異世界の味
おはよう、今日も清々しい朝だ。昨日は検証して、ものを売ってグラスの作り方教えて、家を直して結構ハードだったな・・・。それにしても孤児か・・・。もうちょい飯とか置いてきたほうがよかったかな。でも、あいつら健康そうだったし、飯もちゃんと食ってそうだったし、孤児だからって飢えてるわけじゃないんだな。
今日は身の回りのことを整えていこう、とりあえず体を拭こう。「水つめたっ」なんだよもうこんなに冷たくなってるのかよ。目は覚めたが、心臓に悪いぜ。
今日もしごと~などと歌いながら準備する。やっぱり身の回りのことが整っているのはいいことだ。ほしいものが欲しいときにある、なんと幸せなことか。
幸せに浸っていると、もうすぐ仕事だと思い出す。アイテムボックス整理しないとな。アイテムボックスは想像すると入っているものの一覧が頭の中に浮かんでくる。サンドイッチの殻とかそんな感じだ。
よしそろそろ行こう。戸締りしてっと。
「おはようございます」
「「「「おはよう」」」」
ギルド内は朝早いのにもう冒険者がいる。みんなごくろうさんだな。
俺もカウンターの中に入ってできることを手伝う。
朝早くはいつもこんな感じだな、などと思いつつ仕事をする。
朝飯食べてないな、でも最近は朝昼兼用だからまあいっか。
めんどくさがりなタクローであった。
「昨日はありがとうございました」
ギルが来ていたようだ。
「おう、どうだ使い心地は?」
「どれも最高ですよ、布団なんか、何度二度寝しそうになったことか。(笑)」
「そうかそうか、それは良かった。(笑)」
「ええ、みんなちびっこも他の二人も喜んでいました。今度お礼を言いたいから連れてきてくれって言われて、空いてる日はありますか?」
「まあ、夜はどの日も空いてるんだが、休みとなると一週間後になるな。」
「そうですか夜のほうがいいですかね?」
「そうだな、毎日空いてるしなそのほうがいいんだが、大丈夫かそっちは?」
「ええ大丈夫です一人帰りが遅いやつがいてそのほうがちょうどいいです。」
「そうか、あと聞きたかったんだが、飯に困ってたりするか?」
「いえ、今のところは困ってないですね、昨日もそれなりに稼げましたし。あといろいろ教えて貰ったので、困ることはないと思います。」
「飯に困ってるなら奢ってやろうかと思ったんだがな。」
「あはは、ありがとうございます、心配してもらって。」
どうせなら異世界の飯を食わせてやろうと思ったんだがな。まあまたの機会でいいか。
「気にすんなよ、若者は遠慮するんじゃないぞ?」
「はい、やっと自分たちで何とかなりそうになってきていたので、それでかもしれません」
「そうか、独り立ちできるようになったらそうもなるか。ただな、俺の飯は美味いぞ、今度作ってやろうか?」
「兄貴の手作り飯ですか!?それはぜひ、食べてみたいです!」
「そうかそうか、なら会いに行ったときにでも作るか。」
「はい、ありがとうございます、すんごい楽しみです!」
「我ながらハードル上げといてなんだが、あまり期待しすぎるなよ。」
「いえ、期待してます兄貴!!」
「あははは、こりゃ聞いてくれそうにないな。まあ頑張るか。」
職員の皆さんが羨ましそうにこちらを見ている。
だがそこはスルーさせてもらう。
金はなんぼでもあるわけじゃないからな、結構稼いだけど・・・。
「そういえば何か食いたいものあるか?」
「それなら、肉がいいです。」
「肉か・・・。シチューでもいいか?」
「はい、シチューか、たのしみだなっ?」
「うん、どんなシチューだろう?」
「まあ、異世界のシチューだから物珍しいかもだけど。」
「まじか!!異世界!!みんなうまいって言ってたからな、よだれが出てきたぜ」
「口調が戻ってるぞ(笑)」
「ははは、しょうがないですよこれは」
「何なら、今日にするか?」
「ええ!?いいんですか?昨日の今日ですよ?」
「いい、いい、どうせやることないしな。」
「じゃあ今日で!あいつらも喜ぶだろうな!」
どうやら今日に決まったようだ、昼休みのうちに作っておくか。
「じゃあ今のうちに作って置くから、じゃあな」
「はいお願いします!」
「「お願いします」」
そう言って帰っていく三人。
さてそしたらシチューを作りますか!
