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壊し屋と清掃員(1)



「よーっす、カイいるか―?」


 さて、いつものようにぼろいアパート3階、203号室へやって来たのは毎度おなじみマヒル君です。

今日はサボりじゃありませんよ。皆さん、しっかり有休とってわざわざカイのもとまでやって来ています。え?何故カイのウチに来るかって?

ツッコミがいなくなるから。


「……なんか口裏合わせてるようだけど、俺がしゃべってる訳じゃないですよ?」


……という訳でーー!!

帰って来ましたコメディー版壊し屋!作者はずいぶんと戦闘シーンばっかでコメディーのノリを忘れかけていますがどうぞご覧下さい!


「そーゆーのは前書きにやるんだよ!わざわざ本編でやるな!」


 なんだかいつもこんなノリでツッコミ入れてる気がするマヒル君。

というか俺ってもしかしてツッコミのために生まれてきたキャラ?それってなんだか作者にいいように使われてない?


「なんかめちゃくちゃ悔しーなー!すっげー悔しーからいつもと違うノリで俺、参上☆!ノックしてもしもーーし!!」


 勢いよく扉を開けて部屋を……


「って、うぼぁぁぁぁぁーーーー!!」


 見ることは出来なかった。そこは部屋ですらなかったからだ。というか現在進行形で部屋が見えない。まさかマヒルだって、前回の18禁騒動に続き、このような状況が広がっているとは思いもしなかっただろう。


「なんじゃこの大量のゴミは!」


 そう、そこは信じられないくらいのゴミの山だった。どうやったらここまでゴミが溜まるのかを尋ねたい。なにせ、今扉を開けて中にすら入っていないマヒルの足先にまでゴミが迫っているのだから。ゴミは粗大ごみから日用品まで様々取り揃えてございます。


 いやいやいや、有り得ねぇだろこれ、どうやったら前回以来一ページでここまでゴミが溜まるんだよ。計算がまず合わないだろおい、ああ、多分俺部屋間違えたんだわ。きっと、違う人の片付けが出来ないだめだめな部屋に来ちゃったんだな、うん、そうだ、きっとそうだ。そうにちがいない。


