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壊し屋と白い猫(3)

やっと登場しました!白猫さん!そして何よりも話が長い!長くするつもりなかったのに……。

「……で」


マヒルのこめかみがぴくぴくと痙攣する。


「なんで会社に連れてくんだよ!」

「なんでって……ほっとけないじゃん」



あの後、カイはガレキを処分してから、この“逃亡者“いわく白い猫を何故か会社まで運んで来た。

ついでに事情も話した。



「おい、大丈夫なのかよ?今はとりあえず空き部屋貸して貰ってこうしてるけど……その子殺し屋なんだろ?そんな簡単に連れてきて、俺らが捕まるかもしれないんだぞ」


だいたいお前は計画性と言うものがな……

――と、マヒルのお説教が続く中、カイは白猫の尾を持ち上げて言った。


「あ、この子メスだ」

「どこ見て言ってんだ―――――!」


マヒルの渾身の蹴りがカイの側頭部にヒットする。


「痛いなあ……何すんだよ」

「女の子になんてことしてんだ!おっ前……」

「何赤くなってんの俺、同じ種族だもん、そんなとこ見なくてもわかるに決まってるじゃん」



さも辺り前。

と言わんばかりの一言に、マヒルは言う術もなくその場に沈黙が走る。


「…………」

「…………」

「マヒルのエッチ!」

「そうゆうとこだけでかい声出すな!!」


マヒルはそこにあったリモコンを真っ赤になりながらカイ目掛けて投げ付ける。




「ていうか、こいつお前に似てねぇ?」


マヒルは静かに眠りについている白い猫の少女を指さしていう。


「えー?何処が?」

「雰囲気とか…顔つきとか」

「俺、そんな女顔に見える?」

「……いや、どうなんだろ」


何故かそこで悩むマヒルを見て、


「おっ……俺を襲うなよ!?」

「襲うか!」




「う……」


すると、今の大声で目が覚めてしまったのか、白い猫の少女はうなり声を上げた。


「ハッ!」


そうして、以外に目をすぐ開くと、むくりと起き上がって辺りを伺い始めた。


「お―、起きた起きた」

「…………」


どうやら、まだ寝ぼけているらしい。目がトロンとしていて余り動こうとしない。


「ちょっ……大丈夫なん?殺し屋なんだろ?」

「大丈夫、大丈夫」


カイは抜けた口調で繰り返すと、白い猫に近づこうとした。


「どうも、俺……」


――瞬間、

一発の銃声がその場を一瞬で静まらせた。

白い煙が宙に浮かんで、


目の前には、黒塗りのパースエイダーを構えて、ただ狙いを定めている少女。



「…………」



しばらく硬直していたマヒルだったが、

次にカイが大きく宙を仰いでこちらに倒れて来た時に、やっと我に還った。


「かっ……カイ――――!!!」



カイは反応せずにマヒルの膝の上で俯せになっている。


「ちょっ!カイ!?銃……えええ!?」


マヒル、混乱中。


「……そこのおじさん」


すると、白い少女は始めてこちらに口を聞いた。


「ひいいい!……って、誰がおじさんじゃーーーー!」


と、つっこむや否や、マヒルの額にはいつの間にか銃口が当てられていた。

マヒルは石のように固まって身動きが取れなくなる。


「う……」


少女の顔立ちは綺麗な中に可憐さが混じっていた。白い髪に栄える驚く程澄んだ蒼い瞳は凍るように冷徹で―――

今、目の前の殺すべき人物を見つめていた。



「ごめん…」


引き金を引く一瞬前に、少女はほんの少しだけその瞳に悲しい色を映した。




――死んで。











……少女は、自分の斜め後ろを静かに見据えた。



「ったく、痛いなあ……急に撃たなくたっていいじゃんか」



ひょうきんな声が聞こえて、とっさに目をつむっていたマヒルも顔を上げた。

そして、目の前にいる者に目を疑った。



カイは、いつの間にか少女の背後に回り、首筋にナイフを掛けていた。

額にはうっすらと何かで打った後が残っている。


「………君」

「なんで生きてんの!?」


少女の言葉を遮って、マヒルが同じみツッコミを入れる。



「なんでって……そんなの決まってんじゃん」




「俺だから」

「いや、もういいよそれ!」



カイは人通りボケをかました後、ふと少女に視線を戻した。


「……話も聞かずに銃はちょっと礼儀知らずだなぁ。え?殺し屋さんよ」カイの静かな殺気が少女を睨み付ける。しかし、微動打することなく、少女はカイを見た。


「……君……人間?」

「いや、俺は猫、黒猫のカイ」