とりあえず一旦家に帰る。いえのキッチンで調理を開始する。まずはでっかい寸胴鍋買ってと、そのあとは、にんじん、じゃがいも、たまねぎ、牛肉っとあとはデミグラスソースの缶とバターを買ってOKだな、トマトを忘れてた。こんなものかな、それらを洗って刻んでいく。そしたらバターを入れて炒めていく、そして、小麦粉を入れてきつね色になるまで炒めて、デミグラスソースと赤ワインを入れて煮ていく。このままじっくり煮ていけば完成だ、火をつけたままにして、薪を少し崩して弱火にしてそのままにしておく。後は付け合わせのパンを焼いていく、こんがりするまで焼いて出来上がりだ。
ジュースも買っておく、これで準備万端だな。
よし仕事に戻るか。
仕事に戻ると、結構な数の依頼達成者が並んでいた。
午前中に依頼を終わらせてしまおうという人が多いようだ。
仕事に集中していると、人が流れるように動いていく。
俺も結構慣れてきたのではないだろうか。
「おう、ちゃんとやってるか?」
「はい、休みありがとうございます。」
「いいって、気にするな。休みは大事だからな。」
「はい、良い休みになりました。」
「ほう、なにかいいことでもあったか?」
「お金稼げました。あと子供たちと仲良くなりました。」
「それはいいな、金があれば何でもできるからな。子供って言ったらそこら辺の子供か?」
「いえ、冒険者をしている子です。」
「ああ、ギル達か。あいつらも頑張っているようだしな。」
「ええ、なかなか見どころがある子たちのようですね。」
「そうか、何かしらそう言う所があれば将来役立つから、それは結構なことだ。」
ギルマスが話しかけてきたので、ギル達の話になった。魔法の話はあまりしないほうが良さそうなのでやめておく。
「今日も、飯をもって会いに行ってくる予定なんです。」
「なんだ、飯でもたかられたのか?」
「いえ、俺が御馳走するっていったんですよ。」
「そうなのか、気に入ったのか?」
「ええ、まあ、孤児なのに頑張ってるなと思いまして。」
「ああ、まあそうだな、あいつらなりに頑張ってるのは俺も知ってるぞ。」
「そうでしょう。なので、俺からも何かできたらなと思ったんです。」
「そういう事か。まあ面倒見てやってくれ。」
「はいできる範囲で、ですけど。」
「それで、十分さ。あいつらはまだ子供だからな。」
「やっぱりそうなんですよね?こちらの子はもう働くのが普通の年なのかと思いました。」
「14歳が成人だからな。まだだよあいつらも。」
「14かそれでも、俺のいた国よりは早いですね。」
「そうか、まあそれぞれの国の事情があるからな。」
「そうですね、そういうのも関係してますよね。」
「ああ、もっと早い国もあるからな。そこは10歳からだったかな、確か。」
「何とも言えないですね。」
「ただ、孤児にとっては早いほうが稼ぎ始めるのに都合がいいかもな。」
「それもそうですね、何事もわからないか・・・。」
ちょっと話がそれてしまったようだ。
だがもういい感じの時間帯だ。
「そろそろ、上がってもいいですか?」
「いいわよ、あの子たちのことよろしくね」
「はい、ありがとうございます。行ってきますね。」
「行ってらっしゃい。」
そう言ってギルドを出る。そのまま自宅に帰り、シチューをアイテムボックスにしまい、スラム街に出かける。足取りは軽い、会いに行くのが楽しみだ、どんな子たちだろうか。
ずんずん進んでいく、すると新しくなった一軒家が見えてきた。外見は前とさほども変わらないが。明かりがついている。ろうそくを買う余裕はあるようだ。
