強欲と強欲 1
「オークにやられたのよお」
「オーク……」
おれはメニュー画面を開いて、用語集を検索する。オーク……オーク……あった。なるほど、モンスターじゃなくて人種なんだね……人種? ……確かに人種にはなるのかな。なんか変な感じだ。
えーとなになに……説明文が長いっ。こんなんじゃ読みたくなくなっちゃうよもう。かいつまむと……でかくて力が強くて、なわばりに入った奴を許さない排他的な種族。単独で生息している。
オークって大体こんな感じじゃないかな?
「でもさ、全然わかんなかったよ」
「だって不意討ちされてたもおん」
「私は気づいていたわよ」
嘘つけっ、だったらなんで避けないんだよ。見栄張ってるんだよなあ。
「そんなことってあるかなあ……ひゃいっ?」
首の後ろが冷たくなってふり返ると、そこにはリロがいた。当然すぐそばにもリロがいて……2人いる。
「あはは、友の注意力なんてこんなもんよお」
くう、でも、確かにそうかもしれない。おれってそんなちゃんとしてなかったしなあ、はあ、普通なのがちょっと嫌になるよ。
「ってことは、おれたちはオークの縄張りに入っちゃったんだね」
「それじゃ、戻ってもまたやられちゃうわよ」
あ、そうか。でも、それならレベル上げの最中に襲われなかったのは? 縄張りって言っても、あの森全部じゃないね。
「プリヤ、もうちょっとレベルをあげてみよっか」
「! そ、そうね! それが正しいわ!」
「勝てるのお?」
「いや、リロ、情報を集めるんだよ」
ただ強くなってもだめだね。情報、そう情報が大事だよ。相手を発見できたり、交渉したりとか。オークに気付かれる前に気付くくらいじゃないと。
「ふん」
リロ二人が拗ねたように見えた。
「つまんないわあ」
「すごい人たちもそうやってたあ」
「じゃあいいじゃないか」
「そういうのがつまんなくなったから、友たちみたいなフツーのを集めたんじゃなあい」
「私は優秀よ!」
「わかったからさあ……」
正解の行動を見つけたのにつまんないってなんだよ。やっぱりここはいやだ……というか、リロの思惑一つでなんでもかんでも簡単にひっくり返させられちゃうかもしれない。
なのに、こっちからはどうしようもないっていうのが嫌だな。邪神はやっぱり邪神だよ。
でも……だからっていじけてもどうしようもないよね。
「よーし、何か食べてから戻ろうか」
「麺類がいいわ」
「汁系かもお」
この二人の言う麺類とか汁系っていうのも、おれが思い浮かべるのとはきっと違ってるはずなんだよなあ。
うん、やっぱり早く脱出しないと。
屋台のカルビラーメンを詰め込んで、学校からおれたちはまた森へと戻った。