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壊し屋と月うさぎ(4)

やっと終わりましたー。月うさぎ編m(-_-)m    ネタに息詰まり、気分転換をしていた一週間!結局こんな終わり方になりました!どうか怒らないで見てやって下さい!




「うざったるい回想シーンに超激怒パーンチ!」

「痛い!!」


 マヒルの頬に改心の一撃!


「いや、待て待て待て! 意味分かんねぇし! 何久々の登場一発目から俺が殴られんの!?」

「やかましい、このしょったれ! (※汚い奴め)これが怒らずにいられるか! なんで前回の話がたかが一回きりの脇役の過去話オールスターズで終わってんだよ! 俺主人公なのに話題に掠りもしねぇよ! 全部マヒルのせいだ、バーカ!」

「ちょっと待て! なんでどうでもいいこともふくめて全ての責任が俺のせい!?」

「つーか脇役って僕のことか!?」



 相変わらず暑い猛暑の中、皆様初っ端からお怒りのようです。

久しぶりのカイ登場で、カイも作者もテンパり気味なのです分かってやって下さい。


 という訳で忘れている人のために前回のあらすじ。


 突然カイのアパートに現れたのは、殺しヒナに家族を殺されたという少年リノだった!


「あらすじ短っ!」

「つまり簡単に言うとさぁ、テメェがガキの頃に見た記憶の中に白い髪した奴がいて、そいつを親を殺した奴だって自分の中で勝手に決めやがって、あげくそれをそこの白いトロ目のにゃんこにしちゃったって訳」

「うわー! 皮肉篭った罵声マシンガンだ! いくら自分の立場取られたからって説明に八つ当たりは止めなさい!」


 マヒルは相変わらず鋭いツッコミを次々と入れ続ける。そんなマヒルのツッこむ横で感心のリノはというと、たぎる怒りを堪えながら、拳を握り絞めて身震いしながら低く唸っていた。


「き……貴様……」

「ひぃ! お怒りモード!?」


 そして青筋の浮かび上がる拳を奮いたたせ、リノは勢いよくそれで空気を裂いた。


「何故わかった!?」

「アレーーーーーー!?」


 マヒルは予想外の言葉に顎をはずす並に驚いた。

いやいやいや、待ちなさい。そんな理由でいいんですかあんた!前回一話も使って説明したリノの昔話の結末がこんなことでいいのか作者!?


