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◇状況整理


 あの日からまた数日がたち、いよいよ舞踏会が目前に迫ろうとしている頃。

 数日前から、私はあの日見付けた人魚の絵の部屋を探そうと、城の中のあちこちを行ったり来たりしていた。監視の兵士は明らかに不審に思っているだろうが、やむを得ない。なにせ、私の命運がかかっているのだ。


 あのイベントについて、頭の中で反芻する。舞踏会直前にあの部屋で人魚の絵を見付けると、現時点で一番好感度の高い攻略対象が来てくれるのだ。戦争を回避してここまで来られれば、たとえルートに入っていなかったとしても、強制的に起こるイベントである。しかしながら、私は一つ肝心なところをすっかり失念していた。


「ああ……何日目だったのかしら? 夜? 夜って何時? もういいのかしら? あーもう、わかんないわ!!」


 そう、正確な時間や何やらを全くもって思い出せないでいる。以前はカイと偶然あの部屋で会ってしまったし、おまけに今は監視の兵士までいるので、手探り状態の計算外ずくめだ。


 今日も夕食を終えると、私は例のように当てもなく歩き回っていた。以前あの部屋に入った時は偶然見付けられたようなもので、以後はいくら探してもそれらしき部屋が見当たらない。前は正餐室を出た後、テラスに出る手前で見つけた覚えがあるのだが、この広い造りの城でのこと。同じような造りの廊下や部屋は数多くあり、兵士がいなければ今頃は迷子になっているところだった。私も二週間と数日ほどここに滞在しているはずなので、そろそろわかってきそうなものだが、入ろうとすると止められるような場所もたくさんあるため、だんだん見当もつかなくなってくる。


「お嬢様、そろそろご就寝のお時間ですので、お部屋にお戻りください」

「……部屋を探しているの。舞踏会の前までに、そこに行かないといけなくて……」

「本日はもう遅いですから、お休みください」

「……」


 ため息をついた。今日はどうやら、ここまでのようだ。


「どこか行きたいお部屋がありましたら、明日以降にお連れ致しますが?」


 私は迷った。あの部屋の存在は知られてもいいものなのだろうか。今のところカイは知っているようだが……。


「いいえ、なんでもないわ。ちょっと散歩がしたかっただけなの」

「さようでございますか……」


 そのまま兵士に案内されて歩いていると、あっというまに部屋に戻ってきてしまった。


「それでは、おやすみなさいませ」

「ええ、おやすみなさい」


 ドアの横に兵士が控える。これはまた警戒されてしまったかもしれない。私はそのまま部屋に入ると、勢いよくベッドの上に突っ伏した。


「もう、どうしろっていうのよ……」


 ふと、これほどこのイベントにこだわる必要はあるのだろうか、と考える。確かに、転生した割に特殊能力もなければ、ステータスの確認ができるわけでもない。頼りになるのは微かな記憶だけ。とはいえ、対人関係の基本である相手の表情、態度などから、なんとなく自分への好感度はつかめそうではないか。考えてみればごくごく当たり前のことなのだが、私は我ながら名案だと手を打つと、改めて一人ずつ整理してみた。


 カイは――まあ見ての通りで、態度がすこし和らいだとはいえ、まだまだ安心はできない。嫌いから、ちょっと嫌い、くらいにはなれただろうか。


 ラウニは――可もなく不可もなく、だ。彼の前で不審な動きはしてしまったものの、良くも悪くも進展はない。このまま目を付けられずにやり過ごしたいところである。


 セアンは――最初から優しかった。誰にでも分け隔てなく接するから、いまいち好意を持たれているのかどうかが読みづらい。ただ、予期せぬデートイベントが二回続き、筋書きと多少違うとはいえ、髪飾りをもらったのは悪くない展開だったはずだ。普通より好き、くらいだと嬉しい。それに、彼は自分を助けてくれた女性が私ではないか、と心なしか気付いているような気もするのだ。


 ユリウスは――考えるのはやめよう。こいつは、攻略対象ではないと決めたのだ。余計なことは考えたくない。


 これで私が客観的に考えられていたらいいのだが……あてが外れてしまっては困る。


 日付を数えるのを忘れていたが、もう舞踏会まであと一日だ。そろそろ目安となるイベントが起きてほしいのに……また、無駄な一日を過ごしてしまった。ひょっとすると、もうチャンスは残っていないのだろうか。いや、でも……。


 考えることに疲れたのか、いつのまにか私は眠りに落ちていた。


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