強欲と強欲 38
重い。そう、重かったんだ。
エファアイがのしかかってきて、重くて息ができなかった。おれは体全体を使ってそれを横によけようとしたけど、できなくて格闘家チクバさんに助けてもらった。
「やったッスね」
「え?」
そう言われて、やっと気づいた。お腹の当たりがあったかい、のに濡れてる。お湯みたいに……でも、お湯なんてあるわけない。
「まずったなあ……」
起き上がろうとしながら、エファアイがおれを見ながら言ってきた。お腹に、おれの剣を突き刺しながら。
「ん……ダメだな、こりゃあ」
エファアイが剣の柄を握りながら呟いた。抜こうとしても、もうダメだってわかっちゃったみたい。
「エファさん!」
「おれがくたばったらどうする? 何度も話した通りにしやがれ」
部下の一人がそう言われると、他の部下たちを集めて逃げ出した。
「それでいいんだ……」
皆がエファアイを名残惜しそうに振り返ってた。何人かは諦めきれないのか、戻ってこようとしてプリアの『黒ノ鉄巨兵』に殴り飛ばされちゃった。
敵、それも奴隷管理人とかいう悪い奴等だけど……なんだろう、この気持ちは。
「そんじゃ」
「え?」
「任務完了」
「俺は寝るぜクソッタレ」
それを合図にして、チクバさんは消失した。一瞬何が起きたのかわからなかったけど、しのびチクバさんの任務完了って言い方に思いあたるふしがあった。
……やっぱり、エファアイの部下もだけど、青服ももういなくなってる。見物人……っていうか街の人はまだいたけど、向かってくる気配がない。捕まってる人たちを助けて、追跡する余力も無くすっていう当初の目的が完了したんだ。
「おい、『神訪人』。最期だ、聞かせろ、女神はいんのか」
「い、いる」
思わずおれはそう答えちゃった。
「悪い奴か?」
「わ、悪い……すごく」
「失礼ねえ」
エファアイはにやりと笑った。
「そうか……」
「な、なんでそんなこと……」
「なあに、俺は今まで、その女神とやらに振り回されたんでな。奴隷に生まれたのからよ」
エファアイはごろりとあおむけになった。もう、姿勢をたもつのもつらいんだろうね。血が水溜まりになってる。
「だったら、俺が誰かを振り回すのも女神のせいとうそぶいてたけどよ……いいさ、本当にいたんなら、まあ納得もするぜ」
や、やめてよ……そういう、悪党にもそれなりの理由があるなんて……倒してから、聞かされる身にもなってよ。
「ほら、いけよ。もう俺は眠い。……じゃあな」
エファアイは目を閉じた。
「ゆー‼」
プリアの叫びに反応して、おれは巨兵に飛び乗った。そのまま、おれと再度解放された人を乗せて、街の外へと巨兵は走り出す。
「やったわよ! やった!」
やった。
おれはやった。
生まれて初めて、人を殺した。
ゲームの中だからなんて、全然思えない。
なのに、立ち直れないほどのショックも受けてない。
その変な感覚が……とっても気持ちわるかった。




