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壊し屋とメイド少年(3)

やっと書けたギリギリ第3段!なんだかグロテスクなことになってますがそれを補うようにギャグもちりばめられているので安心してください!ちなみに笑えません(笑)




 それからと言うもの、


 ルイというメイドに目をつけられちゃったカイは、変な手紙が来たり、無言電話が続いたり、メイド喫茶の無料券を送られたりと、まぁストーカーまがいのことをされて、それはそれは散々な毎日を送っていた。




「あれから、付き纏われてんなぁ。あの子に」


 久々の工事現場でのバイト。でもこの間は仕事サボっちゃったので、社長にこってり絞られました。


「……俺、鬱になりそう」


 カイはどんよりと暗雲を浮かべてため息をつく。

それはそうだ。誰よりも自由奔放で何よりも束縛を好まない黒猫が、まるでリードに繋がれた犬の気分なのだから。


「例え話まで図々しいな」「それは作者に言ってよ」


しかし、このままではカイのテンションが下がり、ストレスのあまり尿道結石が出来てしまうのも事実。(実話)

マヒルは仕事の手を一旦止めてカイに向き直った。


「カイがあんなことしたから、助けられたと思ってんだよ、あの子」

「俺、別にそんなつもりじゃなかったんだけど……」


 そう、カイはただ目の前の邪魔な蚊を掃っただけです。ホントなんです。悪気はないんです。


「でも、よかったじゃーん。いい出会いがあって、これでお前も……」


マヒルはからかうように肘でカイの肩を突いた。


「何が出会いだ……アレ男だよ」



 カイの肩を突いていた手が止まる。



「うそぉ!?」


 驚きのあまり、マヒルの口から心臓が飛び出しかける。


「だっ……だって!スカート履いてたし!」

「格好なんてどーにでもなるでしょ、俺は一発でわかったよ」


 カイははっと鼻で笑ったまぁあんなフリフリな少女マンガに出てきそうな格好をしていれば誰でも一度は女だと思うだろう。第一に、カイも四話目でヒナの服装借りてましたので。関係ないけど。


「信じられん……。それ以前に何故男がメイド喫茶に働いているのかが謎だ」

「マヒルなら偽物でも喜んで受け入れそうだよね」

「どうゆう意味かな、カイくん」



 マヒルの憎しみの篭った一言をスルーして、カイは久しぶりの労働で疲れたのか、大きく伸びをしながらツルハシを降り回して肩に掛けた。


「まあ、そういう趣味の奴だろーね」

「で、どーすんの?」

「どーするって?」


 カイが怪訝そうに振り返ると、マヒルはいつになく真剣な顔で言った。


「やっぱり付き合うのか?」

「アホ言え」


 即効ツッコミ。大体そんなんだったらジャンルが変わってしまうと言わんばかりの思いがカイの言葉に込められていた。



「でも!見ただろ!?あいつ相当のやり手だぞ!!断ったり反攻したりしたらただじゃ……」

「だからと言って、俺もこのままストーカーまがいされ続けるのは嫌だ」


 喫茶店行ってタダになるのはうれしいが。

なーんてことは口には出さずに……。

コホン。


「ま、きたらやり返すだけだ」

「……んー」


 何となく納得できないマヒル。


 それは今までだって、カイがちゃんばらで負けるようなことはなかった。現に昨日はチンピラを片手一本で吹き飛ばす位の馬鹿力も持っているし、街で恐れられている極道の頭の腹だってかっさばくほど機転も効く。(普段馬鹿だが)


