ちしても自力での栄達が見込めない人々には危機であり好機らしい。国でも作れば甘い汁が吸えるんだって。
宝くじかな? あと、これだとプレイヤーって、やっぱりすごく危ない人なんじゃないかな。最初から戦争ばっかりしてる世界であっても。
ま、要するにムーラさんはおれたちの仲間になってくれるってこと。人数が増えるのはいいことだけど、信用できるかな……。
プリアは二つ返事で受け入れちゃったけど。
「向こうだって同じよ、変な動きをしたらこっちでやっちゃえばいいのよ」
やだなあ、そんな殺伐とした関係。大体、ゲームで仲間ができるときってさ、お互いにイベントをこなして問題を解決して、そこから加入するもんじゃない? 中には途中で抜けちゃう仲間もいるらしいけど。
現に、おれたちの持ち物にプリアは干渉しないで一定の距離を保ってた。お金は自分で(そういえば結局報酬はエイメさんの分を渡す羽目になった)、食糧も、う~ん、やっぱりなんか嫌な感じ。
こういうリアリティ(ニックライの街に戻るまでの徒歩日数)はいらないと思うんだけどなあ……ゲームはゲームでいいのにさ。
そんなこんなで、おれたちは懐かし(くもない)のイスト会の工場に舞い戻った。さすがにどこにも寄る元気はなかったからね。
ガスドンさんはもう待機してたし、ドクトカゲをやっつけたことも知ってた。携帯電話もないのにどうやってって思ったけど、魔法はあるし最初からあの村に連絡員でもいれば、すぐにわかるよね。
「よし、上に伝える。……エイメは苦しんだか?」
「え? い、いえ……」
「そうか」
少ししんみりしてるガスドンさんを見て、おれはちょっと好印象を持っちゃった。いけないいけない、やくざなんだし、これだってそう見せかけて……ああ、なんて嫌な性格になっちゃってるんだろうおれって。
でも、どういう関係だったんだろう二人は? 部下と上司……っていうほど近くもなさそうだし、聞くのも変だよね。はあ……なぞは増える一方だよ。
何より、あのエイメさんがもういないっていうのが……どうしてか、すっごく寂しい。




