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ちぐはぐな僕らの異世界冒険譚  作者: 橙矢雛都
第1章 篠宮 那都《賢者》
2/40

2.召喚と目標

本日2回目の更新です。





~※~




「おお! 成功したぞ!」

「陛下に知らせろ! 救世主様の召喚に成功したと!」

「あれが救世主様… 随分と若いのだな」



光が収まったと思ったらそこは見慣れぬ場所だった。

ついでに自分の周りには見慣れぬ人々。救世主様って何のことだか。

自分の周りには…… って、そうだ。みんなは!?



「帆高! 隼斗! 瑠璃!」



僕は普段、大声を出すことなんてない。

けれど緊急時や大切な幼馴染のこととなれば話は別だ。3人の無事を確認しようとしたがそれは叶わなかった。

僕のすぐ近くにいたはずの3人がいなかった。どれだけ見渡しても見知った姿はそこにはない。

どこかに連れていかれたのか。けどそれはありえない。目の前にいる()()の言動からして僕はそう結論づけた。



「突然のお呼び立て申し訳ありません、救世主様。私はこの国で宰相をしております、ウルガー・ルーペと申します。混乱していらっしゃるかもしれませんが、貴方様をお呼びした理由とこの国の現状を説明させてください」



宰相と言ったその人は深く頭を下げた後、本当に困っているという表情で丁寧に説明してくれた。

まず、今いるここはこの世界の東側の国で「イーストペイド」。大きく分けて4つある国のうちの1つだとか。


北側の国の「ノースレイ」

西側の国の「ウエストルナ」

南側の国の「サウスルート」

この4つの国の間で大きな対立があるとかではないけども、今それぞれの国で非常に深刻な問題が起きてしまっていた。

どちらかといえば友好関係を保っている4国だったが、自国で起きた問題に対処するのに精一杯で、他の国の手助けをしている余裕はないらしい。



「我が国、イーストペイドも、救世主様を召喚という方法を使ってでも対処しなくてはならない問題が起きてしまいまして、我々だけでは解決することが出来ないのです。どうか、救世主様にお力添えをいただけないかと…」

「はぁ…… あの、1ついいですか?」

「なんでしょうか?」

「その、救世主様っていうの、止めてもらえません? 僕、一般庶民の普通の高校生ですから」

「コウコウセイというのはよく分かりませんが、これほどの魔力を持つ方が一般庶民…!? やはり、救世主様ともなれば違うのでしょうか」



止めてほしいと言ったのに聞いちゃいない。それに、魔力って…

言われてから気づいたけれど、体の奥から何かが溢れてくるのを感じ、()()がまるで血管を通っているかのように身体中を巡っているのが分かる。

今まで感じなかった感覚。ウルガー様の言うように、救世主様とやらだからなのだろうか。



「ウルガー。召喚に成功したようだな」

「陛下…! はい、こちらにおられる… えぇと…」

「……篠宮、那都です」

「ファミリーネームがあるのですね。でも、それでも一般庶民…」



どうやら、この世界では苗字があるのは貴族のみで、一般の人は苗字を持たないようだ。

なるほど、面倒にならないためにも今後は名乗らないでおこう。きっともう無駄だろうけど。

ウルガー様が陛下と呼んだその人は、思っていたよりも若い人に思えた。

髭の生えた高齢の人を勝手に想像していたのは僕だけど、目の前にいる人は20代後半~30代くらいの人だった。



「ナツ殿、私がイーストペイドの国王、マーシュ・ル・トリーディルだ。まずは緊急といえど、我が国の勝手な行為でナツ殿をこちらへお呼びしてしまったことを謝罪したい」

「過ぎてしまったことは、もう、いいです。……いくつか、質問をしても?」

「かまわない」

「まず、その問題が解決したら、帰れるんですか?」



知っておくべき事柄を、僕は全て聞くつもりでいた。

今の質問が最重要と言っていいくらいだったけど、返答次第では諦めなければいけないものもあるから。

僕のその質問に、マーシュ様は顔を強張らせた。その反応から僕はもう、答えを悟ってしまった。

帰れない。もしくはその方法がそもそもない。一方通行。

そして、僕が悟ったことをマーシュ様は悟った。だから余計なことは言ってこなかった。



「……あの、後1つ。召喚されたのは、僕だけでしょうか?」

「そうだ。1人分を通すための魔法陣だったから、そのはずだが」



それが事実なら、おかしいことが1つある。

あの時、呼び出されたのが僕だけなのなら、()()()()()()()魔法陣が現れるはず。

けれど、僕はハッキリと覚えている。あの時、僕のを含め、魔法陣は()()あったことを。

そう、それぞれの足元に、4つなのだ。もしかしたら、みんなも…



「陛下、確かウエストルナでも召喚が行われる予定ではありませんでしたか?」

「そうだったか? ならば時期も大体同じかもしれんな。ミーシュに連絡して聞いてみるか」

「ウエスト、ルナに…?」

「西側の国、ウエストルナの国王は幼馴染で、王妃は私の双子の妹なのだ」

「いつ、いつ分かりますか!?」



もしかしたら、帆高たちもこちらへ来ているかもしれない。その可能性が出てきた。

連絡してみるとマーシュ様は言ったが、向こうのように通信技術があるわけではないのでこちらから手紙を出し、返事を待つ他ないとのこと。

地図を見せてもらったけど、ウエストルナはお向かいといえど正反対に位置する国。最短ルートで行ってくれるらしいが、それでも最低1週間はかかるだろうということだった。


1週間、僕に時間が出来てしまった。

マーシュ様は王宮に部屋を用意すると言っていたし、この国を知ってもらうための指導者も付けると言っていた。

まぁ、問題解決の為に学ぶことがあるのなら、それはそれでかまわない。もしも僕と同じようにこの世界に帆高たちが来ていて、この世界が僕らのいた日本のように危険のない世界じゃないのなら。

みんなに会うためにも、学んでおいて損はないはずだ。幸い、僕は勉強するのは得意。

とりあえずの目標ができた。

みんなと再会する。それさえできれば帰れなくてもいいやと僕は思っていた。




マーシュ・ル・トリーディル

イーストペイドの国王。32歳。

妻と2人の息子がいる。側妃はいない。

17歳の時に第1子を授かる。その翌年に若くしてイーストペイドの国王に即位する。

王太子だった頃から全国民からの信頼があり、政治や人とのコミュニケーションにおいても優秀だった。

ただ、婚約者だった自分の妻には弱く頭が上がらない。それも全国民周知の事実。

融通もきく方で、那都や息子のやらかすことに大体のことは目をつむっている。心は広い。


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