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入寮しました

『唯一の無詠唱演者』大魔法士サーディク・ダークサイトの二つ名である。


  突然ザーランド王国に現れるや否や、隣国アッカー帝国との大戦時に活躍。

  幾つもの敵陣を殲滅したと言われている。

  味方の兵士ですら、白金髪に紫の目の男の戦う姿に恐怖したという話もあったが、本人を知る者が遺した書物には[天才だが抜けたところもあり、憎めない人物だった]と記述がある。

 

  何人もの才能溢れた魔法士が弟子入りしたが、無詠唱魔法を会得することが出来なかった。

  その弟子曰く、サーディクの教え方と言えば


「ウーンと考えたら手からバーンて出せばいいんだよ。え?杖?いらないでしょ。たまにビヨーンて出す時もあるし、バーンには拘らなくていいよ」


  である。

  天才であったが、教え方がマズかった。

  その為弟子入りした魔法士は誰一人無詠唱魔法を会得するどころか、極度の方向音痴のサーディクの世話に手を焼かされた。

  いつの間にか居なくなる為、毎回捜索に時間に費やされ、何故そこに居るのか分からないという場所にまで探しに行った魔法士も居た。


「部屋出て真っ直ぐ向かってたんだけど、途中でトイレに行きたくなってさ。トイレ見つけて済ませて出てきた所に可愛い妖精が居てね。追い掛けたら此処に来てた~」


  王都の王室魔法士宿舎の応接室での打ち合わせがあった時に、3km離れた公園で見つかった時の理由である。


  戦後処理も済み平和が訪れた後、サーディクは「田舎に行きたいから」との理由で旅に出ようとしたところ、当時の国王から辺境である土地と爵位を無理矢理押し付けられた。

  他国へ流出させない為だ。他国へ行かれるより田舎でも国内に居さえすれば有事の際に呼び戻すことが出来ると考えたのだろう。


  それから150年の年月が経ったが平和な月日が流れるにつれ、魔法関係者以外からサーディク・ダークサイトの名前が出ることは無くなった。


  それが今回のダークサイト家令嬢の無詠唱魔法である。

 

  本来魔法学校では試験時の成績優秀者はクラスのレベルが平均的になるように振り分けられる。

  優秀な家庭教師の元で勉強する貴族とは違い、大凡の平民の子供は魔法の使い方が拙い。

  なので試験時では飛び抜けて才能のある平民以外、成績優秀者は殆どが貴族である。

  しかし1年目でちゃんと基礎を習えば、平民の子でも才能を発揮することがある為、本格的なレベルによるクラス分けは二学年目にして行われる。


  レティシア・ダークサイトの試験結果で、今回上位成績者で特別クラスを作ることにしたのは、無詠唱魔法を今度こそ他の魔法士にも会得させる為であった。

  上位成績者に限定したのは、まだ基礎が出来てない子供と一緒にすると、レティシアの魔力を見て自分との差に勉強を諦める学生が出て来るのを懸念した為だ。


  そうして合格発表が行われ、上位5名が特別クラスのSクラス、以下AクラスからDクラスまでのクラス分けも発表された。



 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 

  合格してたーーー!

  良かった、これでお母様に怒られずに済むわ。

 

  私はアイラちゃんと一緒に合格発表を見に来ていた。

  前世での感覚的に当日に発表されるのにはビックリしたけど、まさかその日にクラス分けがあるとは思ってなかった。

 

  てっきり鉄板で水晶玉みたいなのに手を翳して魔力量測ってからのクラス分けって想像してたんだもの。

 

  それにしてもこのクラス分け、Sって………

  サドのSじゃないよね?

  しかも5人クラスって……

 

  他のクラスを見てみると大体30人前後なのに。

 

  それにしても矢鱈と視線を感じる。

  やっぱりアイラちゃんみたいに超絶美少女と一緒に居ると目立ってしまうのかな?

  私も見蕩れてしまったしね!気持ちは分かるよ、周りのヤロー共。


  「レティちゃんと同じクラスでとても嬉しいですわ」

「私だって嬉しいよ!あ、アイラちゃんは寮なの?」

「いえ、私は王都に家がありますので通いになります」

「そっかー残念!」


  そう話してると後ろから声が掛かる。


「アイラお嬢様、合格おめでとうございます。お迎えに上がりました」


  うわぁ、ナイスミドル!40代かな?

