黒き王の憂鬱 17
「エイメさん~?」
「チッチッチ」
「猫探してるんじゃないんだから」
おばあちゃんがあれやってたなあ、家で飼ってる猫、どこにいてもあれ聞くだけで走って来てた。おばあちゃん……会いたいなあ。
「どうして私まで……」
「まあまあ」
1時間待って、エイメさんが戻って来ないからおれたちは探しに出た。ムーラさんは渋ってたけど、まあ、さっき言ってた泥棒(どうかと思うけど)をやらせてあげたら協力してくれた。
あとでエイメさんに色々言われるかな。
「ゆー、さっきの村に戻ってるんじゃない?」
「う~ん」
そこまでするかな……、いや、確かに危なかったしそうするかもしれないんだけど、エイメさんそこまであれって感じがしないんだよね。根拠はおれの判断しかないけど。
それと……リロがすごく嬉しそうなのが不安。ひょっとして、ひょっとする……そんな嫌な予感が強くなってるんだ。
でも、そう思わせてるだけかもしれない。邪神はそういうことする。きっと、それだけのはず……。
「あ」
緑が……草とかの緑とは違う緑。エイメさんの服が、ちらっと見えた。
すぐにおれは動けなかった。位置的にあれ、横になってる。……倒れてる?
深呼吸して、頭の中に陽気な音楽を流してみる。きっと、気絶してるんだ、心臓がすごく早くなってるけど、気絶してるのを見てそれが一気に解消されるんだ。その後は、エイメさんを起しておれたちは戦ってたのにって文句を言って、なあなあで報酬をもらって、いよいよイスト会の『神訪人』たちに会うんだ。
……。
エイメさんは倒れてた。うん、倒れてた。おでこから折れた木の枝を生やして、真っ赤な目をかっと見開いて。
「不運だよね~」
リロを見ないで、その声に反応して殴った。
柔らかい岩を殴ってるような感触が、それが全く彼女に通じてないって嫌でもわからせた。
二人を呼んで、エイメさんをテントまで運んだ。
ドクトカゲの死体に虫とか獣とか鳥とか集まって、うるさいし早速嫌なにおいがしてるのがすごく嫌だった。
嫌って言えば、二人も……これはおれのわがままだけど、もっとショックでいてほしいって……ダメだ、やっぱりわがままだ。プリアはともかく、ムーラさんは今日初めてあったばかりなのに。
「さっきの砕けた木の破片が、突き刺さったんだな」
「そんなことある?」
頭って固いんじゃない? こんなにすごく深く……うう、傷見てたら気持ち悪くなってきた……。ごめん、エイメさん。
「ここまでは見たことないけど、ある程度の大きさと速さがあれば簡単に体を貫くぞ」
「私もそう思うわ」
じゃあ、事故? それとも、ドクトカゲに木を折らせるようなことをした、おれたちのせい?
「ゆー?」
「あ、ごめ……うん」
なんで、泣いちゃうの? おかしいよ、一緒にはいたけど、エイメさんとは利用し合うだけで……なのに……。
でも、こんな……こんなのって……。
「変なの~」
うるさいっ。やだ、見られたくない。おれは急いで森に戻って、鼻がひくひくってならなくなるまで隠れた。