コンコン
「俺だ、タクローだ。飯もってきたぞ。」
「はーい。」
ガチャ
「兄貴どうぞ中へ」
「お邪魔します。」
「「「「「こんばんは」」」」」
「こんばんは、俺はタクロー、よろしくな。」
「よろしくお願いします。お兄さんと呼ばせてもらってもいいですか?」
「いいぞ、別に」
「ありがとうございます。」
女の子が答える。この前言っていた働いている子か。
「よろしくお願いします、俺も兄貴って呼ばせてもらっていいですか?」
「ああ、まあいいぞ、」
「ありがとうございます。兄貴」
「「「兄貴、兄貴!」」」
「ちびっ子たちは元気だな(笑)」
「ちびっ子たちはいつもこんな感じです。」
「さて、今日は晩飯を作ってきたからさっそく食べようぜ。」
「「「やったー!!ごはん!」」」
そう言ってキッチンに鍋を出す。
「皿はあるか?」
「ありますこれでいいですか?」
「おお、上等上等、」
人数分の皿に盛っていく。テーブルがなかったので、大きめのテーブルを買う。そして椅子も人数分買う。コップを人数分取り出し、ブドウジュースを注いでいく。まだあったかいので皿からは湯気が出ている。真ん中に焼き立てのパンを置いて全部そろったな。
「よし、こんなもんかな。」
「テーブルとイスまで用意してもらってありがとうございます。」
「まあ、これらはやるから、大事に使ってくれよ?」
「ありがとうございます兄貴!!一生ついていきます!!」
「「「「「「「ありがとうございます」」」」」」」
「きにすんな、きにすんな。さ食おうぜ。」
「はい、」
「いただきます」
「なんですそれは?」
「俺の国ではみんな言ってた言葉だよ、作った人、食べ物に感謝して”いただきます”っていうんだ。」
「へえ、じゃあ俺も、いただきます。」
「「「「「「「いただきます」」」」」」」
「うめぇーーーー!!」
「ほんとだ!!おいしい!」
「「「おいしい!!」」」
「肉が柔らかくて、野菜も、味が染みてておいしいです。」
「結構うまくできたな(笑)」
「こんなうまい物初めて食べましたよ!!」
「俺もこんなに美味い物は生まれて初めて食べた」
サージとダルも美味かったようで何よりだ。
「たっぷり作ったからお代わりもあるぞ、あとパンも食べてみてくれ。」
「すげえ、パンもカリカリのふわふわで美味い!!」
「ほんとだ!おいしい」
「この飲み物もおいしいよ!!」
「甘くて、おいしい!」
「喜んでもらえて何よりだ。」
各々順番にお代わりしているようだ。
食後、皆落ち着いたようだ。ブドウジュースを飲んでくつろいでいるようだ。
そしたら、女の子が話しかけてきた。
「今日は何から何までありがとうございました。新しくテーブルや椅子コップまでいただいてしまって、本当にありがとうございます。」
「気にすんな、みんな頑張っているようだから俺からのプレゼントだよ。」
そういうと、涙を浮かべながらありがとうございます。と口々に言っている。
「まあ、俺からはできることがあまりないと思うから、ものを上げようと思ってな。喜んでくれたなら何よりだよ。」
「本当に本当にありがとうございます。」
女の子、サーシャが涙ながらに言う。
俯いてしまったので頭をなでて置く。
「辛かっただろ、今は泣いてもいいんだぞ。」
そうするともっと激しく泣いてしまった。どれほどの苦労をしてきたのだろうか。俺には計り知れない物を抱えているように見えた。
他の子たちも涙ぐんでいるように見える、一人一人抱きしめて、頭をなでてやる。
やっと落ち着いてきたようだ。
