黒き王の憂鬱 8
翌朝、エイメさんに起されたおれたちは、お風呂に入ってから宿屋を出た。お酒を飲んだと思うんだけど、昨日の変な感じは全然なかった。やっぱりゲームの中だからかな? こういうところに気を配るよりも、もっと他に目を向けて欲しいんだけどね。
商店街を横切って、エイメさんの案内で進んで行く。やっぱりすごく広いね、食べ物だけじゃなく、服とか家具とか本とか、剣や鎧も並んでる。さすがにこれだけの人出の中を歩くのは、人生で初めてかな。
そういえば、人ばっかりでオークとかそういう人種はいないみたいだ、結構種類がいるはずなのに。
「ねえねえ」
「はい、はい、はい、ちゃんとついて来てくださいよ」
プリアは店に寄りたそうだったけど、エイメさんはそれをさせないように声をかけてた。かくいうおれも興味があったけど、やっぱり約束を守らないとまずいよね。
筋力を補ってくれるアイテム、新しい剣とか鎧とか、拠点とはいわないけどテントみたいなのもあるとありがたいな。ちらほらそういうのが見えてるから……気になる。
「ぜ~んぶスキルでできるんだけどお」
リロがこう言ってるけど真に受けちゃだめだ。親切にアドバイスをしてくれるわけないもの、きっと、きちんとしたものになるまですごく時間がかかるとかそういうのに決まってる。
足を進めるごとに、だんだんとお店が少なくなっていった。その代わりに、いかにも怪しいお店の割合は増えていった。得体のしれない何かを得体のしれない人が売って、まわりにも得体のしれない人たちがたむろってる。さすがは裏社会、こういう人たちも増えるよね。
『神訪人』だってわかるのか、視線が集中するのがわかる。人混みだと紛れてわからなかったけど、やっぱり目につくのかな。
一応、剣を見えやすいように体の前につけかえる。こっちにはプリアもチクバさんもいるんだ、おいそれとはやられないはずだよ。
エイメさんは平気で歩き続けてる、やっぱり自分の街だと違うのかな。
「つきました。ちょっと待っててください」
え? ここ? なんていうか……さびれた工場にしか見えないんだけど、ここがそのイスト会なの? エイメさんは入り口前のゴリラみたいな大男に話をつけてる。
と、ぞろぞろとチンピラっぽい人が集まってきた。チンピラっぽく見えないせいで、余計に怖い人も混じってる。ワンランク上のやくざかな?
やだなあ、まさかここでいきなり実力をみせろとか言って、戦いにならないよね? う~ん、考え過ぎるとキリがないって思ってたけど、やっぱりおれって頭良くないんだなあ。ショック。




