罪人
閻魔の許にやってきた罪人を前に、閻魔は開いた閻魔帳から目線を移動させる事なく、事務的な口調で語りかけた。
「生前、お前は仕事熱心で周囲からの信頼もあり、真面目な性格であった。しかし、その反面、お前が行った残虐な行いは目に余るものがある」
罪人は下をうつむき、ただ黙って閻魔の言葉を聞いている。閻魔は構わず続けた。
「よって、釜茹で千年の刑に処す。最後に何か言いたい事はあるか?」
閻魔の問いかけに、罪人は今にも消え入りそうな声で、「…いえ」と答えると、何処からともなく現れた屈強な鬼に両脇を抱えられた。
罪人の去り際、閻魔は罪人の背中に向かい、「…すまない」と、それまでとは違う、何か感情のこもった言葉を投げ掛けた。
元釜茹での刑の担当である罪人の青鬼は、力なく首を左右に振ると、見慣れた釜茹での刑場へと連れて行かれた。