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ちぐはぐな僕らの異世界冒険譚  作者: 橙矢雛都
第1章 篠宮 那都《賢者》
4/40

4.魔力属性とチート




僕はパタンと魔導書(グリモワール)を閉じた。書かれていることはもう覚えてしまったからだ。

基本的な魔法の種類、相性、呪文など。それらを覚える()()なら僕にとって造作もないことだった。

後は自分の魔力量だとか、コントロール力の問題。こればっかりは実践してみないことには分からないし、上達も出来ないと思った。

……さて、何から試してみよう。

ていうか呪文って必要かな? 覚えてるなら言わなくても頭の中に浮かべるだけでいけないかな?

例えば、さっきやってた「球シリーズ」を頭でイメージして…



「あ、出た」



目の前にポッと水球が出た。続けて他のものも数を出していく。

おっとすごい数になってしまったな。ここらで止めておこう。

僕に消す意志がない限り、魔法は消えないみたいだ。さっきはどうやって消したっけ?

頭の中で消えろと言ったら空中を漂っていた「球シリーズ」たちは一斉に消えた。

水球を見ていてふと思った。確か氷の魔法もあったなと。



「【氷壁(アイスウォール)】」



目の前に巨大な氷の壁ができた。

呪文が若干違っていた気がしなくもないが、イメージが正確なら問題ないようだ。

その事から、呪文はあくまで補助的なものであって必ずしも必要なものじゃないのかもしれないと思った。めんどくさいのでこれからは初めて使うもの以外は無しにしよう。

そんなことより、この氷壁。大きく作りすぎたかな。

作り出す大きさとかコントロール出来るようになれば、いろいろ応用も出来そうに思えた。

考えるのは好きだ。楽しいし、それを実現させることができるのはもっと楽しい。



「…宰相様、彼、何者なんです?」

「魔力が多い方だとは思っていたんですが…」

「魔力もそうなんですが、あのめちゃくちゃ加減は… って、今度は風魔法で氷壁を砕き始めましたけど」

「水、火、雷、氷、風。あ、土を盛り上げ始めましたね」

「一体何種類扱えるんですか? 彼は……」



周りの多数の人から引かれているとは露知らず、僕は夢中になって魔法を発動し続けた。

頭の中で想像したことが目の前で実現している。それが楽しくてしょうがなかった。

ウルガー様が持ってきてくれた魔導書は2冊。まだ他にもあるのだろうか。この世界にはどんな魔法が存在しているのか。

何が出来て、何が出来ないのか。僕は考え続けた。


いつだったか、幼い頃に帆高たちとゲームをしていたとき。

難しかったり、分からないことがあったりでプレイすることを放棄したりしていたこともあった。……僕を除いて。

ひたすら、ひたすら考え続けたんだ。何故できないのか、どうすればいいのかと。

考え抜いて、実行して、ゲームクリアできたときはみんなして騒いだ。歓喜の声に満ちた空間になったのを覚えている。


例えるなら、その時と同じような感覚。

分からないことは考えればいい。出来ないことは試せばいい。

幸い試すための環境はウルガー様が用意してくれた。思いっきりやっていいと言ってくれた。



「氷ができるなら、熱湯、とか…」

「ナツ殿?」

「宙に浮くことも可能かな…? 植物を急成長、とか…」

「集中しすぎて聞こえていませんね…」



試してみたいことは、考えれば考えるほど浮かんでくる。

それがいいのか悪いのか、分からないけど次々と魔法を発動させていても疲れというものが全く感じられない。

魔導書にも書いてあった。魔法の威力と発動回数は魔力量によって大体は決まっているらしい。

ゲームでいう、MPってやつかな。数値で分かれば目安にもなるし、見られないだろうか。スタートボタンとか、Xボタンをぽちっと押すと出てくるやつ。



「【ステータスオープン】 ……なんちゃっ…て!?」

「どうしましたか?」

「い、いえ、別に…」



びっくりした… ただのノリで言ってみただけだったのに目の前に何か表示された。

ウルガー様の問いかけの様子からして、周りには()()は見えていないようだ。魔法の一種なら発動者にのみ見えるのはありがたい。大事な個人情報だからね。