  洗練された渋い叔父様執事も大好物だ。

  ずっと見ていたいものの1つでもある。


「レティちゃん、この人はうちの執事のセバスと申しますの。わたくしが生まれる前から家に使えてくれてて。セバス、こちらはレティシア・ダークサイト様です。お友達になりましたの」

「初めまして。レティシア・ダークサイトと申します」

「これはこれは、わたくしセバスと申します。デティール公爵家にお仕えさせて頂いております」


  まぁ、一応ご令嬢なんだけど、ただの貧乏男爵家なのでナイスミドルに恭しくお辞儀をされるとむず痒い。


  ん?え?

  公爵家!?


「アイラちゃん、公爵家だったの??あ、公爵家であらせられるのですか!?いやあそばせられる?」


  敬語は苦手だ。


「もう!先程の口調に戻して下さいませ!」

「わたくしからもお願い致します。お嬢様はそれはもうお友達が出来るかどうか不安で睡眠不足にまでなられる始末……」

「セ、セバスったら!」

「アイラちゃんがそう言うなら……」


  私は口調を元に戻し、暫く話した後アイラちゃん達と別れた。

  それから少ししてサリーが迎えに来たので宿に戻り、帰りの道すがら結果を報告するととても喜んでくれた。

 

  明日の準備をする。

  早速明日から寮生活になるので、その準備だ。


「お嬢様、明日から寮生活で、私はお嬢様を寮に送った後はお屋敷に戻りますが………寮を脱走したりしないで下さいね」


  脱走って、サリーは私のことを何だと思っているのか。


 その後は

「魔法も良いですが、マナーやダンスの練習も忘れてはいけませんよ?」

「お友達を木登りに誘ったりしてはいけません」

「お菓子等を食べ過ぎないように」


  それはもう、寝る前までお小言は続いた。


  それでも次の日寮に送って貰った時に、サリーの目が赤くなっていたことに気付き、心配してくれてるんだなぁと、心臓がキュウとなった。


「おやすみの時は帰るからね」

「はい……お嬢様、頑張って下さい」

「サリーさん、大丈夫だって。お嬢なら男が襲ってきても ちぎっては投げちぎっては投げ――グッ」


  パックさんの向こう脛に蹴りが入る。

  この2人、仲良いなぁ……リア充め……


  2人と別れると寮に向かう。

  寮は学園の敷地内にあり、男子寮と女子寮に分かれている。入り込まないように性別で分けた結界が施されているらしい。

 

  管理室で部屋を確認しドアを開ける。

  学校内での貴族と平民の差別を無くす為に、部屋は均一化されており、思ったよりシンプルな内装になっていた。

  家具は机、クローゼット、テーブルと二人掛けのソファー、ベッドと言ったところか。

  あとシャワー室とトイレが付いている。

  トイレやシャワー室が共同でないのは、貴族によっては同性同士でも肌を見せないといった風習がある為で、個室にあることにより、だれでも自分で掃除することを経験させる為でもあるそうだ。


  まぁ、私の場合、家でもサリー達と一緒にやってたから得意だけど。

  お母様も掃除は躾の一環として止めさせることは無かったな。

 

  私は空間魔法で造ったアイテムボックスから服や生活必需品を出し、それぞれクローゼットや洗面台に片付ける。

 

「少し散歩してみようかな」


  私は寮を出て、学校方向に向かった。


 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



  寮の周りでは続々と寮に入る新入生が入って来、上級生の寮生がそれを手伝ったり、状況を見てたりしている。


「あ、あれ、噂の美少女じゃん?」

「ほんとだ……ヤバいな、すげぇ可愛い」

「儚げだなぁ……… 見ろよあの細い手足、サラサラの白金の髪……」

「貴族だってことは分かるが、どこのお嬢様なんだろうな?」

「もう御婚約はされているのだろうか?」

「病弱だって噂もあるぞ」

「「「「「「ああ、お守りしたいっ」」」」」」


  等、銀髪の美少女をコソコソと見ながら男子寮生や新入生が話していていた。


  実技試験の時に5人ずつだったので、まだレティシアの魔法については噂が広まっていなかった。


  その中でギリギリとハンカチーフを噛み悔しがる影が一つ。


「何よ……何で私がSクラスじゃないの?あの女の魔法は見たけど、私だって勉強すればあの位出来るわ」

 

寮から校舎までは歩いて15分程の距離設定です。

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