カイがそう言うと、少女は一瞬その蒼い瞳を開いて、すぐに目を伏せた。


「……そっか」









少女はやっと落ちついて、カイ達と話すことにした。


「……油断したな、この街は治安が悪いから……少しは警察もダメかと思ったんだけど」

「いや、もっさんはホントダメだよ、人として」

「そんなあっさりと!」


そんなやり取りに、少女はほんの少し驚いて顔を上げた。


「……あなた達、警察じゃないの?」

「どこが?見える?俺はただの工事員」


開き直ったカイのセリフに便乗して、


「そっ……そう!君のこと助けたの、こいつなんだよ!」


マヒルの言葉に、少女は一瞬何を思ったのか、ためらったようだった。

そうして何か言おうと口を開く。


「いや、君のことはガレキ壊しのついでよ?」


カイの空気を読まない攻撃。


「余計なことを言うなあーーーー!」


マヒルのせっかくの気遣いが無駄になった。


「そっか……ごめん、僕てっきり……」


だが少女はあっさりと了承した。

ちなみに一人称は“僕“らしい。


「まあ、殺し屋は追われるの当たり前だけど、君もまだ若いのによく殺し屋なんかやってるね」


カイは足を延ばしてダラけた態度を取る。

そうしてからすぐに、目を鋭くした。


「……何か理由あるんだ」


少女はひたすら沈黙を守っている。

それを見てマヒルも心情を察した。


そうか……こんな女の子が殺し屋なんかやってるんだ。それはすごいエピソードがあるに違いない。



「お金が欲しくて」

「一行で終わった!」


それを聞き、カイも腕を組んで納得する。


「そうかー……それじゃあ仕方ない」

「お前も認めんな!」

「それじゃあ警察に引き渡すわけにはいかないな」


カイの言葉に、少女も安心したように安堵の息をついた。


「そうかーよかった―」

「えー!?こんな展開でいいのコレ!」


一人納得していないようだが。



「ところで、お嬢さん名前は?」

「ヒナ」


少女は簡潔に名乗る。


「ヒナか……なんかさっき見た時、すっごいケガしてたけど、どうしたの?」


ふと、マヒルはそのセリフに抗議した。


「え?見たところそんなのないけど」

「猫だからね。傷はすぐ消えるんだ」

「へー……」


そうゆうものなのか……と、了承してあまり深くつっこむのは止めた。

疲れるから。


「警察……じゃないよな、少なくとももっさんはそんなことする人じゃないし」

「…………」


そこで、カイは何かに感づく。


「違う奴か」

「え……?違う奴って?」


マヒルは訳が分からずに、カイとヒナの顔を交互に見比べた。すると、ずっと押し黙っていたヒナが、ふと呟いた。



「……赤い犬」


「赤い……」

「犬?何それ」


マヒルは疑問の表情を浮かべる。それに答えるように、カイが横から説明した。


「最近、ここらへんを縄張りにしてる組織だよ。……そんなのに目つけられたんだ」


ヒナはただ俯いて沈黙を守っている。


「…………」

「そっ……組織って……組!?」

「そんなもんかな」

「やっ……やばいだろソレ!何で!?」


そこにあるジュースを飲みながら、カイは答える。


「ヒナはよそから来たんだろ?しかも殺し屋が入って来たんだ。もちろん狙われるでしょ」


そういうもんなのか……。と、疑問混じりにまた納得した。

一応。


「じゃあ……そいつらの頭はヒナの命を狙って……」

「いや、もしかしたら、その頭ただのロリ好きなんじゃね?」

「頭被害者―!?一気にシリアス度が下がった!」


今まで結構まともに話が進んでたのに。


「……と言っても、関わってしまったのは仕方ない。なんとかしてやろうか」

「そうそう、そんな訳わからん奴らに関わっちゃろくな目に……って、えっ!?」


マヒルが気づいた3秒後。


「え」


ヒナもかなり驚いた様子で声を上げた。

目は相変わらずトロンとしているが。


「ちょっ……!カイ!本気か!?相手は極道だぞ!お前一人がかなう訳……」


マヒルの言い分を聞きながら、カイはジュース缶をそこにおいて立ち上がり、壁に掛けておいたツルハシを肩にかついだ。


「俺が……」

「え?」


そうして、背を向けたまま、マヒル達を見る。



「何のために、この仕事してると思ってる?」



その顔は不適に笑ってさえいたが、

その漆黒の瞳には何処か気負いを感じさせる鋭さがあった。


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