黒き王の憂鬱 14
なんとか落ち着かせると、エイメさんが妥協案を出してくれた。おれたちがもらうはずの報酬から、いくらかムーラさんに渡すってこと。
「私も、私も、私も、出しますから」
ちょっと恩着せがましい感じはするし、そもそもおれたちが最初に受けてるんだし、ムーラさんの文句の先は紹介した『願寄所』じゃないかって思ったけど、彼女の様子を見るとカッカきてるみたいだから、そういうとまた喧嘩になりそう。
ほら、怒ってるときに正論をスラスラ言われちゃうと余計ムカッとしない? 思い出すなあ、幼稚園の畑中先生。喧嘩した時どうしておれが悪いかをたっぷり20分かけて淡々と、余計に怒ってお母さん呼ばれちゃったんだよね。ごめんねお母さん。
……今になってみると、あんなの全然平気だよね。この状況と比べるとさ。でも、その時にはその時に感情とかあるし……はあ。
で、テントの中で待機をしながら、ドクトカゲが出てくるのを待つことになった。何が起こっても自己責任、攻撃されたら攻撃し返してよしっていうのが決まり。
「ギムレット」
「パスよ」
「勝負、勝負、勝負」
なのに、この3人はなんかカードゲーム始めてる。ムーラさんが持ってた『ギムレット』ってやつで、コーコーンって国で流行ってるらしい。
ギムレットっていう人が昔、そこの王様を殺そうとして(王国なんだね)、それが直前で阻止されて処刑されたのが由来なんだって。
ギムレットを誰が縛り首にするかを競うゲームで、1ゲーム1処刑。お金を1ゲームごとにかけて、勝った人がお金をもらえる。
細かいルールはあるけど、おおよそこんな感じ。
……物騒なゲームだ……いや、それをいうと今この世界とか、元の世界だって人を殺しちゃうゲームはいっぱいあるけどさ。
「ゆーさんもやりましょうよ」
「そうよ」
「あのねえ……」
ドクトカゲ退治しに来たんだよ?
「さっきもいったぞ、ドクトカゲは夜行性だ」
「そうかもしれないけど、緊張感が無さすぎるでしょ」
ただでさえリロがうれしそうなんだもの、絶対に良くないことが起こるんだから。おれやプリアは生き返れるからいい(これも変なことだけど)けど、エイメさんに、まあムーラさんだって死んじゃったらそこで終わりなんだから。
「大丈夫、大丈夫、大丈夫、こっちは4人も―」
! う、臭い……生臭い、肉、肉っぽい臭さ。わかるかな? ちょっと口呼吸にしなきゃやばいくらいの……。
「―‼」
なんだろう、ギャー、いや、キョー、とにかくカ行の叫びと一緒に、どしどしとすごい足音がした。
待つ間もなく、あの紙に書かれてた絵とそっくりな巨大ドクトカゲがこんにちはした。で、でかい……しかも実物は随分……狂暴そうじゃない?




