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Pray in Darkness  作者: RIA
14/26

左手の十字架16

「お見苦しいところをお見せしました。」


私たちは恥ずかしそうに席に着いた。


トゥルーマンはいえいえと何か満足そうにうなづいた。


そこでふと私は疑問に思った。


何故、たまたまトゥルーマンは銀の手の事が詳しく書かれている本を持っていたのか?


確かにたまたまかもしれない。


でも本の目次も見ずにページを開いてもいた。


それにトゥルーマン本人も内容を読みながら私たちに説明をしていた所を見ると、ちょっと不思議に思った。


「あの…そういえば、何故、銀の手の事が分かる本を持っていたんですか?」


聞かずにはいられなかった。


トゥルーマンは本を見ると「ああ、これかい?」とまた本を開きながら話しはじめた。


よく見ると本は表も裏も真っ白だ。


しかもそこには何も書かれていない。


「え?」


ロイも私も目を丸くした。


「これはそうだな…なんでも知ってる、でも何も知らない本なんだよ。」


ロイが首をかしげる。


「いっている意味がわからないのだけど…」


「はは…わかりにくくてすまない。


何か本に名前がついていれば便利なんだが、この本にはタイトルが無いんだ。


自分が知っている言葉について描かれる本なんだよ。


つまり知らない事やうまくイメージをつかめていない事に関しては、記されない。


つまりなんでも知ってる本なんだが、使用する人間がある程度わからないと、何も教えてくらないのさ。


中途半端な知識だと、ここに書かれることも雑なものになる。


さっきはもともと知っていた銀の手というワードと、君の実物があったからね。


とても詳しく記されたって事さ。」


トゥルーマンは少し自慢げに説明をした。


「母が残した形見でね。私の宝物さ。」


そう言って大切そうに彼は本を鞄にしまった。


「終わったか?私は出かける用事ができた。用が済んだら帰ってくれ。」


レイが赤いコートを着込み、タイミングを見計らったかの様に現れた。


「まだお代を払っていません。


おいくらですか?


あいにく今はそれほど持ち合わせが無いので、日を改めて持ってきます。


銀でのお支払いでしたね?」


レイはまたあの嫌な笑い方をする。


「今回私は何もしていない。

礼なら彼にしてくれ。」


そう言うと足早に外にでていってしまった。


「もう…あの人は本当に育ちがわるいのですね。」


ロイが悪態をつくとまたトゥルーマンは苦笑いをした。


「私はお金は請求しません。そうですね。あなたの家には何か置物がありますか?」


私は頭の中で部屋を見渡した。


たしか…手のひらサイズの車の置物、スポーツカーみたいなのが物置にあったはずだ。


それを言うと彼はとても喜んでそれをいただければ、お金はいらないと言った。


やっぱり変わった方だ。


でもとても優しくていい人だと感じた。


「そういえば…」


トゥルーマンが真剣な顔で切り出した。


「あなたの銀の手は根本的な解決には至っていません。


これからも、もしかしたら何か事件に巻き込まれるかも知れません。


これ、レイの携帯の電話番号です。私のものも下に書いておきました。


何かあればすぐに連絡してください。


彼はああ見えてなかなかどうして、頼れる男ですから。」


私はそれを受け取り、私たちはトゥルーマンに見送られながらその場を後にした。


とりあえずこれで見た目だけでも、治すことができた。


私にとって一番のストレスになっていたのは、たぶんあの見た目だった。


それがなくなっただけで私の足取りはとても軽くなっていた。

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