黒き王の憂鬱 15
信号機くらいはある……大きさもだけど、匂い、そう匂いだよ。実物を前にしたとき、匂いが一番リアルな感じになるよ。肉っぽい生臭さ、ぬめってるのに乾燥してる皮の感じ(これが匂いってのも変かな)。とにかくね、本物と絵とかの違いって匂いだと思うよ。生きて、存在してる匂い。
ま、ともかく……。
「―‼」
襲ってくるから退治しないと!
「―‼」
‼ 何か吐いてきた! ……ゼリー⁉ 水っぽいゼリーが地面に溜まって……! こ、これもすごい匂いだ。煙が出てる……毒⁉
「―‼」
「ひゃあ‼」
突進! 避け……られた! 大きいから動きが鈍いなんてことは全然ない、小さいトカゲのままの速さだから、突進するだけでおれなんか潰されちゃう。
「『未来を握り合う手』!」
「なんだコノヤ……うえっ、お、おいトカゲかよ……」
はい、出ましたアーミーチクバさん。ちょっと言動に不安はあるけど、睨んだ通り、モニモスよりも装備がしっかりしてる。おれのレベルがあがったおかげかな。
「ソウトウドクトカゲを倒すよ! お願い!」
「バカヤロー、チクバさんはトカゲとかヘビダメなんだぞ!」
「あ、ごめ……けどそんな場合じゃない―」
尻尾が叩きつけられて、おれとチクバさんはどうにか飛びのいた。地面に切れ目ができてる……いや~、鎧があっても意味ないでしょこれじゃ。
「『しっぽ攻撃』だねえ」
「技じゃないでしょ!」
「技だよお、みーんな名前があるのお。その方が楽しいからあ」
ええい、リロと言い合いしてる場合じゃない。
「ゆー!」
「プリアは『黒ノ鉄巨兵』! ただしトカゲの頭と真正面から向き合わないで! 毒がかかると危ない! エイメさんはとにかく逃げる!」
「もう、もう、もう、やってます~」
は、早いね、おい。まあ、逃げ遅れるよりはいいけどさ。
「ヤロー! さっさと終わらせてやるぜ!」
よし、チクバさんは銃で攻撃をはじめてくれてる。おれの手持ちの剣じゃダメージはないだろうけど、気を逸らせるなりなんなりしてみよう。
「『羽衣舞』‼」
おお、ムーラさんが生き物みたいに鞭を振るってトカゲを打ってる。毒々しい皮が一線で裂けて……ひい、赤い肉が見えてるよお。
痛くはあったのか、ドクトカゲがムーラさんへ矛先を向けた。
「ぶっ殺すぞコノヤロー!」
そこへチクバさんのバズーカが直撃した。バズーカでいいんだよねあれ? 銃の種類はわかんないけど、バズーカっぽいもん。
轟音、煙と共に肉や血の匂いが……やっぱり、リアルは匂いなんだなあ。こうやって書いてても、映像はなんとなくわかるかもしれないけど、匂いはわからないでしょ?