「よし、景気づけに何か食べるか!」
「もうお腹いっぱいですよ?」
「甘いデザートなら食べれるだろ?」
「?なにかわからないですけど、少しなら入ります。」
「ちびっこたちも食べるか?」
「「「うん」」」
貿易貿易っと♪、貿易で、デカい箱のアイスを買う。それをスプーンですくって切子のグラスに盛り付けてやる。
「よし、できたぞ、溶けないうちに食べちゃおう。」
「はい、いただきます」
「「「「「「「いただきます」」」」」」」
みんな口に一口分運ぶ。
「冷たーい!おいしー!」
みんな夢中のようだ、濃厚でいい甘さだ、すべてを溶かしてくれるようなそんな甘さだ。
今日はいい一日になったな、明日もいい一日になるといいな。
「兄貴泊って行きませんか?」
「「「泊ってく?」」」
ちびっ子たちが期待のまなざしで見てくる。
「ああ、じゃあ泊らせてもらうかな。」
「やったー」
「やっほー!」
みんな嬉しそうだ。
「よし、水浴びでもするか!」
「みずあそび!!」
「水であそぶー!」
という事で庭に来ている、そこで小さな小屋を建てる、そして風呂を作り排水溝も作る、栓をしてお湯を魔法でためる。それはあっという間の出来事だ。
「すごーい、何でもできるね!」
「まあな、さあ入ろう」
という事でちびっ子たちとお風呂に入った、タオルを出してやり体を拭いてやる、されるがままだ。それに何が楽しいのか笑っている。
「サーシャ、次入っていいぞ。」
声をかける、さっき覚えたばかりの名をよんで。
「はーい」
「お湯にゆっくりつかるんだぞ。」
「はい、わかりました。」
サーシャがさみしいといったので、ちびっこたちを寝かせて小屋の外に立っている。
「お兄さんいますか?」
「いるいる、大丈夫だから。」
「のぞかないでくださいよ?」
「(笑)わかったわかった、大丈夫大丈夫。」
サーシャとたわいもない話をしながら時間を過ごす。
石鹸も出したのでそれで頭を洗っているようだ。
「ちゃんと洗うんだぞーー」
「わかってますって、もおーー」
「ならいいんだ」
ゆったりとした時間が流れる。
「これいい匂いですね?」
「ああ石鹸か?まあ気に入ってくれたなら何よりだ。」
「女の子はみんな欲しがりますよ、これ」
「そうか、そのうち売ってみるか。」
「ぜひ、私に売らせてください。いっぱい売って見せますから!!」
「そうか、商売はあまり得意じゃないから任せようかな」
「まかせてください!」
なんか元気になったようで何よりだ。
それからしばらくして、サーシャが上がってきた。4人に声をかけよう。
「上がったぞ、4人とも入っていいぞ」
すぐに服を脱ぎ始める4人、よほど入りたかったようだ。まあ子供なら4人余裕で入れる大きさにしたので大丈夫だろう。
キャッキャと騒ぐ声が聞こえる、楽しんでいるようだ。使い方もおしえたので大丈夫だろう。
ちびっこ達はサーシャと同じ部屋で寝ているようだ。サーシャも眠そうだ。
「そろそろ寝たほうがいいぞ。」
「はい、わかりました、、おやすみなさい。」
「おやすみ」
おぼつかない足取りで寝室に向かうサーシャ。それを後ろから見守っていた。
その後4人も風呂から上がり、蒸気を漂わせたままやってきた。仕方ないので、風を送ってやる。
「あーきもちいー」
「あーー」
「そろそろ寝ようか。」
「はーい」
「寝る。」
ダルも寝る気のようだ。
「おやすみー」
「おやすみなさい兄貴」
「「「おやすみなさい」」」
4人とも寝るようだ。
俺もリビングに布団を敷く、ろうそくの火を消して寝る。
おやすみ