左手の十字架14
「では…依頼を聞こうかな?」
緊張して座る私たちとは裏腹に、かなりダラけたようにレイは座った。
彼の隣に座っているトゥルーマンは相変わらずオドオドしながら、私たちをチラチラと見ている。
「あなたが言ったようにこの左手の事です。
この手をあなたならどうにか出来ますか?」
私は手袋をとり、彼らによく見えるよう、テーブルに手を差し出した。
トゥルーマンはそれを見た途端目を大きくして、さも珍しそうにそれをみた。
「銀の手だ。」
トゥルーマンが眼鏡のズレを直しながら言った。
「私も見るのは初めてだな…
君はこんなものをどこで手に入れたんだい?」
レイの顔にも少し驚きの表情がうかんでいる。
「この手は…だいたい3ヶ月前くらいからこうなりました。
変化したのは凶悪犯に遭遇した時です。」
私は今までの全てをレイに話した。
何故か、凶悪犯罪の真っ只中に出くわしてしまう事。
その犯人を自分の意思とは関係なく反射的に左手が必ずデリンジャーで、心臓を撃ち抜いてしまう事。
レイは何も言わずに聞いていたが、私が昨日のことを話し始めると、表情が変わった。
「ちょっと待て、その男の目は確かに赤く光っていたんだな?」
レイは私を睨みながら言った。
「は…はい。」
私はそれ以上に声が出なかった。
やはりこの人は怖い、軽いノリを見せたかと思えば、刃のように鋭い視線が襲うのだ。
そして私の返事を聞くなり立ち上がり、奥にある部屋の扉へと足早に歩いて言った。
「トゥルーマン…彼女に説明をしてやってくれ。俺は少しやる事ができた。」
ガチャリとドアノブを開けながら、捨て台詞のように言うとレイは行ってしまった。
「はは…まぁ許してあげて下さい。
育ちが悪くていつもあんな感じなのですよ…
ではお嬢さん、その手について少しお話をしましょうか。」
そう言うと彼は鞄からある一冊の本を取り出した。