「んあ―?何、マヒル」

「そうだって言ってくれーーーーーー!!」


 マヒルは半泣きになりながら突如ゴミの中から現れたカイに突進する。


「うぉぉぉぉ!いきなりなんデスか!?」




――で、


「どうゆうことか説明してくれるかな、カイくん」

「その前に俺が殴られる訳を知りたい」


 カイは頭にどでかいたんこぶを乗せてまだゴミの中に埋まっている。

というか、これだけのゴミがある中で足の踏み場を捜せと言う方が難しい。


「ったく、一体何なんだよこれは」


 マヒルは半ば呆れた顔で辺りを見渡して言った。


「何って……見りゃ分かんじゃん。ゴミだよ、マヒルバカ?」

「そんな猿みたいなこと聞いてんとちゃうわ!!」


 バカにバカって言われることほど屈辱なことはない……とマヒルは心の中で叫んだ。


「だから・なんで・ここに・こんなに・ゴミが・あるかって・聞いてんの!」


 マヒルはそこらへんにあった洗濯挟みでカイの額をぐりぐりと押しながら、怒りを込めてカイに言った。


「なんか国語の文法みたくなってるけど、大丈夫?」「誰のせいじゃーー!」

「まさか俺のせいとか言う訳?はー……やだやだ、大人ってすぐなんだかんだ理由つけて人のせいにするようっざー(汗)」

「ここまで来て部外者ヅラかよ!?おおお!お前ホントむかつくやつだなマジで!」


 マヒルの必死さになんだか虚しさも感じて来る。あんまり引っ張るとマヒルも読者の皆様にも悪いのでカイは本題に戻ることにした。


「べつにこれ俺が集めた訳じゃねーしー、ヒナが持ってきたんだし―」


 名古屋の高校生しゃべりでふて腐れるカイの発言に、マヒルはキョトンとした。


「は?ヒナ?」


すると


「呼んだ」

「うぉぉぉぉっとい!」


 マヒルのすぐ真横からひょっこりとヒナが頭を出してきた。ちなみに頭にはみかんの皮が乗っている。


「いいいいい……いきなり出てくんな!」

「だって……いまさらこのゴミの中普通に出てきたって……」

「出て来ていーんだよ!何を求めてんだ何を!」

「おい、このバナナまだ中身残ってるぞ!」

「聞けよ!」




――で、


「どうゆうことか説明してくれるかな、お二人さん」


 カイとヒナの二人はなんとか足場のあるところに引きずり出され、頭にダブルのたんこぶを乗っけながら正座させられた。


「だからなんで俺まで殴られなきゃなんないの」

「黙れ、連帯責任だ」


 で、どうしてカイの部屋がこのようなゴミ収集施設になっているかというと……カイは挙手して説明した。はい、カイ君。


「いやね、こないだヒナと散歩してたら、偶然ゴミ収集車が通りかかってね、んで、なんか粗大ごみが多すぎて困ってた訳よ。そしたらヒナがものの珍しげな目でゴミ収集車のおばちゃんにね、『このゴミ下さい』って……」


 刹那、マヒルの岩砕パンチがカイの右頬にクリーンヒットした。カイは宙で綺麗に右回転しながら見事再びゴミの海へダイブする。


「引き受けんなアホーーーーーー!」

「だからなんで俺を殴るの!?」

「やかましい!女の子を殴る男がどこにいる!そんなことしたら数少ない女性読者様に嫌われてしまうだろ!」

「少なくともこれを読んでいる女性読者様には、お前悪印象だと思うぞ」



※しばらくお待ち下さい



「あのな、ヒナ……。これは大人として俺からの助言だが……」


 いつになく真面目な顔で話すマヒルの後ろには、カイが血を流しながら死亡中。微かに体が痙攣しているが起き上がる気配も気力もないようだ。まさか一行でかたをつけられるとは思ってもなかっただろうが、これ以上ツッコむのも面倒なのであえて流すことにした。


「確かに、物を大事にする心は大切だ。でもな、それは本当に必要な物なのか?そうでなかったら時には切り捨てる心も大切なんだぞ」

「とか言って、いまだに彼氏持ちの女諦めてないくせに」


 いつの間にか生き返ったカイは、口から流血しながらもマヒルの後ろに立つ

――は、すぐ様またマヒルに突き飛ばされた。


「いーーーーーーーーーつの話してんだコラってかいつの間に立ち直ってゆーかまだ誰にも言ってないのになんで知ってらぁぁぁぁぁ!!」

「マヒル落ち着け、言いたいことは何となく分かったから落ち着け」


 カイは頭のたんこぶをトリプルにしながらなんとかマヒルを宥めた。


「もう……ホントいい加減にしてよぉ〜…俺泣きたい」


 マヒルはしまいにはべそをかき始める。それにカイとヒナはゴミまみれになりながら寄り添ってマヒルの肩をバシバシと叩いた。


「あーわかったわかった、掃除してやるから、泣くなってー」

「マヒルは悪くないよー」


二人の猫に慰められるマヒル。正直言ってかなり情けない光景だ。


という訳で、

今回はカイの部屋を大掃除します。


「うへー……めんど」

「面倒じゃねーよ!お前がためたんだからちゃんと片付けなさい!」


 何故かお母さん口調のマヒル。カイは渋々と返事を返して、腐海と化した部屋へ戻ってゴミをあさり出した。


「いいか?いくらこんなに物があるからって、さっきも言ったけど、きちんといるいらないを判別しなければ――」

「おいヒナ!これチョコボールの金だぞ!!やっべー超レアじゃん!」


スパーン!


「話ちゃんと聞け!この黒マリモ!」

「わざわざスリッパではたかなくても……」


 カイの頭のたんこぶがとうとう四つになる。


「あーもー!めんどくさいから役割分担するぞ!俺とカイは部屋掃除!ヒナは責任持ってこのがらくたをゴミ収集所に出して来い!」「えー」


 ヒナはあからさまに嫌そうな顔をする。

が、それに負けないくらいの迫力ある顔でマヒルは攻め寄った。


「これはゴミなの!必要ないの!わかった?」

「むー」


 ヒナはやはり納得いかないように頬っぺたをぷくりと膨らませていたが、なんとか了承した。


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