 でも、今回はそれだけじゃない。それだけじゃない気がするんだ。


「マヒル」



 はっと気がつくと、カイはもう工事用のヘルメットを首に掛けて、いつものようにジャケットを腰に巻いていた。



「どうしたん?もう上がりだってさ――」

「あ……うん」


 気づいた頃には、もう空が茜色に染まっていた。

他の従業員達も作業を終えて、片付けをしたり、帰る支度をしたりと、ほとんどが仕事を終えている。

しばらくぼ〜っとしているマヒルのところへ、カイはツルハシを肩に掛けながらぶらぶらとやってきた。


「また変な妄想でもしてたのか?」

「するか!……っていうか、まるでいつもしてるみたく言うな!」


 からかうような言いように跳ね返すようなツッコミを入れるマヒル。カイはそれにそれにケタケタと笑った。

そんなカイを見て、



何となく、胸が痛んだ。



「カイ」

「ん?」



 急に改まったマヒルに、カイは少し疑問混じりの返事を返した。






「死ぬなよ」






 思い掛けない言葉に、カイは一瞬表情を無くした。

ほんの少しの弱い風が二人の間を通り抜けて、しばらく静寂が続く。が、すぐにカイはいつもの冗談混じりの笑顔に戻って言った。


「俺はそう簡単に死なないよ」



 そうして、くるりと背を向けてサイズの合わない靴をバフバフ言わせながら歩き出した。


 マヒルは少し、

自分が恥ずかしくなった。



 カイは変わらない。いつものように、今のように。それを俺は知ってるじゃないか。誰よりも、あいつのことは知ってるつもりなのに。


…そうだよな



「……まぁ、ルイの目的は他にあるだろうけどな」

「は?なんか言った?」

「いんや?それよか腹減った。なんか食いに行こうぜ」

「お前は……どこにそんな金あんだよ」

「マヒルの財布の中」

「ふざけろコノヤロウ」














 それは、昼間から漆黒の夜へと変わる時間のこと。


 そろそろ、街の隅に平行に並び立つ街灯にも明かりがつく。

昼間営業していた店が閉まると同時に、夜開く店の内装から明かりが漏れだした。

 空は薄い橙から、真上に向かうにつれて深い青紫に、地平線に向かうにつれて濃い紅色になり、見事なグラデーションを彩っていた。血の落ちたような色の太陽が、ゆっくりと地平線の彼方へ消え行く様は、


