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Pray in Darkness  作者: RIA
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左手の十字架19

そこには夕焼けと湖の地平線が広がっていた。


周りには何も無い。


ただ水面が広がるだけだ。


そこには私と鏡に映したかのような『私』が裸立っている。


顔といい、身体のラインといい、そして左手の銀の手といい、本当に私と瓜二つだ。


水面をまるで滑るように私は彼女に近づいた。


「あなたはだれ?」


私の質問に彼女は左手を差し出した。


「初めまして、私は銀の手よ。」


言葉が出なかった。


銀の手はただの義手ではない事は分かっていたけれど、まさか意識があるの?


なにも言えない私に彼女が続ける。


「あなたは神に選ばれたのよ。


正しくは銀の手に。


つまり私たちは選ばれたの。」


「私たち?」


繰り返すように質問した私に彼女はうなづいた。


「そうよ。私とあなたは一心同体なのよ。私はあなたであって銀の手でもあるの。」


彼女はわたしの手を握る。


「つまりあなたも私であり、銀の手でもあるって事。」


私は突然怖くなり、その手をほどいた。


「私はわたしよ!あなたなんかじゃないし、銀の手でもないわ!」


彼女は少し驚いた顔をしたがすぐに私に笑いかけた。


「そう怖がらないで。


当分は私が守ってあげる。でもその時が来たらあなたが守るのよ。


そのうち分かるわ。


この手の事も、そしてこの十字架の意味も。


今日はもうさようならにするわね。」


そう言って彼女はまるで煙のように消えていった。


「ちょっとまだ私は聞きたいことが…」


わたしは彼女の手をつかもうとしたが手は空を掴むばかりで何も掴めなかった。


景色にも異変が起きた。


彼女が消えた瞬間に夕焼けは夜となり、鋭い痛みが左手に走り、緑色に光る文字が現れた。


エメラルドに光を当てたようなその文字は見たこともないが呪文のように見える。


そして次の瞬間に左手はひとりでに動き私の首を絞めつけた。


恐ろしいほどの力で私はあまりの恐怖のせいか、首を絞められたせいなのか、意識が遠のいた。


そこで目がさめ、私は飛び起きた。


全身に汗をビッショリとかいている。


すかさず左手を見たが、なんともない私の手だ。


「さっきのはなんだったの?」


時刻を見るともうお昼になろうとしている。


今の事が夢だったのか、それとも本当の事だったのか、夢と現実の境界が曖昧な感じがする。


少しずつ意識がはっきりしてきたところでハッとした。


今日はお昼から教会にお祈りをする日だ。


私は急いでシャワーを浴びると、勢いよく家を後にした。



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