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来年の今日、またこの場所で。  作者: 若隼 士紀
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第5章 4

4.


 皇太子殿下は立ち上がって、皆を見まわして言う。

 「今日まで皆、大儀であった。

 ここまで詳細に亘っての報告が聞けるとは思わなかった。

 私としては、早葵は本当に異世界からたまたま迷い込んだ者のように思えるが…」

 

 「凛樹の報告を待とう。

 今のままでも問題はないだろうが、一点の曇りも払拭してからリョウの花嫁として迎えてやりたい。

 そうだろう?リョウ?

 私の乳兄弟の配偶者であるならば、私の妹であるのだから」


 遼はぐっと俯き、身体から力を抜いた。

 全身で止めていたヨウゼイ氏は、ほっと息をついて座りこむ。

 

 「あ、それなんだけど」とサショウさんが口を開いた。

 「昨日?あれ?一昨日か?リョウから急に俺とシイネに連絡が入って。

 早葵さんを元の世界に帰したいと。な、シイネ」


 ヨウゼイ氏は座ったまま頷いた。

 「ああ。いったい何を言い出したんだと思った。

 帝国の科学研究所で早葵さんが帰れる方法を探してくれと言うんだ。

 来た方法も判らないというか、やっとその検証に入ったばかりなのに、帰る方法なんて判るわけないだろうと言ったんだが…」


 「今すぐに帰せとは言ってない。

 ただ、この世界の人間じゃないんだから、方法があるなら帰すのが筋だと思っている」

 と遼は俯いたまま呻くように言った。


 「…何か理由があるようだな。

 今日はもう私に時間がないから、また話そう」

と皇太子殿下は腕に着けた装置を操作した。

 その間にいた全員が立ち上がり、深く頭を下げた。 


 スクリーンが上がり奥のドアが音もなく開いて、皇太子殿下は大股に歩いていき、ドアの向こう側にいた臣下の人に何事か話しかけながら去っていった。


 ドアが閉まると、皆一斉にはーっと弛緩して椅子や床に座り込んだ。

 「つっかれた~…」とサショウさんが呟く。


 「皆、今日はご苦労だったな。

 凛樹の話は意外だったが、まあ、とりあえず無事に終わったってことで」

 とヨウゼイ氏が言った。


 ドクターはきまり悪そうに遼とあたしを見た。

 「リョウ、ごめんな。ああいう言い方だと、早葵ちゃんが敵の仲間かと思っちゃうよな。俺は純粋に、研究対象としての興味を…」

 「判ったよ、学者莫迦」遼はため息をついて言う。


 「絶対に早葵の疑惑を晴らせよ。

 但し、あまり早葵に負担かけないように」

 「OKOK。約束する」とドクターはホールドアップの仕草で言った。

 それから二人で拳を突き合わせて笑った。

 …良かった。


 「一つ訊いておきたい。

 元の世界に帰りたいというのは、早葵さんの意思なのか?」

とヨウゼイ氏があたしの方を見て訊いた。

 

 あたしは、驚いて首を横に振った。

 「まだ自分に何が起こったかもよく解っていないし…帰りたいと思う気持ちがあるのは否定できないけど…具体的にどうとかは」

 

 「うーん。ま、そうだよな。

 俺たちリョウの悪友陣も、早葵さんは若いのに本当によく頑張ってるって言ってるんだよ。

 リョウと婚約する度胸とか」と言い、皆が笑った。

 ゲンダイさんも思わずといった感じで笑顔になっていた。


 「ユウリとも話したんだが、帝国科学研究所にリュウガがいるだろう。

 あいつを引き込んで、早葵さんが帰れる方法を探そう。

 帰る方法が確立できたら、早葵さんに帰るか帰らないかを選んでもらえばいい」


 「リュウガか…」と遼が呟く。

 「判った。俺から話しておく。まあ、瞬の名前だせば大丈夫だろ」

  

 「またお前は。早葵さんのことになると本当に見境ないな」と呆れたように言って

 「さあ、今日はこれでお開きにしよう。皆、仕事に戻ってくれ。

 次に皆が顔を合わせるのは即位式かな?」と立ち上がった。


 「あの…今日はありがとうございました」とあたしは言った。

 「驚くことがたくさんあって、うまく言えないんですが…

 あたしを精神病者扱いしないで、ちゃんと信じてくれて証拠を集めてくれて…」

 涙声になってしまった。


 「俺たちはリョウの友達だから。恐れ多くも皇太子殿下の学友でもある。

 リョウが好きになった人なら、俺たちにとっても大事な友達だよ」

 とサショウさんが優しく言い、顔を上げると皆が頷いていた。

 遼は下を向いて、照れくさそうに頭をかいている。


 「ぜひ、遊びに来てください。

 お料理とかうまくないんですけど、遼も喜ぶと思うので…」

 ショウさんが来てくれたとき。遼はすごく嬉しそうだった。


 「早葵に惚れるなよっ!」と遼があたしを右側から抱きしめるようにして言う。

 「イヤ悪いけどそれはないな。っていうか、俺たちだと犯罪になっちまう」とドクターが笑った。

 未成年者保護法ね。確かに。


 「ありがとう、ぜひ遊びに行かせてもらうね。

 早葵さんもあまり思いつめないで。リョウに変なワガママ言われて困ったら相談してね」

とサショウさんが言って、遼が「俺かよ?!」と突っ込み、皆で笑って解散した。

 

 外に出て、執事さんが回してくれた赤い車に乗り込むと、遼がエアコンを操作しながら「腹減ったなあ」と言った。

 時間を見ると1時半。ここに来て3時間くらい経ったんだ。


 「ディナーは予約したんだけど、昼はどうなるか判らなかったからなぁ。

 軽くどっかで食べて、ドライブするか。

 早葵に見せたいものがあるんだ」


 タキシードにドレス姿で、どこに行くんだ?

 あたしの胸に一抹の不安がよぎった。



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