強欲と強欲 21
プリアを無視したまま、おれはどうやって逃げるかを頑張って考えた。
というか、逃げるだけなら負けちゃっても大丈夫なんだよね。死んじゃっても、また森へ戻れるわけだし。でも、レベルをまたあげなきゃいけないのは面倒くさいな。
案外、プリアが暴れるだけで勝てるような気もするけど、今回はおれたちが結構悪いんだよね。
「剣闘の奴隷はおれの管轄でな……見過ごすわけにはいかねえんだ」
「おじさん、それっていけないことだって知らないの?」
傷男はおれの言葉を鼻で笑ってみせた。
「知ってる、楽しい仕事だ」
うわあ……まあ、そういう人だってわかれば戦うのに躊躇しなくて助かるけどさ。周りもいかにもって感じだし。
うん、こういうタイプも十分嫌な気分にさせられるけど、遠慮なく倒せるって意味ではいいじゃない。こういう敵でいいんだよ、ゲームで戦う相手はさ。
しかし、奴隷っていうのも嫌な響きだよね。なんだよ奴隷って、人はものじゃないんだよ。
つい今まで色々もやもやしてたのに、すっかりカッカしてきちゃった。いいことかな? くよくよしてるよりはいいよね。
「っと、もう一度聞いておくぜ。女神はいんのかよ?」
? 確か前もこんなこと……どうしてそんなに気になるのかな?
「信者なんじゃなあい?」
リロがのんきに答えた。あーあ、寝転んで耳をほじくりながら……見えてないからって、まったくはしたないなあ。
「女神たちはあ、あがめられてるからねえ。『女神教』の信者は人口の3割もいるんだよお」
「邪神の間違いでしょっ」
そっか、そういう宗教もあるのか。でも3割? 3割って、10人いたら3人がそうってことだよね。あんまり多くない気がするけどね。
「あ~、異端者だあ~」
「ややこしいから静かにしててよ」
その『女神教』はまあ後回しでいい、傷男……エファアイとか呼ばれてたっけ。信じてるなら絶対良い宗教じゃないよ。良い宗教がどんなのかもわからないけどさ。
「わたしはフェノプリアよ! え、エリートの自衛官なのよ! あんたたたちなんか、ちょちょいのちょいよ!」
プリアはもう完全にあがってるよね。見てよ、もうエファアイたちが放っておいても大丈夫って感じになってるじゃない。
「どうなんだよ」
「エファさん、捕まえてからにしませんか?」
部下の言葉に、それもそうかっていう風に肩をすくめてみせて、エファアイは囲みを狭くした。
「くく、来る気⁉」
人殺しはやだなあ。でも、殺されちゃうのも嫌だなあ。プリアもしたことはないみたいだし、そっちのほうがきっといいよね。
かといって、それでここをやり過ごせる方法も思いつかないんだけどね。
「おっとごめんよ、堪忍よ」
うわっ、消防士チクバさん? い、いきなり上から降ってきて、歌舞伎みたいな見栄を切った。
「消化消化で家内安全、健康優良、商売繁盛、ちりぬるを。お礼をいただき頂戴な」
どういう言葉遣いなんだろう? でも、これはチャンスだよね。




