黒き王の憂鬱 13
それに、このテントってなんだか興奮するね。初めてなんだ、林間学校じゃ元からあった建物に泊まったし。簡単だけど寝袋もあるし、雨も大丈夫そうだし、ここで眠れば宿代を節約できるかも。
「おい、貴兄ら」
むむっ、そんなちょっとした幸せを壊しちゃいそうな第3(4)者の声、凛とした女……の子っぽいかな。
顔を出して見ると、テントの傍にその子はいた。
おれよりも少し上、つまり女の子。でも、プリアとはずいぶん違った印象を受けるね。
一言で言うと、すごいワイルド。プリアを前に人形みたいに綺麗だっていったけど、この女の子はカウボーイみたいだ。映画に出て来る、あの帽子被って砂漠の街で銃撃ってる人ね。
つばの丸い大きな帽子に、服の上に袖のない上着を着てて、下は革のズボンかな。服の名前とか全然わかんなくてごめん、カウボーイで想像するまんまの格好だよ。
痩せて見えるけど肩はがっしりしてて、太もももすごい。運動できそうなタイプ。こう、下半身がしっかりしてる。エッチな意味じゃないからね。
目が鋭くてきつい感じはするけど、怖いまではいってない。髪の毛も首にかかるかかからないかで、短めって印象。かなり日に焼けてる。身長はおれと同じくらいかな。
で、まあここまではいいんだけど……どうして鞭を持ってる? 銃でしょこの格好だと。いや、銃がある世界観かわかんないけどさ。
「あるよお」
ありがとう。それはいいけど、鞭……鞭……鞭って武器かな?
「何者? ここはドクトカゲの巣だぞ」
声は可愛い系なのがまたギャップを……いけないいけない。
「はじめまして、はじめまして、はじめまして、私はエイメ、お二人は男性がゆーさん、女性がフェノプリアさんですね。『願寄所』の紹介でソウトウドクトカゲの退治に参ったのです」
エイメさんが代弁してくれた。うん、イスト会のことも『神訪人』も隠してくれてる。おれの名前は読み方が本当は違うんだけど、もうゲームの名前って思って諦めるかな。
「『願寄所』……私もだぞ!」
ん? なんだか嫌な予感がする。
そこから始まった言い合いは、まとめてみるとこうだった。カウボーイ少女(ムーラが名前)も、『願寄所』の紹介でこの仕事にありついたみたいだ。
ところが、いざやって来てみると先におれたちが受けたあと、村じゃもう任せてあるからって相手にされず、腹が立っておれたちを探しに来た。
退治に備えて道具や食糧の準備をしたから、このままだとただ働きでもないただ備えになっちゃう。だったら別の仕事に回せばって思ったけど、どうもそういう冷静な態度が取れるようじゃない。
けっこう感情的にエイメさんとやりあってて、時々は割って入らないと危ないくらいだった。




