強欲と強欲 20
それができない。殺人がどうしてもできない。わかってるよ、ゲームのキャラだってこの男も。でも……前もいったけど、現実にしか思えないからいきなり殺しちゃえってはならないでしょ。
「ぬう!」
思い切り殴りつけると、男は気絶しちゃった。これだってそんなに疲れるほど動いてないのに、喧嘩してるってのがすごく心をざわざわさせる。
殴り合いなんて全然したことなかったもん、人を殴るって、こんなに気持ち悪くなるものなんだ……。トビウサギとかを殺す時とは全然違う。
プリアは平気で殴る蹴るして蹴散らしてる、仕事がそうだったからかな、それともリロに洗脳されてるからかな。
だとしたら、どうしておれはこんななんだろう。
襲われてたお姉さんが走って逃げて行った。お礼もなにもしないで見もしない。いいんだけど……いいんだけどね。
「任務完了」
「しのびチクバさん……」
間がいいのか悪いのか、ふわりと音もなくしのびチクバさんが降りてきた。
「全眠り薬を流した由」
「……ありがとう」
彼女に当たるのは間違ってる。そうだよ、おれが頼んでやってもらったんだ。おれが考えなしだったんだ。
「報酬は確かに、それではまた」
そう、考えるな。助けるって決めたんだ。だから、集中しないとね。
「あいつでしたよエファアイさん」
「あん?」
一団がやってきた。どの人もすごく人相が悪くて武装してる男の人たちで……中に、あの傷男がいた。
「おいおい、こいつらは『神訪人』だぞ」
「本当に⁉」
「っていうか、あの黒服の女消えちまったですよ⁉」
「『神訪人』は奇妙な魔法を使うとは聞くけどな……」
傷男たちが、おれとプリアを囲んだ。まだ武器は構えてない、けど、いつでも抜けるようにしてるとわかった。
「また会ったな……」
「こん……ばんは」
気持ちよい再会じゃ絶対にないよね。
「一応聞いとくぞ、この眠り病の大元が今しがたお前さんのそばで消えた黒服の女と見てるんだが、無関係ってことはねえよな?」
「む、無関係よ! 関係ないわよ!」
ちょっと、プリアは黙っててよ。そんな動揺したら怪しいでしょ。
「先日オークが脱走しやがったんだが……そいつが今度は襲撃してきて、捕まえてた剣闘奴隷をみんな逃がしやがった。こいつもか?」
「もも、もちろん?」
頭が痛くなってきた……でも、そうか、スロポスさん捕まってた人を助けられたんだね。なら、あとはおれたちが逃げればいいだけだ。
「どうなんだ?」
「……おれたちは、火事を見て助けて来ただけだよ」
「無視するんじゃないわよ!」