「つーか! たったそんな事の理由でヒナを殺そうってのかあんたは!」

「うるさい! 幼い頃に見た記憶が宛になるものか、バーカ!」

「逆ギレかよ!」


 どうでもいいが、やはり都会の暑さは人を凶暴的にするらしい。リノもさらなる怒りの様子を見せながら大量の汗を絶えず流していた。

 そうしてその怒りはすぐに形となった。リノは腰のポーチからダガー(短刀)を取り出して構える。


「それならば! この世に蔓延る殺し屋などの低俗は……いっそ全て消え去ればいい!」


 リノの構えるナイフの刃先は、目の前に立つヒナを確実に狙い定めている。

命を狙われた感心のヒナはというと、やはり澄んだ瞳でリノを見据えていた。


「そして……僕がその役目を果たすのだ! この手で!」


 瞬間、リノは前へ出た。鋭く光る赤き瞳で殺すべき者を睨み、ナイフの刃先を突き付けて突進する。

 延長線上に立つヒナは、やはり動こうともせずにただなんとも思わぬ瞳で向かって来るリノを見た。


「ヒナ!」


 マヒルは振り返り際に叫んだ。ヒナは全く逃げようとも、武器を構えて受けようともしない。ただ真っ直ぐに向かって来るリノと対持していた。

 その態度がまるでなめられているかのように思えたリノは、もう迷いなど無くダガーを持ち替えて上から振り下ろすように構えた。


「死ね!」


 銀の刃がヒナの脳天を目掛ける――





 瞬間、リノの中で何かがドクンと脈打った。まるで何かを呼び覚ますような感覚がリノを襲った。

 それは赤い殺意の満ちた瞳に広がる、青く澄んだ瞳。まるで全てを見通すかのような迷いのない目……。殺されることを諦めた、いや、これはむしろ――


「カイ!」


 刹那、ナイフを構えたまま動きを止めた体勢でいたリノは、マヒルの声で我に還った。

 そのすぐ後、体全体に衝撃が走った。

 カイの渾身の回し蹴りがリノの側頭部に入り、リノの体をフローリングにたたき付けたのだ。


「っ……!」


 誰もがその衝動に驚いている様子だったが、一番動揺しているのはヒナのようだった。目の前で起こっている惨状に目を丸めて未だ立ち尽くしている。

 何故なら、こうなるのは自分のはずだったのだから。

 リノは痛む頭を抱えながら、なんとか朦朧とする意識を振るって体を起こそうとした。

――と同時に、ヒナに向けていた怒りが目の前に立つカイへと向けられた。


「き……貴様! 何をする!」


 見上げた先に立つカイは、窓からの強い日差しを背に濃い影を写してリノを鋭く見下ろしていた。


「……くだらない」

「……何?」


 突然放たれたその一言に、リノも負けじと鋭い瞳でカイを睨み上げた。

 カイは変わらぬ冷めた口調でリノに言い放つ。


「核心もないのに他人を勝手に殺して復讐者気取りか?」


 冷たい口調とただならぬ空気が漂う中、マヒルは急に雰囲気の変わったカイに恐怖を覚えてこめかみに汗を滲ませた。


「……カイ?」


 だがカイは容赦なく続ける。


「俺には、そんなのただの偽善にしか聞こえない」


 カイの蔑むような物言いに、さすがのリノも頭に来たらしく、再度殺意を露にしてナイフを構えた。


「う……うるさい! お前なんかに何がわかる! 家族を殺され……日常を奪われた苦しみが、お前なんかに!」


 咆哮を上げながら、リノはナイフを左に構えてカイに襲いかかった。

 リノがナイフをカイに振り下ろす瞬間、カイはツルハシを構えて瞬時にリノのナイフを持つ腕を払った。その時の反動でリノはまたも後ろへ体を倒す。

 受け身を取ることも出来ずに、リノはカイにより次の瞬間、ツルハシを足にかけながら地面に押し付けられた。


「ぐっ……!」


 リノの喉の奥から、低い唸り声が漏れる。

 たたき付けられた反動で手から飛び上がったナイフは、宙を数回転してから縦にぱっくりと割れ、リノのすぐ横に落下した。


「……お前、わかってんの?」


 身動きの取れないリノは、急に声色の変わったカイに反応して顔を上げた。


 先程のヒナの瞳と比較すれば、それは明らかだろう。どこまでも冷たい瞳――。まるで刺すようなプレッシャーが、体重より遥かに重くリノの体にのしかかった。

 そしてカイは変わらぬ声で呟く。


「誰かを殺すということは、自分も死ぬ覚悟があるということだ」



 その時、

リノは悟った。


 首にかけられた重みと、ひやりとする感触に。



――僕は

死ぬ






「止めて」


 すると、

その場に静かな声と、空気が流れた。


 カイの力のこもる手に、白い手が被さる。

 振り返った黒い目に青く澄んだ瞳と、白い髪が映った。


「……もう、いいから」


 そうして、ヒナは俯いた。カイの手に触れる一回り小さな手。

この暑さの中、

酷く、震えていた。


 カイの目はいつもの緊張のない目に戻り、ふと諭すようにつぶやいた。


「……殺さないよ」


 カイの驚く程優しい言いように、ヒナは顔を上げた。

 瞬間、ずっとカイの下で抑えつけられたリノは隙をついてカイを蹴り飛ばすと、後ろへ飛んで窓際に着地した。

そして、カイのことを鋭く睨みながら威勢よく叫ぶ。


「なっ……なんのつもりだ! 助けてくれなど頼んでは……」

「いや、俺じゃなくてヒナだろ」


 カイは冷静に横にいるヒナを指さす。たしかに、カイは実質リノを殺そうとした。だが、リノはその事実を認めたくはないようだ。自分が殺そうとした奴に命を助けられるなんて……。

