後悔日記 1
世界の全ては神が作りたもうた。
一回くらいは聞いたことある台詞だよね?
おれは賛成するよ。だって、だったらこんなにクソボケな世の中でも納得できるもん。
あ、政治が悪いとか、格差とか差別とか環境破壊とか、そういう方向じゃないんだ、おれの場合。そういうキチンとしてる理由じゃない。
おれが立っているここが、その神がゲーム をする用に作った世界だからなんだ。
もう最悪のとこ。
暦は……ちょうど14000年、100以上に分かれた国が覇権を争ってて、戦国時代真っただ中。
文明もそれくらいかな? 電気もないしネットもない。
それと、和風の世界観じゃないな、中世ヨーロッパ……おれもヨーロッパ詳しくはないけどさ、とにかくそんな感じ。剣で斬りあいして、魔法でバンバンやってる。
地球の国、全部混ぜて冷やして固めてやっぱもう一回混ぜて、しばらく置いておくとこうなる感じ……だめだ、一言じゃ言えないから少しづつ紹介するね。
ま、とにかくね。おれたちは神様がつくった……異世界にゲームを遊ぶプレイヤーとして呼ばれたの。あ、今うらやましいって思った人いたでしょ? 全然そんなことないよ。
ゲームって言うからにはクリアしないといけないんだけど、その条件は世界統一だって。
この世界の国を全部屈服させないといけない。腕づくでもよし、頭を使ってもよし、経済的に支配してもよし。まあ、とにかく統一すればいいの。国盗りゲームっていうやつかな。
国を手に入れると、そこが掲げてる国旗がプレイヤーのに代わるんだ。
そして、プレイヤーであるおれたちにはまあ、そのためのボーナスみたいな力があるわけで……かくしておれ、寧場友はそれまでの普通の中学生生活から一転して、異世界をまたにかけた国盗りゲームに挑むことになった!
「やった! かかった!」
「わたしのだあ!」
「ちょっと、おれのだよ! 罠もおれが作ったんだから!」
「よこせえ!」
「離してよお!」
で、今、罠にかかったトビウサギをおれと同じくここに呼ばれちゃった仲間の一人、フェノプリアと奪い合ってる。トビウサギは見た目は普通のウサギだけど、危険を感じると耳をヘリコプターみたいに回して空を飛んで逃げちゃうんだ。
そういう動物がいるんだから、周りの森もフツーの森じゃない。見たことない色や形や大きさの木、花、草、生き物。ツタを伸ばして来るでっかい牙の生えた口を持ってる木とか……はあ、やだなあ。
「私のだあ!」
このフェノプリアは女の子で、めちゃくちゃかわいい顔をしてる。金髪に綺麗な緑の目、よく人形みたいって言うけど、間違いなく今までみたどんな人形の顔よりもずっときれいだった。髪なんてなびくと、しゃららって音がするくらい。シャンプーもないのに。
問題はその他の部分。縦にも横にも俺の倍はあって、とげとげだらけの鎧が体を覆い隠してた。あちこちに、かたかなの『コ』? みたいな星座の模様が入ってる。
正直すごくバランスが悪くて、いくらかわいい顔でも不気味だった。マネキンの頭に、代わりにどんぐりが乗ってるみたいだ。……わかりづらいかな逆に?
とにかく、彼女は頭だけの生き物なんだ。首のあたりから草の根っこみたいに血管を生やして、木でも石でもなんでも好きな形の体にできる。
こんなにごついのは、元の世界……彼女が暮らしてた別の世界で自衛隊みたいなことやってたかららしい。
「この!」
「あだ!」
「はっはっは! 正義は勝つの!」
けど嘘っぽい、そんな立派な仕事してたなんて思えないもん。
今も殴ってきたし。これは許せないよ、大体何が正義なのさ。おれが捕まえた獲物を横取りしておいて。
そっちがその気なら、こっちもその気になってやるよ。
「『未来を握り合う手』!」
「! やる気⁉」
やる気だよ。これがゲームに参加するにあたってもらったボーナス……超能力とか、スキルとか呼ばれる力、正式には女神たちの気まぐれさ。
参加者個人専用のものと、誰でも使える……例えば力とか、料理とかそういう技術や身体能力用のものがある。
まあ、細かくはそのうちにね。ネーミングセンスも神が決めてるから、そういうものと思ってね。