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レナ 第五遊撃隊  作者: まんだ りん
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「唯、あんたが指揮官だったの?」


 レナが聞いた。


「あたしは、代理。でもあなたがいてくれたから話が早くなりそうね」


 宮寺が一歩前に出て唯の前に立った。


「ここの指揮を任されている、帝国宇宙軍第八十二師団地上部隊アイリス小隊隊長、宮寺麻衣中尉です」


「共和国軍情報局第七支部所属特務隊、蒲生唯大尉。事後処理のために一時休戦したい」


 顔の表情を変えずに唯はそう話した。宮寺は唯が大尉と名乗ったので反射的に敬礼をした。


「この場所の事後処理は共和国側で行いたい。あなた達が強奪した当方の揚陸艦を至急変換して欲しい」


 唯は、時々レナの方を見ながら宮寺にそう話しかけた。


「そうですね。こちら側もこのような事態になることは想像していませんでしたので、事後処理はそちらにお任せしたいと思います。拿捕した揚陸艦の内部データはこちら側でいただきました。船体はそのままお返しします」


 宮寺も正直言うと墜落した揚陸艦をどう処理して良いか迷っていたようだった。


「拿捕?良いわ。一時休戦条約に基づいて地球時間でこれから二十四時間の間、この地域は戦闘禁止としたい」


 唯はレナと信吾の方をチラリと見ながら宮寺に言った。


「承諾しました。早く揚陸艦を撤去しないと警察が来て厄介なことになります」


 宮寺は、後処理を唯達共和国軍に任せることにした。


「一つ教えて、唯」


 レナが唯に聞いた。


「風間さんはどうなったの?」


「裏切り者は処刑した」


 唯が空を見上げる。上空から先ほど逃げていった揚陸艦が数隻見える。墜落した艦とレナが奪取した艦を回収するために来たのだろう。


「あたし達、もう会えないのかなぁ?」


 レナが揚陸艦の回収の指示を出している唯に聞いた。


「平和な時代が来ればまた一緒に空を飛びたい」


「そうだね、そんな日が来ればいいよね」


 レナが唯に近づき握手を求めた。


「平和な時代が来るまでお別れだね、唯」


 レナが差し出した右手を暫く無言で見ていた唯は、その手を取ってこう言った。


「レナ、もう少し勉強した方がいい。あとで後悔をすることになる。これは昔、友達だった私からの忠告」


 唯は、掴んだレナの右手を強引に引っ張った。レナがバランスを失い前に転びそうになると、唯は左手を信吾がいる方へ向けた。


「休戦条約が適応させるのは、共和国軍と帝国軍の軍人だけだよ」


(防御シールド緊急展開します)


 レディバードが、素速く反応してくれたおかげで、信吾は唯からの不意打ちを防ぐことが出来た。


「唯!」


 掴まれた右手を必死になって振り放そうとしたレナだったが、唯の力は恐ろしいくらい強いようで、その手から逃れることは出来ないでいる。


 上空にいた揚陸艦から真っ赤な光りがレーザービームのようになって信吾がいる緑色のシールドへ降り注がれていく。


「汚いぞ!蒲生大尉!」


 宮寺がそう叫んだのが聞こえた。


 信吾は、自分だけが攻撃されていることに気が付いた。


「レディバード、ここから空間転移をしろ!」


 この場所から信吾だけ逃げ出せば、戦闘は中止される。そう信吾は判断したのだった。


(パワーのほとんどを防御に利用しているために空間転移は出来ません)


「畜生!どうすれば良いんだ!」


 突然、攻撃が中止された。


 真上を見上げると、敵揚陸艦と信吾の間に宮寺がシールドを展開させないで飛翔していた。宮寺が盾代りになって攻撃を防いでくれたのだ。


「和久井君、今のうちに逃げて下さい」


 宮寺達は、敵に対して攻撃は出来ない。当然敵も宮寺達に攻撃することは出来ない。信吾は敵の攻撃から自分自身で逃げるしかないのだった。


 信吾は、走って公園の外に逃げようとした。信吾が逃げると、敵艦も追いかけてくる。信吾と敵艦の間に宮寺がいてくれるので信吾は攻撃を受けずにいられる。でも、いつまでもこうして逃げているわけにはいかない。


「二十四時間か、何とか逃げなければ」


 家に逃げても、家ごと攻撃されたらおしまいだ。何処に逃げればいい?信吾はとりあえず南の方角へ向かって走り始めた。


「和久井君!」


 真上から声がしたので立ち止まり振り向くと、レナが信吾の側に飛んできた。


「レナ!」


「あたしに捉まって!」


 レナが両手を差し出してきた。信吾はその手を掴んだ。


「飛ぶよ!」


「うわぁ!」


 レナに両手を掴まれた状態で信吾は空中へと飛び上がった。


「休戦が宣言された場所から半径百キロが休戦地域になるの。それより外側に行けばあたし達も反撃できる」


 信吾は、レナの手に捉まってぶら下がった状態で南へ飛行している。こんな状態だといつ疲れて手を放してしまうかわからない。


 左手が汗で滑ってきた。このままだと手が離れてしまう。


「レナ?」


 汗だと思っていた信吾の左手に付いていた物は、真っ赤なレナの血液だった。


「唯から逃げるときに、唯に攻撃することは出来いないから、唯が掴んでいた自分の右手に魔力弾を打ち込んだんだよ」


「痛くないのか?」


「痛いよ。でも、あたしのミスでこんな事になっちゃったんだから仕方ないよ。一回空中で回転するからその時あたしの身体にしがみついてくれる?」


 レナが飛行しながら回転を始めた。ちょうど半回転が終わった、信吾がレナの真上に来たときに信吾はレナの身体に抱きついた。


 レナの腰当たりに両手で抱きつき、両足を真っ直ぐ伸びたレナの足にからみつける。


「ごめん」


 回転が終わり、信吾は何とも情けない格好でレナにしがみついている。信吾の左手にはレナの血がまだべっとりと付いていた。


「このままスピードアップするからね」


 速度がだんだんと増していく。信吾はレナの怪我が気になっていた。


「怪我は、平気?」


「うん、和久井君が一緒にいるからね」


 信吾とレナの直ぐ後ろから宮寺が飛んできていた。その暫く後ろに敵の小型強襲揚陸艦が続いている。


 どのくらい飛行を続けたのだろう。信吾も両腕がかなりしびれてきた。


「間もなく、百キロポイント。休戦地域から外に出ます」


 後方から宮寺の声がする。


 真下は真っ暗で見えないが、おそらく海の上まで来ているのだろう。


「レナ?」


 信吾はレナに声をかけた。


「もう少しだから、頑張ってね」


 答えるレナの声は、元気がない。


「二時の方角に島が見えます。あそこに下りましょう」


 宮寺の言った方角に陸地のような物が見えた。


 レナはその島に向かって降下し始める。宮寺も後に続いた。


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