 リノは再度ヒナを見た。

いつにもましてトロンとした青い瞳をこちらに向けてくる。その目を見て、リノは何を思ったのか出そうとした言葉を詰まらせた。


 そしてハッと我に還ろうと首を振り、窓の縁に足をかけて勢いよく人差し指を突き付けた。


「き……今日はこのへんにしといてやる! ヒナ! ……と言ったな、僕は諦めた訳じゃないぞ! 必ずお前を殺しに来る! 覚えてろよ……!」


 リノはそう吐き捨てて窓から飛び降り去って行った。


「逃げた!」

「……結局なんだったんだあの少年は」


 窓から見下ろした蜃気楼の向こうには金髪の少年が走っていた。

いつの間にか夕方を回っていて、空は赤く染まり始めている。リノはまだ賑わう人ゴミに混じり、やがて見えなくなった。

 その姿を見送ってから、やれやれと息をついてマヒルがカイに言う。


「ところで……珍しいな。カイがあんなこと言うなんて」

「ん? ああ……」


 カイはまるで昔のことを思い出すように目を泳がせた。


「……んー、なんつーのかな、純粋にあいつのことが気にいらなかった」


 遠くを見るような目で、賑やかな街並を見下ろす。

 道路にはこの暑さの中人が賑わい、そろそろ街灯に明かりが灯り始める頃だ。


「苦しみがない奴なんか、この世にいないのにさ」

「カイ……」





 という訳で、

 なんとか落ち着いたカイ一行。相変わらず壊れた扇風機のおかげで部屋は暑いままだが、うるさい奴がやっといなくなったのでカイとヒナは思わず同時に安堵の息をついた。

――で、はたりと目が合う。


 そこでマヒルは再度確信した。

 そうだった、こいつらはまだ喧嘩続行中なのであった。


「……さっきはどうも」

「はぁ? なんのことやら」

「助けてくれたじゃん」

「助けてないよ」


 二人は目を合わせていなかったが、またもその掛け合いにカチンと来て互い顔を見合わせた。


「助けてない」

「助けた」

「助けてない!」

「助けた!」

「助けてないっつの!」

「ありがとう!」





「……は?」


 ヒナの思いも寄らない突然の発言に、カイはキョトンとした。


「……ありがとう」


 ヒナはもう一度そう言うと、普段見せたこともない笑顔で笑った。

 そこらへんのアイドルに負けず劣らずの可愛さだ。

しかし、カイが言葉を詰まらせたのはそんな理由ではない。

 何故だか急に、やり場のないもどかしさがカイを襲って来たのだ。なんだか妙に居心地が悪い中、カイはとうとうヤケになって頭をかきながらふと呟いた。


「……いいよ、別に」


 やっと、この暑苦しい夏場の衝動が一段落したらしい。カイとヒナはまるで出来立てのカップルの如く互いぎこちない態度を見せる。

 そんなほのぼのとした光景に、マヒルはやれやれと息をついた。


「あいつのこと単純にムカついただけだし」

「まだ言ってる!」


 やはりただでは終わらぬのがこの小説。カイは未だにリノに少しの間主人公の座を取られたことを悔やんでいるようだ。

――と思ったら、

カイは急に大きく伸びながら立ち上がり、ドアに向かった。


「さて、扇風機買いに行こうかヒナ」

「え」


 その思いがけない言葉に、ヒナは少し驚いた様子で目を丸めた。だがすぐにいつものようなトロンとした目に戻ると、すぐ様立ち上がってカイの後を追って部屋を出た。


 そんな二人が去った後、しばらくぽかんとしていたマヒルだったが、やっと静かな部屋に取り残されて、再度息をついた。


「やれやれ……なんだかんだ言ってあいつらもガキだなぁ」


 まるで自分が幾分か年上の気分。こうやってマヒルは調子をこく。実際カイに負けてるくせに。


「やかましい!」


 最後のツッコミはさておき、マヒルもそろそろ帰ろうとアイスを買って来た袋を手に取った。

――が、そこで変な違和感を覚えた。

 アイスは(あいつらが)食べたからあるわけがない。当たり前だ。だがおかしい。こんなに軽かったっけ?俺の――


「あ」


 そこで、一番重要なことに気づき、急いで部屋を飛び出た。そして悠々と歩くカイとヒナを見つけると、全速力で駆け出した。


「うわっ来た!」

「逃げろー」

「ごらぁ! お前ら! 財布返せーーーーーー!! 一回くらいええ話で終わろうとは思わねーのかお前らはああぁぁぁぁ!」



 夏の夕暮れ、

この二匹の猫がいる限り、マヒルのツッコミは終わることはない。



END


最近は絵も小説もスランプで、正直いろいろ凹んでます。林檎でーす。というか、正直月うさぎの話は私はあまり好きでないんですよー。だから書いてる間も先が見えずに手探り状態でした(笑)こんなので完結できるのか……。まぁ、なるようにしかならないと思うので引き続き頑張ります!最後まで見て頂けたら嬉しいです。

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