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ちぐはぐな僕らの異世界冒険譚  作者: 橙矢雛都
第1章 篠宮 那都《賢者》
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1.幼馴染4人と魔法陣

プロローグのような。

おそらく更新はスローペースになります。気分転換連載なので。

主人公は決めていませんが、大体は那都視点を主軸にしていきます。



~※~



授業終了のチャイムが鳴る。

荷物をまとめ帰る者、部活に行く者、友人と談笑する者など。

様々な人がいる中で、僕らはいつものように、それが当たり前であるかのように集まった。

男女4人。小さい頃から一緒のいわゆる幼馴染。



「今日はどこ行く?」

「たこ焼き! たこ焼き食べたい!」

「それなら泉公園行こうか。あそこ今、いろんな屋台出てるしたこ焼きもあるよ」

「那都もいい?」

「…うん、僕は、どこでもいいよ」



問いかけに僕はほんの少しの間を空けて答えた。人によっては勘繰りを入れられかねない間だったけど、これが僕、篠宮那都(しのみや なつ)の通常運転。

分かっている彼らはいつも通り。僕が少し独特なことなんて今更って感じなんだろうな。


最初に何するか聞いた、しっかり者でリーダータイプの忍足帆高(おしたりほだか)

サバサバとしていて体育会系、何故か女子にモテる佐伯瑠璃(さえきるり)

女子である瑠璃より女子力がある、いわゆる乙男(オトメン)矢野隼斗(やのはやと)

趣味も性格も、僕ら4人はバラバラだった。一見気が合いそうにないのに、不思議と気が合った。嘘かと思うほどに。


そんな僕らは家が近いだけではなく、幼稚園、小学校、中学校、高校と全部一緒でクラスも同じ。ただの1度もこの4人が離れたことなんてなかった。

他に友達がいないわけじゃない。けれどこの4人でいるのが一番しっくりきているのだ。聞いたことはないけど、きっと僕以外の3人も同じように思っていると思う。

僕はいつも、みんなより1歩後ろを歩いている。この位置で、みんなの姿を見るのが好きなのだ。



「ねぇ、進路、決めた?」



移動中、瑠璃が聞いてきた。

いつもなら瑠璃がそんな風に聞いてくることはない。ただ、高校2年生という立場が、彼女にそう言わせてるのだと思った。

自分の将来、考えていなかったわけではない。でも、やりたいこともない僕は進学か就職かすらも決まっていない。

みんなは、どうするつもりなんだろう。「みんな一緒」というのは高校までだろうというのはさすがの僕も分かっているつもりである。


瑠璃の言葉にそれまでの会話がピタリと止み、僕ら4人に沈黙が流れる。

聞いた瑠璃本人も、それ以上は何も言わないってことは瑠璃も決めてないってことかな。



「僕は、一応、進学…」

「へぇ… 那都、何かやりたいことあるの?」

「……別に」

「ないんだ…」



沈黙に耐えかねて僕は思わずそう答えた。

そんな僕が少し意外だったのか、帆高が重ねて質問してきたけどそれには答えられない。だって、元々何も決まってないのだから。



「けどまぁ、那都くんは頭いいから進学だと思ってた」

「…隼斗、は?」

「僕? 僕も進学。専門学校とかいいなぁって思ってるよ。何の専門にするかはまだだけど」

「料理とかいいんじゃない? 隼斗だったらファッション関係も似合うよね」

「帆高くんは?」

「俺はまだ迷ってる。いろんな講義が受けられる大学とかいいな」



程度の差こそあれ、みんな何かしら考えていたみたいだった。自分の未来予想図を嬉々として話している。この話題をふった本人以外は、だけど。

僕はちらりと瑠璃を見た。顔を俯かせ、両手を握りしめ、プルプルと震えている。

あぁ、またかと僕は思った。瑠璃の癖が出ていたから。



「瑠璃?」

「みんなすごいなぁ。私なんか、私には、何も…」



少し自虐気味に瑠璃は笑う。自分に取り柄は何もないといつものように言う。

そんなことないのに、と僕は思った。けれど瑠璃はここ最近で自虐することが増えた。自分に自信がないようだった。



「そんなことないよ。瑠璃ちゃんはすごく優しいよ。……たまにちょっと口悪いけど」

「隼斗、一言多い」

「あと、面倒見もいい。たまに、雑になるけど…」

「那都も一言多い! それにわりといつも雑だ」

「帆高が一番、言っちゃダメなやつ」

「あんたたちねぇ……」



ここでいつもなら怒る瑠璃が、呆れながらも笑っていた。嬉しそうにもしている。

瑠璃は瑠璃なりに自分の、僕らの将来を気にしているようだった。僕も、気にしている。僕らはいつまで一緒にいられるのだろうか。

別に死に別れするわけでもないだろうに。瑠璃だけじゃない、僕も最近不安になることが多い。



「ていうか、将来のこともあるけど、それよりか旅行行きたいな」

「旅行?」

「うん。行ったことない場所に行って、見たことないもの見てみたい」



瑠璃がそう言うとみんな乗り気になった。

ここじゃないどこかへ行きたいという気持ちはみんなにもあるようだ。もちろん、僕にもある。

代わり映えのない日常から離れてみたいって、みんな思ってたりするのかな。



「ん…… 何だ…?」

「どうしたの?」

「何か、音が… 耳鳴りか?」

「音っていうか、声?」



帆高が突然止まって耳を押さえる。何か音が聞こえたようだった。

瑠璃と隼斗の2人はキョトンとしているけど、僕は何のことか分かる。だってたぶん、僕にも聞こえたから。

ただ、僕は音と言うより声が聞こえた気がした。ノイズがかった声だったから、何言ってるかは分からなかったけど。



「疲れてるんじゃないの?」

「そう、なのかなぁ」

「待って、僕にも何か聞こえた」



少しの間を空けて隼斗がそう言った。さらに少しの間を空けて瑠璃にも聞こえたみたいだった。

周りには他にも通行人はいる。けれど僕たちみたいに何かが聞こえているという素振りを見せる人はいなかった。

何か、嫌な予感がする。かといってどうしたらいいか分からないのだけど。



「ちょっ… 何これ!?」



瑠璃の悲鳴にも似た声がその場に響く。彼女のこんな怯えたような声は初めてかもしれない。

そう思ったけど、そんなこと思ってる場合じゃなかった。僕ら4人の足元が光り、浮かび上がる紋章。それが何を意味するのか分かるはずもなかった。

僕らの周りも騒然となる。驚いたことに周りの通行人の人たちにも光や紋章は見えているようだった。

けれどこの現象が起きているのは僕らだけ。



「那都!」



僕の方に手を伸ばす帆高が見えた。帆高だって、怖いと思ってるはずなのに。

光に怯え、不安そうな瑠璃。警戒心剥き出しの隼斗。僕はなるべく冷静に、何が起きているのか理解しようとした。

そして僕の方へと伸ばされた帆高の手は、僕へ届くことなく一際強い光に遮られ、僕はあまりの光の強さに目をギュッと閉じたのだ。





篠宮 那都

高校2年生。成績は常に学年トップ。

あまり目立つタイプではないが、人のことをよく見ていてたまに確信をつく発言をする。表にでない、陰のリーダータイプ。

帆高とは親同士が仲が良く、物心ついた頃からの友達。お互い一番信頼し合っている。

たまに集中しすぎると周りが見えなくなって突っ走る。

基本は優秀。でも所々で天然を発揮する。


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