――――――――――――――

篠宮 那都   Lv.1 《賢者》


種族:人間

状態:正常

HP:800/800

MP:880/1000


適性魔法属性:∞

スキル:鑑定 五感強化 魔力回復速度《特上》

    成長速度《上》 魔力操作《特上》

    翻訳  etc…

――――――――――――――



なんかいろいろとおかしいのは僕でも分かる。いろいろと、ね。

賢者って何ぞやの前に、レベル1なのにHPとMPの数値がおかしいだろうと思った。

スキルがいくつもあるのはまだ許容範囲内。でも適性魔法属性∞って何だ?

聞いて分かることなら聞くけど、本能が告げている。これは聞いても分からない。おそらく本にも載っていない。

召喚されし者特有の、とかだろうか。それだったらまぁ、納得出来なくもない。



「ナツ殿、全然疲れた様子ありませんね」

「そうですね… MP?は、どうやら数値が高いみたいで…」

「分かるのですか? も、もしや! 鑑定のスキル…!」



自分のステータスとやらは見ることは無いのだろうか。

要所要所で驚かれる。知っていることへの価値観がだいぶ違うみたいだ。迂闊な発言が出来ない。

自身のステータスを見る、という点においては特別な属性が必要ということではないから、誰でも使えるような気がした。コツさえ掴めば、だけど。

やっぱり数値で見えるというのはとてもよいことだ。どの程度の魔法でどのくらいMPが減るのかとか、もし何かしらの攻撃を受けた際にどれ程のダメージをくうのかとか。

検証をし、僕自身の能力(ちから)をきちんと理解することが目下の目標。

そしていずれ、帆高たちを探しに国外へ行けたらと思う。



「…宰相様、何やら騒がしくないですか?」

「本当ですね。あっちは……シェリラ様が管理なさっている温室ある方角ですが…」



僕はリック様が騒がしい、と言った方角を見た。

もちろん、ここからでは分かることは何もない。()()()()では。

さっき見たステータスのスキル欄にあった《五感強化》を使ってみたら何か分かるかもしれない。

使ったことがないものだから今回は1つだけ強化してみることに。複数同時に出来るかもしれないけど、初めてだからちょっと怖いというのが本音。



「(五感強化・聴覚)」



惑わされないように、目を閉じて方角を絞って騒ぎの元の音に集中した。

視覚にしなかった理由は、どう見えるのか分からなかったから。見晴らしのいい場所ならともかく。

他の4つの強化に関してはまたのちほど試すとしよう。

聞こえてきたのは、雑音が混じっているけど大きく分けて重要なのは3つ。

「シェリラ様」を心配する声。

「何か」が軋み、大きく崩れる音。

「母上」と呼ぶ声が2つあること。



「ウルガー様、あっちで何か、()()()()()が出現したようです。それが原因で《シェリラ様》が負傷したと思われます」

「シェリラ様が!?」

「巨大なモノって…まさか……!」

「あと、母上と呼ぶ声が2つあります。1つはまだ幼い感じですね」

「殿下たちもいるのですか!? すぐに動ける者は全員現場に行ってください。護衛もいるでしょうが、おそらく手が足りていない!」



ウルガー様の言葉に、リック様を含む騎士の人たちがすぐに動いた。それを確認してからウルガー様は、マーシュ様に知らせるべく早足にその場からいなくなった。

僕はとくに何も言われていないので、騎士の人たちについて行くことにした。こんな僕でも、何かやることがあるかも、という軽い気持ちだったけど。

いざとなったら邪魔にならない、遠くにいよう、そう思いながら追いかけていった。




リック・ライザル

第2騎士団の団長。26歳。

辺境伯家の次男。婚約者はいるが、諸事情で結婚はまだしていない。

礼儀正しく、尽くすとした相手にはとことん尽くす。

那都の魔法訓練の場に居合わせることが多い。その度に驚かされる。

団長というだけあって、剣の腕はかなりある。最近は那都のおかげで魔法も少し覚えた。魔力適性は火と水。


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