まるでこの世の終わりを告げるようにも思えた。



「……僕に何かご用?お兄さん方」




 闇に染まりかけた薄暗い角の行き止まり路地。

この時間帯に人通りはないハズのその場所には、

数えるのも呆れる程の野獣達が群がり、

その手前には、赤いスカートにフリフリのエプロンを付けた、この場に似つかわしい“少年“がモップ片手に立っていた。


「……昼間はウチの部下が世話になったっていうんでなあ、ちょっとお返ししてあげようと思ってな」



 どうやら、昼間のチンピラ共が絡んでいるグループのヤクザか何かだろう。

全員気が短そうな奴らばかりだ。

ヤクザ達はパイプや角材をそこらへんから取ると、地面に引きずりながら動き、ルイを囲んだ。


 ルイはゆっくりと辺りを見渡してから、不意に空を見上げた。


「……?」


 その行動に周りにいた男達は怪訝な表情をして顔を見合わせた。

ルイはまるでリラックスしているかのように、ゆっくりと深く深呼吸をすると、目を開いて、空のある一点を見た。


 まだ完全な夜に達していない空には、うっすらと丸い輪郭を映して細い三日月が浮かんでいる。ちぎれちぎれの雲が浮かんで、細く淡い月にかかる。

辺りは再び闇に包まれた。

 すると、ルイは急に口元に笑みを浮かべた。



「今宵は良い夜だ」

「はぁ?」



 ルイは、片手に持っていたモップの柄を宙で回してから、両手で槍を持つように構えた。

ヤクザ達を睨む瞳は血のように赤く染まっている。



「それでも、メインディッシュには程遠いかな」

「ほざけ」












日没が終わる――




 カイは、何かに気づくように頭の両端につく耳をぴくりと動かして振り返った。


しかし、続くのは闇に光輝くネオン街。

人々が行き交い、華やかな街並が続くだけ。


続くだけだった。


「くっそー……。人のおごりだからっておもくそ食いやがって……」


 横では、誰かさんのせいで残り少なくなった財布の中身を恨めしそうに見るマヒル。

――は、カイが急に立ち止まったことに気づいて、自分も怪訝そうに立ち止まった。



「どうした?」

「いや……」



 カイの目は、いつになく闇の中で黄色く光輝いている。だが、毛はまるで何かに怯えるように逆立っていた。


……嫌な感じだ。




 すると次に、

マヒルの方は、後方から何かざわめく音が聞こえて振り返った。


店の間に続く裏口の路地から、何故か担架が運ばれて来る。そしてすぐそこの道路に連結して並ぶ救急車に運ばれて行くのだ。

誰が運ばれて来るのかは、残念ながら人だかりで見えない。

だがかなり困惑した状況であるのは確かだった。



「救急隊!応援を早く!」「近づかないで下さい!」


 マヒルは人ゴミの中からある人物が出て来るのを目に止めた。そしてその人物を確信すると、人だかりへと掛けだした。

その後ろから遅れてカイもついて来る。


「モリさーん!」


 救急車の側には茶色のよれたスーツを着た髭面の中年男性が、他の警官と何やら話し合っている。マヒルとカイはその者に近づくと、その者はすぐマヒル達に気づいた。


「ん……?お前らは……」


 それは何を隠そう、白い猫編で登場した使えない公共機関。モリ刑事だ。


「余計なお世話じゃ!」

「うわぁ!……なんですか急に」

「……なんだか誰かに私の悪口を言われた気がしてな」

「あー、それ俺も分かります」



「……で、もっさん、なんかあったの?」


変なことに共感している二人を割って、カイが口を挟んでくる。

それにモリもああ、と言ってやっと本題を切り出した。


「実は、さっき路地で重傷者がいると聞いてな、駆け付けてきたんだ」

「重傷……?」


モリとマヒルが話す声を聞きながら、カイはふと横を通る救急隊に目をやった。次のケガ人が担架に乗って運ばれて、それはどんどん増え続ける。担架に運ばれて来る者達は皆、体の至るところに負傷した跡があり、酷い者はそこが無くなっていた。カイは一瞬背筋を凍らせて、食いつくように担架に運ばれてくる者達を見た。その残酷な状況に恐怖を抱いた訳ではない。

そのケガ人達には、共通してある“二つ“の疑問点があるからだ。


「何かに打たれた打撲のようだが、かなり酷い。頭が割れている奴もいる」


深刻な表情のモリの話に、マヒルも思わず息を呑んだ。


「うわ……一体誰が……」


 カイはもうモリ達の話など耳に入っていなく、ただ真っ直ぐに路地の奥を見つめていた。

深い、どこまでも深い闇が続き、まるで他の光を寄せ付けないようにそこにあった。その奥にいる者は亡者か、獣か。だがそれは確かに固唾をのんで今か今かと、カイのことを待っている。そして、自分を呼んでいる、そんな気がしたのだ。


マヒルは、カイの様子が変なことに気づいて、カイの背に声をかけた。


「カイ?」


 するとカイは、マヒルの声でスイッチが入ったかのように、路地前に並ぶ行き止まりの看板を飛び越えて、深く暗い路地の向こうへと行ってしまった。

後ろから呼び止めるマヒルやモリの声は、聞き止められることなく、やがて聞こえなくなった。








――路地裏



 月は薄い光を帯びて、暗い路地を照らしている。だが闇は続き、生きる人の気配は


ない


 血生臭い臭気が漂うそこに、恐れも無しに現れる黒い人影。ぼろい靴を地面に滑らせて片手に握るツルハシを下についた。

その者は、真っ直ぐに目の前にある光景を睨んでいる。


地面を這うように倒れている人々。

それは、はたまた頭だけの者もいれば、足がない者達まで。あまりにも残酷な光景だった。壁には殴り付けたような血の跡がちりばめられてそれが垂直に垂れている。そこはまるで血の海のようだった。


その中心には、一人だけ生きた“人“が、白いエプロンを血に染めて立ち尽くして……

いや、“待ち構えて“いた。

カイは静かに、闇に光る瞳でただ少年を睨み付けた。メイド少年は口に飛び散った返り血を舐めて、目の前にいる者を待ちわびていたかのように、うずうずしながら楽しそうに言った。


「やあ……やっと来てくれたね……僕のメインディッシュ」


最近……学校があるせいか小説が書けない……。まだまだ書きたい話がたくさんあるのに、手が進まない自分にいらいらしています。それでも、小説を書いている時間は私にとって至福の時なので、皆さんのコメントを支えにがんばっています。

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