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壊し屋と白い猫(2)

第二話です。……まだ白い猫は出て来ない。……かな?それは見てからのお楽しみ。



「はっ……はっ……」



薄暗い路地裏、

人通りのない静けさの中に縺れた足並みで、まるで何かから逃げるように、一人の“逃亡者“は走っていた。



「オラー!どこ行った殺し屋ー!」

「俺ら警察から逃げられるとでも思ったか!?」



その少し向こうで、

荒々しい男達の怒鳴り声が響く。何かを捜すように辺りを警戒しているようだ。



「おとなしく出てくれば見逃してやってもいいぞー」「意味ねーだろ!」

「イタッ!」



中にいたヒゲ面の男は横にいた男を小突いた。


フード付きのコートを羽織った“逃亡者“は、

その声に一瞬振り返えろうとしたが、すぐに前を向いて走り続けた。

その者が走ったあとには、少しどす黒い血が点々と続いていた……。


「こんな……ところで……」


その時、

傷の痛みに気を取られていたせいか、“逃亡者“は目の前に迫っているものに気づくのが一瞬遅れた。

とっさに体を庇うように腕を出したが、その者は丸腰のまま勢いよくフェンスに衝突する。



「……っ!」


傷の痛みに眉をしかめて、その小さな体は跳ね返り、地面に倒れ込んだ。

そのあとすぐに、今の衝撃音に気づいたのか、ヒゲ面とその一味が路地に滑りこんで来た。



「見つけたぞ!白猫め!」


その場にいた男達は“逃亡者“を見つけると、一斉に銃を構えた。

逃げ場のない逃亡者はただ、男達を睨み付ける。


「くっ...」


すると、“逃亡者“は男達に命を狙われている最中にも関わらず、不意に空を仰いだ。


「おとなしく……ん?」


それは男達にもすぐに気づくことだった。

何かが上空から迫っている。そんな緊迫感に苛まれて、ヒゲ面の男も同時に空を見上げた。


それは男達の真上にあった。そして確実にこちらに迫っていた。

空を覆い隠すほどの無数のガレキ達が、何故か何もない空から降って来る。




「ギャーーーーーー!!」


言うが早いか。

といった感じだった。

男達はもはや反射的にその場から全速力で逃げて、なんとか逃れようとした。


その場に砂煙と轟音が響いて、しばらく沈黙が続いた。

すると、積み上げられたガレキのてっぺんからひょっこりと黒い耳が現れた。


「よし、終わり」

「なっ……なななななんだー!?」


カイはやっと下で腰を抜かしている男達に気づいた。


「ん?」

「って……お前!壊し屋のガキじゃねぇか!」



カイもヒゲの男に顔覚えがあるのか、目を大きくした。


「あ、警察のもっさん」

「もっさんいうな!オッサンみたいぢゃねぇか!」

「オッサンじゃん」

「だまらっしゃい!」



正確には“モリ“という刑事さんです。

詳しい説明はめんどくさいので省きます。


「ところで、何してんの。こんな所でみんなして腰ついて、お茶でもすんの」

「お前のせいじゃーー!!」


その場にいた誰もがカイに向かって総ツッコミをかます。


「ちょっとちょっと、俺は依頼でこのガレキ壊してただけだよ」


そう言って、ガレキに刺さっていたツルハシを引っこ抜く。


「少しは人の迷惑考えろアホが!」

「へーい」


全くといって謝る気0なカイはとりあえず生返事を返した。


「ハッ!そうだ!あの白猫は!?」


するとモリは急に立ち上がって、思い出したように声を上げた。そんな何気ない一言に、カイは眉をしかめる。


「白猫?」

「最近、指名手配中の殺し屋だ。この街に潜りこんだと聞いて駆け付けたんだ」

それを聞き、カイはふと目を細めた。


「へぇ……殺し屋ねぇ……なんか俺のパクリみてぇ」


「まあ、お前はべつに殺人したりしないからなあ」

「…………」


カイは、また何気なく首筋をさすった。



「っていうか、いい加減どけよ」

「へ?あー……」


物思いにふけっていたカイは、やっと我に還って今の状況に気づいた。

しかし……


「いや、このガレキ片付けるまでここは通行止め」

「なんじゃそりゃ!」

「……つーかさー」

「冗談じゃねえぞ!この先には白猫が逃げてるかもなのに!!」

「いや……だからね」

「今もまさに逃げてるっつーのに、俺らにそんな余裕は……」




「だからさ、その白猫ならたったさっきあっちの角曲がったけど」

「何ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」


モリ達はすぐ右の路地を一斉に振り返る。



「アホんだら!!つーかもっと早く言え!」


モリ達は捨てゼリフのようにそう言い放って、他の警官達を引き連れると、さっさとその場を去ってしまった。


「……ホント、人の話聞かない人だなぁー」


※あなたが言うんでありません。




カイはモリ達が去り行くのを静かに見送った後、

さて……と言って軽く伸びてから不意に後ろを降りかえ、見下ろした。




「どうしようか、この子」


そこには、フードが取れて、白い髪が露になった“逃亡者“が倒れていた。


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