強欲と強欲 3
「『未来を握り合う手』!」
チクバさんに頼るしかないよね。
「なんだコノヤロー」
「ええ……」
出て来たのは、ランニングシャツに迷彩柄のズボンをはいてるムキムキのチクバさんだった。バンダナに弓矢、ナイフに銃……なんていう映画だっけこの格好? しかしムキムキだよねえ、腕立てとかしてるのかな。
「急に呼び出しやがって、コノヤロー」
「あ、ご、ごめん。でも今オークに追われてて」
「なに? え?」
プリヤはまだ気づいてない。
「めんどくせーな、対価はきちんともらうからなコノヤロー」
「お、お願いします」
口は悪いけど、早速弓矢を構えてくれた。『オーク』の文字が浮かんでる方へ向けてくれてるし、いけるかも。
「な、なんなのよ?」
「オークが来てるの! プリヤも準備して!」
プリヤが慌てて『黒ノ鉄巨兵』を出そうとして、トビウサギの丸焼きを蹴飛ばした。ああ、こういう時にこういうことされるとすごく嫌だなあ。
しかも、申し訳なさそうに立ち尽くさないでよ。同情するよりも早く動いてって余計にイライラしちゃうじゃないか。
あ、そうこうしてるうちに、オークが出て来ちゃった。
でかい。そこら辺の木よりも少し小さいくらい……おれの3倍くらいはあるね。体は黄色くて、相撲取りみたいにがっしりしてる、まわしはさすがにないけど、布っぽいのを巻いてる。やっぱり裸だと色々まずいのかな。
眼は真っ赤、角が……8本くらいあるかな。オークって言われればオークとしか言いようのない姿だね。実際にオークを見たことなんかないけど、イメージって大事。漫画とかゲームでいっぱい出てるしね。
冷静すぎるって? そう、そこなんだよおれが悩んでるのは。こんな大変な状況なのに、落ち着いてるしこうやって説明する余裕もある、本当はないけど。
絶対にここに連れて来られた時、何かされてるはずなんだ。それが恐い、おれは本当におれのままなのかな?
おれが暮らしてた世界は実在するのかな? 考え始めるとキリがない、だから戻る、全部忘れて戻してもらう。
ま、それはそれとして、今はオークだね。
「なんだコノヤロー!」
アーミーチクバさんの矢がオークの顔面に飛んで行った。
それをオークは難なく噛みついて止めて、ぺって吐き出しちゃった。
「殺すぞ!」
アーミーチクバさんはナイフに持ち替えてオークの足を狙った。どうでもいいけど口悪いね。
けど、それも全然きかない。ナイフが全く立ってない。皮が固すぎるのかな?
「野郎!」
今度はオークによじ登っていった。眼とかを狙ってるのかな?