強欲と強欲 32
街の人たちが気づいて応戦をする前に、おれたちは完ぺきな奇襲を決めることができた。エファアイたちは出て来てないし、兵士みたいなあの男たちと同じ青い服の人もまばらだね。
勢いがけの奇襲だけど、案外タイミングが良かったかもしれない。青服の人たちはおれたちの探索にも出てるから、手薄なんだろうね。街の人も逃げるばっかりで戦おうとしない。
とはいえ、そうなったのもおれたちのせいなんだよね……。昨日の今日だから、火事は収まっても破壊やけが人が治ってるわけじゃないもの。フツーの日常を送れるようにはなってないよね……でも、それならリロが言ったような剣闘イベントも……。
「こんなときだからこそだもんねえ」
考えを読んだ……っていうかわかってるリロがささやいてきた。
「辛い時こそお祭りはするものなんだよねえ」
「そう……かな?」
「ゆーは経験ないだろうけどお、そういうこともあるのお」
「そうなのかあ……」
って納得してる場合じゃないよ。妨害がないのは良いけど、ともかく嫌な気持ちと折り合いをつけていくしかないね。
街の中を『黒ノ鉄巨兵』で爆走しながら、おれたちは剣闘場に向かっていった。
「右! 左! み……左で候!」
しのびチクバさんの指示で道はばっちりだった。眠り薬を配置してくれたおかげで助かったよ。ただ……。
「う……」
「大丈夫ッスか?」
「だらしねえなあ」
すごく揺れるから気持ち悪くなっちゃった……遠足のバスとかお父さんの車ではこんなことなかったのに……車ってすごいんだなあ、作った人を尊敬……うぷっ……。
「見えたわよ!」
プリアの叫びに頭をあげて、おれは剣闘場を見た。壊れかけのボロボロのそこに、縄でつながれた人たちがいた……目がぎょろっとした女の人も……取り戻された人だ。やっぱり、これから生贄にされちゃうところだったのかな。
そして、傷男エファアイたちもいた。おれたちを見ると、嬉しそうに笑ってた。……怖い、怖いよ。だって死んじゃったり死なせちゃったりすることを……笑ってできるんだから。
「ま、周りの人をころ……倒して! 遠慮はしなくていいけど、向かってくる人だけだよ!」
チクバさんたちが飛び散った。プリアの『黒ノ鉄巨兵』も一番近くのエファアイの部下に突っ込んで行って、おれも剣を構える。
興奮しきったリロが鳥みたいな叫び声をあげてたけど、もうおれにはそれを気にする余裕もなかった。レベル1、筋力半減のこの状況で、生き残って助けることもできるかな?




