お家最高 3
構うもんか、斬りかかって来たのはそっちだしもっと……いやいや、ちょ、ちょっと待って。やりすぎじゃない? なんか変……なんで、こんなに簡単に喧嘩を始めちゃったんだろう?
ムーラさんに失礼だし、斬りかかって来たし、当たり前だけど……う~ん、良くない感じ。乱暴になっちゃってないかな?
「いいねえ、ゆー」
リロが何かした? いやいや、それじゃ面白くないはず、自分で操作しないで起こることが面白い(改めて考えても何が楽しいんだろ?)って感じだし、やっぱりおれが乱暴になってるのかな。
もっと嫌なのが、周りが全然騒いでないってこと。こういうのが日常茶飯事っぽい。
「なにが?」
ムーラさんが出て来た、流石に驚いてるけど取り乱しはしてない。
「因縁付けてきたのよ」
「……そうか」
やっぱり、ムーラさんにとってもそんな珍しいことじゃないんだね。っていうか先に言ってよ先に。
「これがフツーの治安なのお」
「改めて嫌な世界だなあ……」
戦乱の世とか戦いの世界とか結構面白そうだったけど、実際に出てみるとめっちゃ治安の悪いだけだよ。喧嘩好きな人にはいいんだろうけど。
「てめえ、このガキ……」
ムーラさんが無言で倒れてる男の足を踏んだ。痛めてるところだったのか、悲鳴をあげてる。
「次は警告せぬ」
「こ、殺す! 殺してやる!」
危ないなあ、本当にやりそう。でも先手を殺しちゃうって言うのは……ムーラさんも気にしないで行っちゃってるし……結局おれもそれにならうことにするしかなかった。
向かったのは家が並んでるところだった。あんまりしっかりした感じもないし、あちこちに子供とただぼうっとしてる人と、地べたに(!)寝てる人たちがいる。
テレビで見た、どっかの外国の貧しいとこみたい。……情報がしっかりしてなくてごめん。
ムーラさんは平気で歩いていって、なんかくれって寄ってくる子供たちを散らしてる。おれたちには寄ってこない、やっぱり『神訪人』ってわかるのかな? 楽だけどなんか寂しい気も。
「ここだ」
一軒の家の前でムーラさんは止まった。なんていうことない、他と変わんない家に見える。
「さっき『願寄所』に寄ったのは、許可を得るためだ」
「許可?」
「一応『願寄所』の預かり身分になるからな」
「元王様なのに色々あるのね」
「神輿を担いで、という者も多いからな。きっちり―」
「家の前で聞きたくないことを言ってくれますね」
ひょっこりと顔を出したのは、随分と格好いいお兄さんだった。切れ長の目にサラサラの髪、さわやかな声。背も高そうだし雰囲気が違うよね明らかに他の人と。服はボロボロだけど。
「憂さ晴らしにしろ他にやることがないんですか?」
「ツユーリ・アバウ殿ですね?」
「白々しいですね、わかってるでしょう。国を奪われた哀れで惨めな男ですよ、バカにするにしろ何かしら置いていくくらいは―」
「お家再興のお手伝いに参上しました」
アバウさんは喜ばなかった、怒らなかったし、疑いもしなかった。




